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映画『全員死刑』ネタバレ感想 題材は大牟田一家4人殺害事件

全員死刑
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全員死刑

バイオレンス描写がなかなかエグイが、ところどころで笑えてしまう変な映画。実際に起きた事件を題材にして脚色を加えた内容に、作り手のパワーを感じた。最後まで面白く観られる娯楽作品である。ネタバレ少し。

―2017年公開 日 98分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:「トリガール!」の間宮祥太朗主演、2004年に起きた大牟田一家4人殺害事件および獄中手記『我が一家全員死刑』を基にした犯罪劇。タカノリは借金苦に喘ぐ家族を救うため資産家一家から金を奪おうとし、その家の息子を殺したことからさらなる凶行に走る。監督は「孤高の遠吠」でゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016グランプリを獲得した小林勇貴。本作で商業映画に進出。また、「蠱毒 ミートボールマシン」などでメガホンを取るほか数々の作品の特殊造形も手がける西村喜廣がプロデューサーとして参加している。(KINENOTE)

あらすじ:情緒不安定なヤクザ組長の父・テツジ(六平直政)とヒステリックな母・ナオミ(入絵加奈子)を持つタカノリは、借金を抱え困窮した家族を守るため、兄・サトシ(毎熊克哉)と一緒に近所の資産家一家から現金を強奪しようとする。しかし後手後手に回ったうえに一家の息子を殺害。一人殺すなら全員殺すも同じこととばかりに、タカノリの一家は家族のためと言いながら無謀で狂気じみた人間狩りを繰り広げる。(KINENOTE)

監督:小林勇貴
脚本:小林勇貴/継田淳
原作:鈴木智彦:(『我が一家全員死刑』(コアマガジン刊行))
出演:間宮祥太朗/毎熊克哉/六平直政/入絵加奈子

ネタバレ感想

残酷描写で笑える(特にカレープール)

これはなかなかすごい内容であり、今までの映画とは何かが違うと感じた。何が違うのかは説明できないので、すごさについて言うと、爽やかに、コミカルに殺しを描写しているところ。やっていることは鬼畜なのに、笑わせてくれるのである。これってなかなかすごいことだ。

目を背けたいけど、怖いもの観たさで残酷描写のある作品を鑑賞するのは誰にでもあること。この作品もそうしたスタンスで観ることができる。しかし、怖いもの観たさで作品を観る者に対して、この作品は残酷描写で笑わせにかかってくるのだ。そして実際、いくつかのシーンでは笑ってしまう(特に、唐突に始まるカレープールは本当に笑える)。

この体験には、怖いもの観たさで作品を観た俺のような人間に対する、作り手の何らかの皮肉が込められているように感じる。「お前も笑っちゃうくらいクズで鬼畜なんだよ」というような。少なくとも俺はそう思った。

だから、原作から「我が一家」を省いて『全員死刑』というタイトルにしたのは、文字通り、どいつもこいつも全員死刑に値するという意味も込めたのではないかと思っている。もちろん、俺の勝手な解釈だが。

作品全体を覆う爽やかさ

家族の中で、最もまともな人間として生きられる可能性があったのは、主人公のタカノリである。しかし彼は、まともであるがゆえに、家族のために殺人を犯すことになるのだ。と、考えるとやっていることは鬼畜で破滅的ではあるものの、その犯罪行為に目をつむって観てみると、どこにでもいる普通の家族を描いた、家族映画とも言えそうだ。

ということで、『ケンとカズ』『クズとブスとゲス』『ディストラクションベイビーズ』と同じようなパワーを感じる作品だった。そしていずれの内容も、底辺の環境で生きざるを得ない若者たちを描いたバイオレンス作品であることも共通している。

こうした内容の作品が良質なモノとして世に出てくるのは、誰にとっても格差社会がリアルに感じられる社会環境になっていることと、その底辺で生きる若者たちを描くことで、何らかの普遍性を感じ取れるからだろうか。今作からは、人生に対する怒りや諦念が感じられる。だがしかし、作品全体を覆っているのは、ある種の爽やかさであった。メリークリスマス(笑)。

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これはなかなか切ない話だ。底辺の生活から抜け出すには、犯罪に手を染めるしかないのだろうか。現代社会のリアルな一面を描いているようにも思わせて、非常に優れた作品だと思いました。関係ないけど、なんかね、タイトルの語呂の良さが「ずんのやす」を思わせる。「ずんのやす」「ケンとカズ」(笑)。ネタバレすこし。 ―2016年 日 96分―
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