ビフォア・アイ・フォール
時間移動系の映画が好きなので鑑賞。本作は厳密にいうと時間移動ではなく、同じ日時を繰り返すループものの作品。この手の映画で描かれるのは人間の成長的なお話であり、本作もそんな感じの青春物語ともいえそう。ネタバレあり。
―2017年製作 米 99分―
解説・スタッフとキャスト
解説:人生最後の1日を何度も繰り返してしまう女子高生が、運命から逃れるべく奔走する姿を描いたSFサスペンス。ローレン・オリバー原作の同名ヤングアダルト小説を、「エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に」のゾーイ・ドゥイッチ主演で映画化した。17歳のサマンサは親友たちや彼氏に囲まれて充実した高校生活を送っていたが、ある夜、パーティからの帰り道に交通事故に遭い、命を落としてしまう。翌朝、なぜか自宅のベッドで目を覚ましたサマンサは、自分が死んだ日の朝に逆戻りしていることに気づく。全く同じ1日が繰り返されていることに戸惑いながらも、事故を回避するべく行動を起こすサマンサだったが……。「ハンナだけど、生きていく!」に出演し脚本にも参加したライ・ルッソ=ヤングが監督。(映画.com)
監督:ライ・ルッソ=ヤング
キャスト:ゾーイ・ドゥイッチ/ハルストン・セイジ/キアン・ローリー/ローガン・ミラー/シンシー・ウー
ネタバレ感想
ループ系のパターンは主に2つ
同じ時間を何度も繰り返す作品で描かれるのは、ループにとらわれた人間が、同じ時間を繰り返す中で成長する話が多い。その成長ってのは、自身の人との接し方を省みることで意中の人を射止める話でもあり、倫理・道徳的に成長していくような教訓的な内容が込められたパターンが1つ。もう1つのパターンは、ループせざるを得なくなった登場人物が、なぜ自分がそうした状況に置かれてしまったのか、その原因を究明しようとするミステリーパターンの内容である。
本作は成長教訓物語
で、それぞれにどういう作品があるかってのは、記事末で紹介するとして、本作は前者の内容が色濃い。つまり、主人公の女子高生サマンサが繰り返す同じ日の中で、自身の果たすべき役割を自覚してラストを迎える内容。さらにそこに青春映画的な要素も加えて、物語に面白味を加えている。
俺は時間移動系の作品を好んで鑑賞するのは、自分自身の私的疑問を考えるのにとても役立つから。そういう意味では、この作品は自分の想像以上を超えてこなくて残念だったのであるが、それは作品の面白味とは全く別の話。
タイムループ的青春映画
単純に内容自体は面白いと思った。でもそれは、一人の少女が成長する過程を描いている内容としてである。この作品の少女は繰り返す日常の中で、自分自身がそうありたいという自分の理想像に近づいていく。つまり成長していく。
で、彼女がその成長過程で得た結論が、あのラストの選択なわけだ。物語はあそこで終わってしまうので、彼女がその後もループし続けるのかどうかはわからない。わからないけど、たぶん、自分自身が犠牲になって本来死ぬべきだった人を助け、彼女が思い描いた理想の自分になれたわけだから、彼女の死によってループは終わったんだろうと思われる。という意味では、主人公のサマンサにとっては、ハッピーエンドと言えなくもない。
いずれにしても、この内容はタイムループ系の青春映画として俺は観た。青春映画としてはキャラの描きわけが類型的すぎる感もあるものの、なんか、それ以上に自分の何かを刺激される内容はなかったんである。面白くは観たんだけど。
シーシュポスの解釈が
楽しんだのはおいておいて、どうしても違和感があったことが1つ。繰り返される日常の中で、学校の先生がシーシュポスについて語っている授業のシーンが何度も出てくる。シーシュポスてのは、前に『トライアングル』って作品の中でも出てきたので少し紹介したので、興味ある方はそちらの記事も読んでください。
てなことで、違和感について。本作ではラスト近くで、シーシュポスに関する先生の解説の情報量がほんの少し多くなる。それによると、シーシュポスが頂上に岩を運び続ける苦行から逃れるために必要なのは「自己変革である」みたいな解説が加わるのだ。
そうなんだっけ? シーシュポスの話ってもう少し不条理な内容だったと思うんだが。それはカミュの『シーシュポスの神話』の話の印象が強すぎるからだろうか。自己変革によって苦行から脱するというのは、本作の主人公に必要なものであり、シーシュポスの話はそういうことを示唆する話ではなかったように思ったのである。そこだけちょっと違和感あったのだが、それは個人的な感想。タイムループをシチュエーションにした青春映画としてはそれなりに面白いと思います。
この作品はネットフリックスで配信されてます。
ループ系の成長・教訓物語
ループ系の原因究明物語
両方が合体した物語
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