イップ・マン 継承
ドニー先生ファンは間違いなく見に行くと思うのでそれはいいとして、シリーズを観たことない人、ドニー先生を知らない人、香港映画に興味ない人にも、とにかくオススメしたい。本当に面白いしカッコいい、個人的には今年劇場で観た中ではベストに入るくらいの満足感を得られた作品である!
―2017年 香港=中国 105分
解説:ブルース・リーの唯一の師として知られる詠春拳の達人イップ・マンを、ドニー・イェンが演じるシリーズ第3作。1959年香港。町を牛耳る悪徳不動産王フランクの暴挙に立ちはだかる武術家イップ・マン。だがそれは、家族をも命の危険にさらすことを意味していた。共演は「グランド・マスター」のマックス・チャン、「イップ・マン 葉問」のリン・ホン、「冷血のレクイエム 極限探偵B+」のパトリック・タム、「ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える」のマイク・タイソン。第1作「イップ・マン 序章」、第2作「イップ・マン 葉問」に続きウィルソン・イップが監督を務める。(KINENOTE)
あらすじ:1959年。好景気に沸く香港は、その一方で無法地帯になりつつあった。妻と息子と共に穏やかに暮らしていた武術家イップ・マン(ドニー・イェン)は、裏社会を牛耳る外国人の不動産王フランク(マイク・タイソン)による暴挙から町を守るため、立ち上がる。だがそれは、自身の家族をも命の危険にさらすことを意味していた。さらには、武術“詠春拳”の正統をめぐって挑まれた死闘。果たしてイップは、人生において最も大切なものを見出し、守り、伝えることができるのか……。(KINENOTE)
監督:ウィルソン・イップ
アクション監督:ユエン・ウーピン
出演:ドニー・イェン/マックス・チャン/リン・ホン/パトリック・タム/カリーナ・ン/マイク・タイソン
立川の極爆上映がオススメです
立川シネマシティの極爆上映てので観てきました。すげぇよかった…。別に極爆の上映回を狙ったわけではないんだけど、打撃音だの水滴の飛び散る音だのともかく素晴らしい。刃と刃が擦れ合う嫌~な音まできっちり耳の奥に入ってきて、ともかく満足できる映画体験であった。
シリーズ中ベストの作品であった
本作はイップ・マンシリーズの3作目ってことだが、劇場で観たこともあってシリーズ中で最も満足できる内容。このシリーズは実在の人物を描いているものの、多分にフィクション的要素が詰め込まれているので、俺はストーリー自体には面白みをさほど感じない。物語の進行に影響しない無駄なシーンもけっこうあるし。
とは言え、格闘シーンはどれも見どころ満載で、今年公開された『ドラゴン×マッハ』が霞んでしまうくらいに楽しめたのである。
タイソンとの格闘はかなりの名勝負
その格闘シーンに面白味を加えているのが、マイク・タイソンとマックス・チャンである。タイソンは漢字名では「泰臣」となっていた。で、まずはそのタイソン。ヘビー級にしては小柄だが、ドニー・イェン先生と比べればウェイト差はかなりある。シフトウェイトに全盛期のようなキレはないものの、ヘビー級の殺人パンチは健在。ドニー先生は肘でパンチを受けていたが、普通なら肘のほうが壊れるだろってくらいの重量感のあるパンチなんである。
で、ドニー先生はあまりにパワフルな相手の攻撃に劣勢になる。そこで戦い方を変える。なんかコサックダンスみたいに片足を水平にしながら深く腰を落としての構え。構えの名前をなんていうのかしらんが、体幹が強くないとあれはできなそう。あの構えだとどう考えてもスピーディに動けなそうであんまり意味ないと思うのだが、ドニー先生は「かかってこいや」と言わんばかりにタイソンを挑発。
どんな攻防になるかというと、対ボクサー戦略のセオリー、下半身攻めに入るのである。やはりそう来るか! 猪木対アリのような構図になるのか? と思わせて攻防が再び始まる。もちろん猪木のようにずっと寝っ転がっているわけではない。あの構え自体はやはり何だったのかよくわからんが(笑)、下半身攻めにはそれなりの効果が。
でも、途中でドニー先生はその攻撃に飽きたのか、やめちゃうのである。またいつも通りの構えに戻って格闘が続く(笑)。
てなことで、投げ技も盛り込みながら、タイソンのパワフルな打撃に対応しつつつ、詠春拳おなじみのコツコツ回転パンチなどを駆使して、互角の戦いを繰り広げるドニー先生。いったいどうなってしまうのか!!? と思っていたら、目覚まし時計の音が。そういえば、戦闘が始まる前にタイソンが、「3分間立っていられたら云々」と言っていた。つまり、どう考えても3分以上戦ってたと思うが、ラウンド終了の合図だったのである。では、仕切り直しの第2ラウンドか? と思わせてこの戦いは終了。タイソンは「なかなかやるな、カンフーマン」てな感じでニヤリと笑い、引き分けに終わるのである。
おいおいおいおい
と思ったけど、まぁいいか。タイソンもヘビー級のレジェンドチャンプとしてのプライドもあるだろうから、敗北する姿をうつされるのは嫌だったんだろうなぁ。白黒つけろやと思う人もいるかもだけど、俺はあの引き分けはいいのではないかと思った。どっちのすごさも堪能できる、名バトルになっていると思う。
ラストバトルはタイソン戦ではない
で、その後どうなる? てわけだが、俺はこれで映画が終わるのかと思った。でも、まだまだ話は続くのである。実は、タイソンはラスボスではないのだ。ラスボスは、序盤から登場してカッコいい戦闘を繰り広げまくっている、マックス・チャンなのであった。
おいおいおいおい
と、正直思いました、最初は。というのも、俺はこのマックス・チャンがタイソンといろいろあって戦うことになってボコられ、その仇討も含めてドニー先生がタイソンと戦うことになるという流れになると思っていたからだ。しかしそれだとサモ・ハン師匠が出てた、前作と同じパターンになっちゃうよな(笑)。あえて王道パターンは外したということなんだろうか。
よく考えてみれば、序盤からあれだけ活躍してたマックス・チャンがあのまま出てこないで終わるわけがない。このマックス・チャンはドニー先生と同じく詠春拳の使い手。しかも、かなり腕に自信を持っているから、ドニー先生と初対面のときから、戦いたくてウズウズしてたんだな。物語途中で金に目がくらんで悪の道に走るので、そこを突っ走るのかと思わせておいて、そうはならなかったりとなかなか中途半端な描かれかたではあるけど、ともかく彼が最後のボス。
ちょっと変だなと思ったのは、彼の成り上がりのスピード感。最初、彼との果たしあいにドニー先生が現れないのは、死期が迫っている奥さんとの時間を大事にしたかったから。それはわかる。でも、奥さんの病気が発覚したとき、医者は「あと半年くらい」と余命を宣告していた。
てことは、マックス・チャンは車夫からあれだけの武館を構えるまでに半年もかからなかったということだ。各流派の師匠を瞬殺することを繰り返せば確かに瞬く間に名が売れるだろうけど、さすがに早すぎだろとは思った。
マックス・チャンの魅力溢れる作品
まぁでも面白いからいいや。今作のマックス・チャンはすげーすげーカッコよい。こないだ『ドラゴン×マッハ』の記事でジョン・ローンに似ていると言ったけど、本作だと成宮寛貴と堂本剛、さらにジョニー・デップを足したようなワイルドさも混じった超絶イケメン。いうほど若くはなくて、実は俺より年上の42歳だそうだけど、体術もキレキレだし本当にカッコいい役者だと思った。ドニー先生ももちろんいいんだけど、俺は今作でマックス・チャン兄貴にかなりやられた。
見どころたくさんの作品です
あとあと、ちょっとしか出てこないけど学校教師役のカリーナ・ンていう女優さん。この人がすごく美人であった。素敵な容姿であった。また何かの作品でお目にかかりたい。
作品自体は105分しかないのであっという間に終わるのかと思ったけど、次から次に戦闘シーンが繰り広げられるので、濃密でおなかいっぱいになれる作品である。
エレベーター内でのムエタイ使いとの戦闘シーンなど、他の見どころについても書きたいけど、文章なんかで読むよりは、ともかく鑑賞したほうがよろしいです!
その他、香港映画の記事↓
コメント