パラドクス(2014)
イサーク・エスバン監督ってずいぶん個性的な内容の映画撮るんだなぁと思う。先日は『ダークレイン』を鑑賞したけども、今回はそれより前に撮られたこの作品。実はこっちのが前から観たかったので、かなり期待してたんだが、なかなかわかりづらい内容だ。でも、個人的には楽しく観られたです。鑑賞した人にしかわからない内容に触れます。ネタバレあり。
―2016年 墨 101分―
解説・予告・スタッフとキャスト
解説:ある日突然、刑事と犯罪者の兄弟、家族4人が出口のない空間に閉じ込められ……。悪夢が繰り返すシチュエーション・ループ・スリラー。シッチェス映画祭他40部門正式出品、15部門受賞。『未体験ゾーンの映画たち2016』にて上映。(KINENOTE)
(シネマトゥデイ)
監督・脚本:イサーク・エスバン
出演:ウンベルト・ブスト/エルナン・メンドーサ/ネイレア・ノーヴィンド
ジャケット詐欺炸裂してます
まず言っておくと、この作品はジャケット詐欺をしている(笑)。ジャケットの女の人、出演してないと思うんだが。いや、もしかしたら母親役の人か娘役の人か、結婚式挙げる恋人たちの女性のほうのどれかがジャケットの女性に該当するのかもだけど(ないと思うが)、少なくとも描かれているようなシチュエーションのシーンはありません(笑)。
あんまり派手さのない地味な内容だから、せめてジャケットは――とDVD製作する人が考えたのかもだけど、さすがにかけ離れすぎだろ(笑)。
ループを2回経験して死ぬか、1回目で死ぬか
というのはおいておいて、なんとも奇妙な作品です。あるビル内の、1~9Fの階段が無限にループした空間に閉じ込められちゃう3人。そして、アメリカによくありそうな、広大な土地の中の一本道の無限ループにはまっちゃう母と息子(ダニエル)、娘、そして新しい父となる男。
それぞれのグループには、一人、犠牲になって命を落とす人間がいる。そして、残された人間たちはなんと35年間、その無限ループ世界の中を生き続けているのだ。35年て・・・。で、ラストに近づいていくにつれ、物語の全容が明らかになる。
最初の階段ループに嵌った一人、刑事はダニエルである。つまり、一本道ループの35年後、ダニエルのループ先があの階段ループってこと。ダニエルの義父になるはずだった男が、死の間際にループ世界の説明をする。実は義父は、35年前に別のループ世界を経験して、ダニエルたちのループ世界にやってきたのだそうだ。
覚えたくても覚えてられない
義父はダニエルに次のループに入る前に今の世界にいたことを覚えておけ! とアドバイスする。なんでも、ループ先に入ってしまうと、前のループ世界にいたことは、死ぬ瞬間になるまで思い出せないようになっているんだとか。義父は別のループ世界にいた時に、共に35年を過ごして死んでいったある男に、それを告げられる。そして、ループ世界の秘密をダニエルに教えてやったということだ。
だがしかし、ダニエルはその話を理解したようであったが、結局は次のループ世界に入らざるを得ない。なぜなら、他に出口がないのだから。だから、ダニエルは階段ループ世界に入っていく。ちなみに、階段ループ世界に迷い込んだダニエル以外の兄弟、生き残った弟のほうも、次のループ世界に旅立つ。
ループ世界がどんなものなのかは、70歳を超えたお爺ちゃんになっているダニエルから聞かされる。で、この弟君の2回目のループ先の世界は、どうやら冒頭のエスカレーターの婆さんに関わる世界のようだ。たぶん、あの夫婦のうちの女性のほうが婆さんで、あのシーンは女性の2回目のループ先での死ぬ瞬間を描写しているんだと思われる。旦那がループ世界で死ぬ役割の人なんだろうね。
リア充なのは、ループ世界の人が頑張っているから(笑)
あと、どうもループ世界はある人間の裏の面らしく、表の人生でそこそこ幸せに暮らすために、裏の人間はああいう苦しみを味わいながらも、頑張る必要があるらしい。つまり、ループダニエルは裏ダニエルで、表ダニエルがリアル世界で幸せに暮らせるかどうかは、裏ダニエルがループ世界で頑張るかどうかが重要ってこと。という描写はラスト、登場人物たちのリアル世界を表現しているように見える、走馬灯みたいなシーンでもわかる。
1回しか観てないので細部が違うかもだけど、おおよそこんな内容の話であった。観てない人にはサッパリわからんだろうなぁ(笑)。
この映画が恐ろしいのって、第1ループから第2に移動したことは、35年間忘れてしまうのに、死ぬ間際にそれを思い出してしまうところだ。自分の人生が何の意味もない不毛な70年間だったことに気づくってかなり残酷。まぁでも、よく考えたらそれって普通の人生でも同じか。
しかしだなぁ、リアル人生が裏のループ世界の人間の頑張りに左右される的なこと言われても、あんまりピンとこない。だって、裏だろうが、表だろうが、別人だからねぇ(笑)。自分とは関係のない存在に過ぎないと思うんだが。そういうものに人生が左右されているからってのは、単なる運の良し悪しみたいなもんなので、そんな裏世界設定表現しても仕方ないような気も。
次作にもかなり期待!
とは言え、この監督は他の映画監督とは異なって、明確に自分の示したい哲学的テーマがあるみたいだ。もちろん監督固有の個人的な何かだと思われるが――を非常に強く感じる作風で、そこが俺的には好感度大で、今後もこういうヘンテコ作品をどんどん作ってほしいなぁと期待させられるのである。次作があるなら、ぜひ劇場で鑑賞したい!
『ダークレイン』の記事はこちら↓
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