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映画『アナイアレイション 全滅領域』ネタバレ感想 ラストも踏まえて個人的な考察

アナイアレイション全滅領域
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アナイアレイション 全滅領域

何も考えずにボーっとして鑑賞するには少し難解な作品。細胞分裂とか遺伝子のコピー? とかよくわからんことが多いけども、要するに、人間とは別の認識というか概念を持つ地球外生命とのコンタクトのお話のようだ。ネタバレあり。

―2018年公開 米=英 115分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:2018年に公開された米英合作のSF映画である。監督はアレックス・ガーランド、主演はナタリー・ポートマンが務めた。本作はジェフ・ヴァンダミア(英語版)が2014年に発表した小説『全滅領域』を原作としている。(Wikipedia)

あらすじ:秘密任務から生還した夫が危篤状態に。最愛の人を救うべく、生物学者のレナは政府が封鎖した地域へと足を踏み入れる。その異様な世界で、彼女は一体何を見たのか。(Netflix)

監督・脚本:アレックス・ガーランド
原作 :ジェフ・ヴァンダミア『全滅領域』(早川書房)
出演:ナタリー・ポートマン/ジェニファー・ジェイソン・リー/ジーナ・ロドリゲス/テッサ・トンプソン/ツヴァ・ノヴォトニー/オスカー・アイザック

ネタバレ感想

生きる目的を失った女性たち

シマーとかいう境界線の中は虹色の光が射す異世界。この異世界は境界を少しずつ広げて、地球を侵食している。で、アメリカ政府は軍人を調査に送り込む。主人公のレナの旦那はその調査隊に所属する軍人で、ある日そこから生還してきたはいいものの、それはレナの知る以前の旦那の姿ではなかった。

そして旦那は危篤状態に陥ってまう。実はレナも元軍人で、旦那とはその当時に知り合ったのだが、今は生物学者として大学の先生をしている。で、あろうことか赴任先の大学の他の先生と不倫しちゃっていたのだ。

てなことで、レナは旦那に後ろめたさがある。そして、旦那への罪滅ぼしなのかなんなのか、シマーを調査する隊員として境界の中に足を踏み入れることに。

レナが所属するチームの隊員はすべて女性。心理学者と物理学者と救急隊と、あと、忘れたけどもう一人。それぞれが人生になんの希望も抱いておらず、死に場所を探し求めているような腹に一物抱えた人物たちだ。そういう人間だからこそ、チームの一員として選ばれたし、隊に所属することを選んだのである。

つまり、彼女たちは生還することをさほど望んではいない。生きる目的がなく、失うものが何もないから。唯一、レナだけは旦那の元に帰る意思があったようだ。

細胞分裂? コピー? よくわからん

何も考えずにボーっとして鑑賞するには少し難解な作品。細胞分裂によって境界内の生物たちは各々の遺伝子をコピーしあって(?)、コピーした生物の特徴を手に入れて異形の存在へと変貌していく――という理解があっているのかはものすごく怪しい。怪しいが、ともかく、境界の中にいる生き物は、灯台に落ちてきた地球外生命体から侵略というか侵食されているのである。

地球外生命は地球の生物たちの体内に入り込み、その細胞をコピーして、その生物に成り代わったり、その生物を新たなものとして進化させたりできるらしい。例えばクマみたいのに襲われたシェパード(名前あってる?)さんは、その遺伝子だか細胞をクマに吸収? されてもうたので、クマは彼女の声色をつかえるのだ。

レナの旦那も同様に、何だかようわからんものに自分をコピーされ、自分は自殺する。で、コピーしたほうの地球外生命は旦那のクローンみたいな存在になって、境界の外に出て、レナのもとに帰ってきたのである。あれは本物の旦那が死ぬ前に「レナを探せ」みたいなことを言ってて、その遺伝子の記憶みたいのがあったから、彼女のもとに現れたのだろうか。

ラストのレナはオリジナルかコピーか

旦那やレナは自分をコピーされたり、されそうになったりしてたのに、どうして心理学者の女性は胞子みたいに拡散しちゃったのかとか、ラスト、コピーされた旦那と抱き合うレナも地球外生命体に侵食されていることが示唆されて終わるが、あのレナはすでに境界線の中でコピーされたクローンなのか、旦那と抱き合ったことで侵食され、進化を始めた存在なのか、俺は前者だと思うんだけど、正直よくわからん。

いずれにしても作中の地球は、レナと旦那の姿かたちをした新しい生命によって引き続き侵食されていき、別の生命体に進化した生物たちが生きる惑星に変わっていくだろう。

生命は個別から全体へ

他にもよくわからないことが多いんだけど、この作品は以前に紹介した『ダークシティ』や『インベージョン』や『パラサイト』や『ダークレイン』なんかと似たようなことを描いている。アニメの『エヴァンゲリオン』もそうだ。ほかにも、ラヴクラフトのSF小説など、過去のSF作品にはこの手の内容を示した作品が、俺が触れてないものの中にもたくさんある。

で、それらの示しているように感じるものとは何かとここでも書いておくと、人間は個別の存在から全体で一つの命の塊へと進化している、もしくは進化するべきなのではないか――と問題提起しているというか、予見しているというか、そのようなことだ。

個別の存在だからこそ、自身の特別性を大事にしたがるため、各存在間で争いがおこる。では、それをなくすためにはどうなるべきか。みんなが一つの存在になってまえばよいのである。端折って結論だけ言えばそういうことだ。

ただそうだとすると、そもそも物語の最初で示されるように、生命なんてもんはそもそも、最初から一つだったではないか。それが細胞分裂しつづけた結果、地球にはこれだけ多様な生命体が生まれ、人間もその中の一つとして存在している。それが知性を持ったままもう一度一つに戻ることは可能なのか。そこにそもそも知性は必要なのか。人間の知性なんて結局、その時代の善悪の基準でしか活用できないもののような気がする。

仮に知性を持たずに一つの存在に戻るとするなら、そもそもこんなに多様な生命として拡散する必要なんてないのではないかとも思う。しかし、そのように考えるのは人間の知性がそう考えているだけのことで、それは要するに言葉で考えられること以上のことを示せていない。

言葉で示せる限界

言葉で構築される、考えられる世界は今も昔もここが限界なのかもしれぬ。なぜなら、人間の進化系を語る物語の多くは、先に示したように個別か全体かの話になっているからだ。現在の俺の考えでは(あくまで現在の)、これ以上先のことは、言葉では示せないのではないかと思っている。だからこそ、創作物としての物語で描かれるのもそうした内容のものなのだ。単に俺がそういう解釈しかできないから、という可能性も大いにあるけども。

いずれにせよ、これらの物語がおもしろいところは、地球外の生命などを登場させることで、人間とは異なる認識力や、言葉という概念を持たない存在とはどういうものなのかを想起させてくれるところにある。

そんな存在は人間には理解できない、認識できないものであるはずだ。そんな形而上的な何かであるのに、そこに存在を感じる――。そうした何かを言語化もしくは映像化した作品の中で描写する創作は可能か、そんなことを考えさせてくれるから素晴らしい。

善悪を超えた言葉を獲得するために、みんな人間であることをやめよう

この映画はネットフリックスで鑑賞できます。

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