ケンとカズ
これはなかなか切ない話だ。底辺の生活から抜け出すには、犯罪に手を染めるしかないのだろうか。現代社会のリアルな一面を描いているようにも思わせて、非常に優れた作品だと思いました。関係ないけど、なんかね、タイトルの語呂の良さが「ずんのやす」を思わせる。「ずんのやす」「ケンとカズ」(笑)。ネタバレすこし。
―2016年 日 96分―
あらすじと解説
解説:第28回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門で作品賞を受賞した犯罪ドラマ。自動車修理工場で働きながら覚醒剤を売りさばく二人の男が、家庭の事情を抱えながらも裏社会で生きていく姿を活写する。監督・脚本・編集は、本作が長編デビューとなる小路紘史。出演は『35歳の童貞男』のカトウシンスケ、「はやぶさ 遥かなる帰還」の毎熊克哉、「ライチ☆光クラブ」の藤原季節、「蜃気楼の舟」の高野春樹。(KINENOTE)
あらすじ:悪友であるケン(カトウシンスケ)とカズ(毎熊克哉)は、自動車修理工場を隠れみのとしながら覚醒剤の売買で金を稼いでいた。そんな中、ケンの恋人である早紀(飯島珠奈)が妊娠。ケンはまっとうな人生を願うようになる。一方、カズは認知症の母を施設に入れるために金が必要なことを打ち明けられずいた。やがてカズは密売ルートを増やすため、敵対グループと手を組むという危険な行動に出る。これを最後の仕事にしようと決意したケンだったが、元締めのヤクザに目をつけられ次第に追いつめられていく……。(KINENOTE)
予告とキャスト・スタッフ
(シネマトゥデイ)
監督・脚本:小路紘史
出演:カトウシンスケ/毎熊克哉/飯島珠奈
ストリートハスラーの生き様を描く
去年公開されてたんだけども、上映館があまりなくて、時間がとれずに鑑賞を断念した映画。レンタルに出てたので早速借りてきた。短い時間でしっかりとストリートハスラーとして生きざるを得ない主人公2人の生き様を描き切った、素晴らしい物語です。
何がいいって、登場人物、特に主役の2人に面倒くさい心理描写的なセリフが一切ないこと。ないんだけど、彼らの演技から考え方や思いが伝わってくるのだ。2人ともセリフ棒読みっぽいところもあるんだけど、それはさほど気にならない。特にカズのほうの狂気すら感じるあのイキリっぷりはすごいですね。なんであんなに俺王になるのかわからんけども、彼は相手に自分の考えを伝えられない不器用な男なのである。
つかず離れず、でもお互いのことは大事なようだ
そして、やくざの組長、藤堂さん。上っ面だけというか、どうでもいいことばっかり喋っている。しかも笑顔で。あれが、何考えているのか分からない感が出て、怖いんだよね。そして、マジになると鬼畜な表情で鬼畜なことをしてのける。恐ろしい。
主人公2人は長い付き合いの友人同士のようだけど、さほどそれぞれの生活については語らないし、お互いのことを知らない。でも、物語が破滅的に進行していく中で、少しずつそれぞれの境遇を知っていく。もちろんだからといって、彼らは助けあったり悩みを吐露したりはしない。
でも、ラスト。2人はそれぞれがそれぞれのやり方で、お互いへの思いを示すのだ。どうにも後戻りができなくなるまで、友情を確かめ合うことができない。そんな悲惨で不幸な人生を歩まざるを得ない出自が彼らにはあって、それが今の日本を生きる俺たちの生活と地続きに存在するであろうことを知らせている、恐ろしくも悲しく、素晴らしい作品であった。
カズと言えば、もちろんこの人↓
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