九龍猟奇殺人事件
鑑賞を終えてから知ったんだけど、この話は実際にあった出来事を基にしてつくられたらしい。好んで鑑賞する香港映画とは異なる、シリアスな内容だったけどなかなか楽しめた。ネタバレなし。
―2016年製作 香 98分―
解説・スタッフとキャスト
香港で実際にあった売春婦バラバラ殺人事件を元に描いたサスペンススリラー。ティンという男が、援助交際をしていた16歳の女子高生・ジェイメイを殺害、解体して捨てたと自首してくる。不審に思ったチョン刑事は、事件を執拗に追い続けるが…。(KINENOTE)
監督・脚本:フィリップ・ユン
出演:アーロン・クォック/エイレン・チン/ジェシー・リー/マイケル・ニン/パトリック・タム
感想
実話を基にした殺人事件
アーロン・クォック主演てことで、『極限探偵』シリーズみたいな内容かと思ったら、全然違って、実際にあった事件が題材。事件そのものの手口とか登場人物たちの置かれた生活環境は、恐らく実話に基づいているのかなと思わされる。
人物に詳細な心理描写はない。しかし、登場人物たちの思いみたいなのは垣間見えてくるつくりになっている。これらは、事件を掘り下げたうえで描かれるフィクション的な部分だろう。
てなことで、現在と過去が入り混じり、細かい説明がないので物語に没入するのがなかなか大変だったけど、鑑賞し終えてみると、なるほど、そういう話だったのかと納得。
逃れられない環境で起こる凄惨な事件
俺は香港には一回だけ観光で行ったことがあって、あのゴチャゴチャした街並みがものすごく気に入って、また訪れてみたいと思っている。
ただ、香港も格差社会で貧富の差がかなりあるらしく、観光的に夜景だのあの街並みを楽しんでる分にはいいけども、厳しい生活環境におかれている人もたくさんいるわけだ。当たり前だけど。
特に、香港の場合は低所得者の住環境って本当に酷いんだろうなということを、この映画その他、香港の作品を観ているとよく感じる。あんだけ人口があるのに土地が狭すぎるんだよね。だからこそ、ああした街並みになるんだし、外から見ている人間はその景色に刺激を受けるし魅力なんだけども、あんな薄暗いビルの中にある狭い部屋に住みたいとはなかなか思えない。高級なタワーマンションとかに住めるなら別だけどさ。
この映画に出てくる人たちは、そんな悲惨な住環境で生きざるを得ない人たち。自分で望んだわけでもないのに貧困層の両親から生まれてしまったら、その時点で人生の選択肢は限られてしまう。そういう意味では実際に起きた事件を題材にしているだけあって、香港の社会状況の一面を知らせる優れた内容になっている。
しかも、この作品で被害者となる少女は、香港出身ではなく、どっかの地方都市からやってきたようだ。そうなると、香港の社会状況というよりは、中国の――とも言えそうである。
この作品を娯楽として面白いかと言われると、微妙な部分はあるけども、この作品で描かれる貧困層の生活環境って、日本(というか、世界全体か)でも対して代わりないんだろうと思う。
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