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映画『ARQ 時の牢獄』ネタバレ感想 謎部分もあるが、ラストまで楽しく観られる

ARQ時の牢獄
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ARQ 時の牢獄

物語の大半を同じ場所で繰り広げる内容に興味を持たせるのって大変だと思うけど、本作は何度も同じ出来事を繰り返すうちに事態の全容が少しずつ判明していく展開にすることで、最後まで興味を引くことに成功していると感じた。要するに、楽しめるのである。謎な部分もあるけど。ネタバレあり。

―2016年製作 米 88分―

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あらすじ・スタッフとキャスト

あらすじ:世界最後のエネルギー供給源をめぐり、企業と主権国家が戦いを繰り広げる近未来。若き技術者のレントンとハンナは、戦争終結に結びつくかもしれない実験的な新エネルギー技術を救おうと試みます。ところがその技術がタイムループを作り出し、2人は自宅にいるところを集団に襲われる瞬間を何度も繰り返し体験するはめに。タイムループを打ち破り、そこから生きて抜け出す方法とは…。(Filmarks)

監督・脚本:トニー・エリオット
出演:ロビー・アメル/レイチェル・テイラー/ショーン・ベンソン/グレー・パウエル/ジェイコブ・ネイエム/アダム・ブッチャー/タントゥー・カーディナル

ネタバレ感想

時間移動、タイムループ系の作品が好きなんで鑑賞。エネルギーを発生する装置を発明した技術者(レン)が、ある朝、自宅で謎の集団に襲われる。しかし一定時間が経つと、なぜかその日の目覚めた時間に戻ってしまう。レンはその数時間を何度も繰り返すことで事態の収束をめざすのだが――という感じのタイムループ系Netflixオリジナル作品。以下ネタバレ。

本作のタイムループ

まず、この作品で繰り返される時間のスタートは、9月19日(確か)の午前6時16分。で、午前9時25分(確か)になると、その日の出来事がリセットされてスタートの時間、午前6時16分に戻ってまうのだ。

主人公のレンと、恋人(一応)のハンナ。そして彼らを襲う謎の3人は(あと、死体が1人)、繰り返される時間の中で、それぞれの思惑でジタバタするのである。

評価ポイント

みんなでタイムループしている

個人的な評価ポイントは、タイムループ系の作品で、あまり説明されない事柄について、本作ではきちんと設定をつくり、その説明を劇中でするところだ。

その設定とは何かというと、世界全体がリセットされスタート時点に戻されていること――つまり、登場人物全員が、レンと同じくループを繰り返しているというものである。

こういう説明がされている作品って俺が鑑賞したことのあるループ系の映画では、なかった。だから、そこに非常に感心した。もう少し突っ込んで説明しておくと、タイムループ系の映画の多くは、主人公だけが何度も同じ時間を繰り返していて、主人公が去った後の世界で、他の登場人物がどうなっているのかの説明がないのである。

トム・クルーズ主演の面白映画、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』では、主人公がいなくなった世界が続いているであろうことを示唆する描写があるものの、それ以外の作品ではそうした説明がされているものは、記憶にない。

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飽きずに最後まで楽しめます。前半は主人公の死にっぷりでけっこう笑えるし。てなことで、前半はいつもみたいに作品についての話。中盤以降は作品を通じて、成長するとはどういうことなのかを考える話。最後は時間軸の扱い方など作品を通じて考えたことについて話したいと思います。

一人ループの場合、ループ前後の登場人物たちは同一の存在ではない

その説明がないことがどうして不満なのかについて。仮に主人公一人がスタートに戻ってくるのなら、それ以外の登場人物は、主人公が去った世界に残り続けることになる。つまり、残された世界は主人公のいないパラレルワールドになったようなものだ。しかし、そこには当然、命のある、存在が残っているわけだ。

それなのに、タイムループした主人公はループ先にあらためて出てくる他の登場人物たちを、ループ前の世界の人たちと同一の存在かのように認識し、接しているように見えるのだ。これはおかしい。どう考えてもおかしい。なぜループ前の他人(仮に太郎としておく)と、ループ後の太郎が、同一の存在だと思えるのか。この2人の太郎は全く異なる、別の空間に存在している別人であり、ループ後の太郎は太郎2とでも言うべきで、太郎とは別の存在であるはずなのに。

ということで話を戻すと、本作においては、物語が進むにつれて登場人物の全員が、タイムループを繰り返していることが判明する。そのため、上記に俺が説明したようなことは起こらない。だから、本作の登場人物の場合は、時間移動後の他人を、同一の存在として認めてよいことになる。これが、この作品の俺が思う評価ポイントで、優れた部分だ(作品の質とはあまり関係ないけど)。

その他の評価ポイント

冒頭にも書いたけども、物語が繰り広げられる舞台そのものは狭くて窮屈で、視覚的な楽しみが少ないものの、時間を繰り返す中で、作品内の謎が少しずつわかるような展開になっているので、飽きずに楽しめる。そして短くまとまっているところもいい。

だがしかし、謎な部分もある。以下は、そこについて説明。

謎ポイント

実は、自宅周辺のみのループだった

鑑賞中、なんであんな機械が世界全体をタイムループさせる力があるんだろうかと、俺は思っていた。だが物語終盤で、実はレンが開発した装置は、レンの自宅周辺のみをタイムループさせていたことが判明する。

なぜそれがわかるかというと、自宅から出たレンとハンナが、家の周辺を丸く囲んでいる、石化した黒い線を見つけるからだ。レン曰く、その範囲内が装置の影響を受けるんだそうだ(何であんな線が発生するのかは謎)。つまり、その境界内でしかタイムループは起きないのである。

そのこと自体は、別におかしくはない。むしろ、装置の力が限定的であるほうが、納得がいく。謎を呼ぶのはその後だ。

1シークエンス内で数回のループ

レンたちはその後、装置の過去ログによって、同じときを、数千回繰り返していたことを知る。レンの分析によると、繰り返しを続ける中にもシークエンスがあるんだそうだ。で、その1シークエンスが終わると、自分の記憶がなくなり、前回の記憶がない状態から繰り返しが起こることになっているらしい。

実はレンたちは、何百、何千とシークエンスを繰り返しており、ループ自体の回数も膨大なものになっていたのだ。それを証明しているのが、中盤あたりでレンたちが見る、自分たちの記憶にはないが、自分たちが映っている録画画像である。

境界線の内側と外側で、流れる時間が変わるはず

で、ようやく謎に思う部分の説明。上記のように、ループの回数が膨大になっていることによって、物語の世界に謎な点が出てくるのだ。なぜかと言うに、1回のループで過ぎる時間が約3時間とする。そして1シークエンス内で起きたループ回数を7回とする。で、そのシークエンスが500回繰り返されていたとすると、総ループ数は3500回にのぼる。

その場合、境界線の外では、3時間×3500回で、10500時間の時が過ぎていることになる。10500時間てのは、およそ1年と2ヶ月半くらいか。つまり、あの境界線の外側にいる人間たちは、レンたちにとっては、約1年2ヶ月後の世界を暮らしている人たちということになるのだ。

上記は俺の適当な計算だけど、主人公らが記憶を失いながらシークエンスを何回も繰り返していると言っているんだから、境界外の世界は未来になっていることは疑いないはず。

外から人間を呼び寄せるのは無理だと思うぞ

そうなってくると、裏切り者の傭兵だったことが判明するラリーが、外の世界に無線で連絡し、仲間を施設に呼び寄せるのって、どうやったんだ? 境界内の現在に対応する、境界外の過去にいる仲間たちに連絡が取れて、過去の奴らがやってきたっことなんだろうか。それって、可能なのか?

それに、主人公らは同じ時間を何度も繰り返しているけど、境界外では普通に時間が過ぎているんであれば、境界外の現在(境界内から言うと未来)の仲間なりなんなりが施設にやってくると思うんだが。

なぜなら、連絡があるべき人間たちから、それなりの期間、連絡がきてないんだから。放置されないだろ、普通は。その場合、外側からあの施設には、どうやって入るんだ? 普通にあそこだけループし続ける過去なので、境界を超えると過去に戻るってことだろうか。

てなわけで、やっぱり何かのおかしさが出てしまうのが、時間移動系の作品なんであるなぁと思わざるを得ない。まぁでも、最後まで面白くは観られる内容だと思います。

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