スポンサーリンク

映画『メッセージ』ネタバレ 感想 言葉は人の認識を変える

メッセージ
スポンサーリンク

メッセージ

前半ではこの映画に込められたものは何だったのかという話を。後半では、描き切れていないと思われる疑問点について。いずれにしても、楽しく鑑賞できる映画でした。ネタバレありです。

―2017年 米 116分―

スポンサーリンク

解説とあらすじ

解説:第89回アカデミー賞で作品賞を含む8部門にノミネートされ、音響編集賞を受賞したSFドラマ。ある日、地球各地に大きな宇宙船のような物体が現れる。彼らの言語を解明するよう要請された言語学者ルイーズとスタッフたちは、驚くべきメッセージを受け取る。出演は、「アメリカン・ハッスル」のエイミー・アダムス、「ハート・ロッカー」のジェレミー・レナー、「ラストキング・オブ・スコットランド」のフォレスト・ウィテカー。監督は、「灼熱の魂」のドゥニ・ヴィルヌーヴ。原作は、テッド・チャンのネビュラ賞受賞作『あなたの人生の物語』。(KINENOTE)

あらすじ:言語学者のルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)は湖畔の家に独りで住み、今はいない娘ハンナとの何気ない日常を時おり思い出す。ある日、地球各地に大きな宇宙船のような物体が出現する。ルイーズは、宇宙船から発せられる音や波動から彼らの言語を解明し、何らかの手段でこちらのメッセージを彼らに伝えるよう、国家から協力を要請される。スタッフのなかには、物理学の見地から取り組むよう招集されたイアン(ジェレミー・レナー)もいた。ウェバー大佐(フォレスト・ウィテカー)に急かされながら、スタッフは少しずつ相手との距離を縮めていく。ルイーズは忙しくなるほど、ハンナの思い出が色濃く蘇る。しびれを切らした中国は核攻撃をしようとしていた。ルイーズは自分を指して「人類」というところからコミュニケートの端緒を掴む。彼らにはタコの足に似たものがあったため、彼らをヘプタポッドと呼ぶようにした。彼らはその先端から図形を吐き出す。刻々と変化する図形の規則性を見出すと、それらをコンピュータに打ち込んで会話ができるようになる。ルイーズとイアンはそれらの2体をアボットとコステロと名付ける。政府や軍はヘプタポッドが地球を攻めようとしているのではと相変わらず疑っていたが、そんなとき、ヘプタポッドの時間の概念は自分たちと大きく違っていることに気付く。彼らはアインシュタインの相対性理論の進化形の如く、驚くべき真実をルイーズたちに伝える。それは、3000年後の地球も現在と同じ座標軸にあるというものだった。ルイーズは彼らの言語を研究し理解するにつれ、自分の人生における経年も今までの時間軸の概念を超越したものになることを知る。ルイーズは彼らからの影響に混乱するが、過去が未来にやってくることが分かっても、愛することをやめないと確信する。ついに最終決断を下した中国の行動を止めるため、ルイーズはイアンを使って思い切った賭けに出る。彼女の行動は、地球を、そして彼女自身を救うことができるのか?(KINENOTE)

予告編とスタッフ・キャスト

(シネマトゥデイ)

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
原作:テッド・チャン:(『あなたの人生の物語』(ハヤカワ文庫刊))
出演:エイミー・アダムス/ジェレミー・レナー/フォレスト・ウィテカー

ネタバレ感想

原作は読んでも読まなくてもいいのではないか

5月公開作品で個人的に期待の映画ってことで、公開2日目に観てきた。立川シネマは満席だったみたい。そんなに注目集めていた作品だったとは、思わなかったのでちょっと驚き。

先に原作を読んでおいてからの鑑賞。原作の数学的説明部分はほとんど理解できなかったけども、主人公が異星人とのコミュニケーションを通じてどういう能力を得たのかってことはわかっていたので、映画を観ていても何がどうなっているかわからずに、混乱することはなかった。

ただ、原作を読んでいなくても、普通に筋を追っていれば内容はわかるような気もする。いろいろ考えると細部に突っ込みどころはあるし強引すぎるように感じる展開も。だけど、個人的には面白く観れた作品でした。

ラストの会話に全てが込められている

この映画は、主人公のルイーズの旦那になる男、イアンがラストに彼女に話すセリフこそが、作品にこめたメッセージと受け止めた。細かく覚えていないけども、ルイーズがイアンに対して、「将来の自分の身に起こることがわかっちゃったらどうする?」的な質問をする。それに対して、「できるだけ思いを伝えようとするのが大事なんじゃないか」的なことを応えるのだ。

主人公がイアンに質問したとき、自分だったらどう応えるだろうかと考えて何も思い浮かばなかったけど、このイアンの返答がすごく腑に落ちたのである。そして、この作品はそれを言いたい映画だったんだなと。まさしく、そういうメッセージ(原題はarrival)が込められた映画だったと思ったのである。

言葉でちゃんと伝える

その重要なセリフを放ったイアンと主人公は、将来別れることになるというのも何とも皮肉なもんだが、人間の関係ってのは、恋人や家族同士という狭い範囲だけでなく、国家間のコミュニケーションに置いても、やっぱり、「言葉で伝える」ということが重要だと思う。特に親しい関係においてはなかなか感謝の気持ちだのの愛情表現はしづらいものだが、別離が訪れることを知っているのなら、それが訪れる前に、できるだけ相手にできることをしたいと思うものだろう。

まさに主人公のルイーズは、その点において、来るべき将来の辛さから逃げずに、これからの瞬間ごとを、その時に自分のそばにいる人たちとともに大事に生きることを決めたのである。つまりこの映画は、今ある生の瞬間から目をそむけず、自分の側にいる大事な他者たちとの時間を、味わいつくして生きろと言っているのである。

という意味では、けっこうな古典的かつありふれた教訓、しかし古びない、常に忘れずにいたい実存的メッセージを前面に打ち出している教養的作品とも言えるのではないだろうか。

時間の概念がない?

というのがこの映画から感じた感想である。でも、個人的にはこの映画にそういうものを求めていたのではなく、異星人との意思疎通の不可能性を描いた作品であったらいいなぁという期待を持っていたので、その点では少しがっかりである。がっかりといっても、それはこっちがそういうテイストの作品を探し続けているというだけで、その点が含まれないからといってこの作品がダメだと言うつもりはない。俺が期待したことの片鱗は見せてくれていると思うし。

この作品の異星人はかなり高度な文明を持っているように見える。そして彼らはなんと、「時間の概念」を持たずに生きているらしい。言語に時制を持っていないらしい。しかし、そういう生命体ってどういうのなんだ? なんでそういう生き物と意思疎通ができるのか、わかるようでようわからんのである。

使用する言語が考え方や認識に影響を与えるという仮説があるそうだが、この作品の主人公は、異星人の言語を理解することによって、人間の認識力を越えた存在に変容していく。それは過去も未来もなく、全ての時を同時に生きる力だ。

しかし、この作品で描写されるように、選択を変えることができるのであれば、自分が今を生きながら見ている未来とは、どの未来なんだろうか。その辺の説明がなく強引に物語を収束させていくことに対しては、疑問が残るのである。

映画『虐殺器官』言葉の力を侮るな! ネタバレ
原作者の伊藤計劃にはデビュー当時から興味があって、作品を読みたいと思いながらも放置し続けて、いつの間にか亡くなってしまっていて、たまたま映画になったことを知って鑑賞の機会を得た。この作家は、「言葉の可能性」というか「言葉の持つ力」のようなものに、何か強い思いがあるように感じた。そこが興味深いのである。ネタバレあり。

時間の概念がない世界で人間は何をどう認識するのか

例えば、あの中国人の上将との対話。あれって、ドラえもんで言う、宿題を片付けた未来の自分に会いに行くのと同じだ。携帯電話の番号を未来の上将に教えてもらい、過去においてその番号から電話をかける。これってどういうことなんだろうか。最初に電話をかけたのは過去なのに、その情報は未来から得ているのである。直線上の時間ではなく同じ点の中に全ての出来事があるのだとしたらそれは可能かもしれない。

そして、それが可能なために、異星人たちは3000年後の自分らを救ってもらうために3000年前の地球人とコンタクトをするのだ。「武器である言葉を伝える」ために。ルイーズは異星人と同じ認識力を得て、それを共通言語として世に出す仕事を始めることが未来のビジョンの中で描かれていた。つまり、異星人は自分たちと同じ、時の概念を持たない言葉を与えるために、人類とコンタクトをとったということだろう。

個人的には、こっちの話をもっと掘り下げてほしかったという思いはある。この作品においては、上述した「人間的な愛のある世界」を表現したいがために、SF的説明を「時間の概念がない生命体」というただそれだけで説明したことにしてしまっているように思える。

そこをさらに掘り下げて説明してくれたなら、この映画は別の意味で素晴らしい作品、つまり鑑賞者の認識力すらも変容させる何かを表現できたのではないかと思う(それはさすがに無理か)。望みすぎなのか、説明されていたのに俺が理解していないのか。いずれにしても楽しく鑑賞させていただきました。そして、外国語ができたらいいなぁと思わされた。

善悪を越えた言葉を獲得するために、みんな人間であることをやめよう。

存在とかへの私的な疑問

雑談の中でも、かなり私的な話題に触れてます。映画の内容に触れながら考えていることが多いかも

映画『アナイアレイション 全滅領域』ネタバレ感想 ラストも踏まえて個人的な考察
何も考えずにボーっとして鑑賞するには少し難解な作品。細胞分裂とか遺伝子のコピー? とかよくわからんことが多いけども、要するに、人間とは別の認識というか概念を持つ地球外生命とのコンタクトのお話のようだ。ネタバレあり。 ―2018年公開 米=英 115分―
映画『美しい星』ネタバレ感想 美しさの基準を決めたのは誰か
この映画では細部によくわからんことがある。中でも一番大きな謎は、こいつらは結局、宇宙人なのか地球人なのかどっちなの? ということだ。でも、それってどうでもいいことなんだろうと思う。ところどころ笑えるし、奥行きを感じる面白さのある作品でした。ネタバレあり。―2017年 日 127分―

コメント

タイトルとURLをコピーしました