パラレル 多次元世界
ノエル、ジョシュ、デヴィン、リーナは友人同士。4人で会社を営みアプリ開発で金儲けを狙っていたが泣かず飛ばず。そんな彼らが暮らす家には秘密の屋根裏部屋があり、そこにある鏡をくぐると、別次元の世界に辿りつく。この秘密を利用してビジネスを成功させた4人は、やめておけばいいのに金に目がくらんで悪いことをし始める。その行く末はーー。ヘンテコ映画を撮るイサーク・エズバン監督作。期待ほどには驚きのない内容で、よくわからん部分も多い。ネタバレあり。
―2018年製作 加 104分―
あらすじ・スタッフとキャスト
あらすじ:シェアハウスで暮らすノエル、ジョシュ、デヴィン、リーナの4人はアプリ開発で一攫千金を狙っていた。だが売り込みに行った企業から出された条件は数日でアプリを完成させろという不可能なもの。時間が足りないと焦る4人だったが、シェアハウスで秘密の屋根裏部屋を発見。そこには大きな鏡があり、触れるとなんと身体が鏡面へ吸い込まれた。思い切って鏡の中へ飛び込むとそこには同じような世界が広がっていて、その世界の自分たちが存在していた!並行する別次元の世界〈パラレルワールド〉。何度もチャレンジするうちに別次元世界の時間のスピードが違うことに気付いた4人は、それを利用してビジネスを成功させるが、野心はそこでは収まらず、4人は暴走していく(Amazon)
監督:イサーク・エズバン
出演:アムル・アミーン/マッティン・ヴァルストレム/ジョージア・キング/マーク・オブライエン/アリッサ・ディアス/キャスリーン・クインラン
ネタバレ感想
レンタルで鑑賞。冒頭にも触れたように、この監督はヘンテコなSF作品を世に出してる人で、たぶんこれが3作目の作品と思われる。前2作の『パラドクス』と『ダークレイン』はどちらも本当に変な内容で、世間的には前者の評価はけっこう高いみたい。俺は後者も好きだけどね。興味がある人は記事末のリンク参照ください。
本作はそんな監督が多次元世界をネタに使ってるわけで、俺は時間移動とかパラレルワールドが出てくる作品は大好きなので、否が応でも期待は高まっちゃって、レンタル配信されてるのを見つけてソッコー借りて鑑賞したわけだ。
で、感想として率直に言うなら、楽しめた。話としては似たような作品はたくさんあるし、別世界を利用して自分の欲求満たすために無茶しちゃう話なんて、別に珍しくもない。では、なんで良かったのかというと、それはやっぱり、俺がこの監督が好きだからというもので、だいぶ贔屓目な評価ってことだろう。だって、マジで驚くような要素とか目新しさはないからね(笑)。
そうした中で、小ネタとして別次元の世界で自分の作品のタイトルを出してみたり、ノエルとジョシュが札束を爆破するという夢をかなえようとする際に、なぜか『ゴッドファーザー』のヴィトコルレオーネのコスプレして登場したりとか、ニヤリとしちゃうシーンもある。
そういうこともあって、楽しめたのは確かだが、この監督にかける個人的な期待値の高さからすると、内容が普通過ぎて、そこはガッカリもした。どっちなんだよって感じだが、それが鑑賞後の偽らざる心境だ。
そんな俺の心境なんてどうでもいいだろうから、作品の内容にも触れておくが、実はこの作品の細部やラストの描写にはよくわからん部分もあるので、その詳細とかを知りたい人に役立つような情報は提供できないことを先に断っておく。
何がわからんかったかは書いておくと、ノエルがどの時点から別次元の自分(ノエルB)と組んでいろいろと動いていたのか。そして、デヴィン(つまり物語の中心となる次元に存在するデヴィン)をどのように亡き者にして、別次元のデヴィンBを連れてきたのかってところ。たぶん、後者についてはジョシュの時と同じような手法を使ったのだと思われるが。
あとはラストだね。リーナが給油所のトイレで鏡を見ていたとき、背後に違和感を覚えるシーン。その後、デヴィンBが待つ車に戻ってきたのはリーナBではないかと思われるような描写で劇終。それはいいとして、でも、何でそうなるの? 鏡は壊したはずなのに。
ついでに残念だったのは、冒頭でこの4人組の前の住人のオバサンが他の次元のオバサンBを殺害し、その世界に住み着くあのくだり。もともとパラレルワールドの話だってわかってるので、後々あのくだりは主人公たちの行動につながってくるんだろうなと思ってたら、何もつながらずに終わるとこ(笑)。
さらに、別次元は主人公の次元とは時間の流れが異なり、主人公たちの世界の1分が3時間になるという。けっこう面白い要素なんだけども、その設定って最初のアプリ開発にしか使われてなくね?
ちなみに、リーナはデヴィンと終盤に愛し合う仲になるんだけども、ラストでデヴィンBとイイ仲になっちゃうのもいかがなもんか。だって、本当にセックスしたほうのデヴィンは死んでるからね。
これはジョシュが死んだときもそうなんだけど、別次元のジョシュBを連れてきて、自分たちの社会的罪を消すという行為が酷いのもさることながら、本来リーナやノエルたちの仲間だったジョシュは死んでいるわけで、それとは別次元のジョシュBでは替えがきかないなんてことわかってるのに、それをしちゃうわけだから、より罪深いことをこいつらはしているのだ。
その辺を開き直って自覚的にノエルはやっていて、だからこそ、こいつはクズなんだけども、倫理・道徳を抜きにして動いちゃう人間としてはそれが合理的な選択だともいえる。
対してリーナとデヴィンには罪の意識があるのにそういう行為をしているんだから、見方によってはこいつらのほうが悪人だと言えなくもない。どうでもいい話ではあるが。
善悪を超えた言葉を獲得するために、みんな人間であることをやめよう
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