アイ,ロボット
「俺はロボットだ!」ってそんなん言われなくてもわかっている(笑)。わかっているんだけど、こういう作品を観ているとロボットと人間の存在の在り方としての違いってなんだろうと思わされる。てなことで、作品内容に触れつつそんな話を。ネタバレあり。
―2004年公開 米 115分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:意志を持ったロボットたちが反乱を起こす近未来社会を描いたSFアクション。監督は「ダークシティ」のアレックス・プロヤス。脚本は新鋭のジェフ・ヴィンターと、「ビューティフル・マインド」のアキヴァ・ゴールズマン。原作はアイザック・アシモフの古典的なSF小説『われはロボット』。撮影は『チェイス』(V)のサイモン・ダガン。音楽は「ターミネーター3」のマルコ・ベルトラミ。美術は「バトルフィールド・アース」のパトリック・タトポロス。衣裳は「ダークシティ」のエリザベス・キーオウ・パーマー。主演・製作総指揮は「バッドボーイズ」シリーズ(出演のみ)のウィル・スミス。共演は「リクルート」のブリジット・モイナハン、「アトランティスのこころ」のアラン・テュディック、「スペースカウボーイ」のジェームズ・クロムウェル、「ザ・コア」のブルース・グリーンウッド、「NARC ナーク」のチー・マクブライドほか。
あらすじ:2035年のシカゴ。新しい家庭用ロボットの出荷準備をしている巨大産業会社USRで、事件が起こる。事故のトラウマでロボット嫌いになっているシカゴ市警デル・スプーナー刑事(ウィル・スミス)は、現代ロボット工学の第一人者であるラニング博士(ジェームズ・クロムウェル)から連絡を受け、USRに向かう。だが待っていたのは博士のホログラムで、彼はすでに死んでいた。スプーナーは、USRの主任ロボット心理学者の女性、スーザン・カルヴィン博士(ブリジット・モイナハン)の案内により、犯人を捜索。すると研究室に隠れていた1体のロボットが慌てて逃げようとする。捕獲され本署に連行されたロボットは、自分はサニー(アラン・テュディック)だと名乗る。しかしスプーナーはサニーの博士殺しの動機に見当がつかず、捜査を続行。一方、スーザンは、サニーが重要な法律”ロボット3原則“に従ってプログラミングされていないことを発見。通勤途中、ロボットに襲われたスプーナーは、真相を追ってスーザンと共にサニーと面会する。するとサニーは、自分が見た夢を描いた絵をスプーナーに贈る。そこにはロボットを解放する男の姿が描かれており、男はあなただとサニーは答えた。まもなく、人間に対するロボットたちの反乱が始まり、スプーナーとスーザンは元凶であるUSRに急ぐ。そして、すべての命令を下していたメインフレーム・コンピュータのヴィキ(フィオナ・ホーガン)を破壊。ロボットたちの反乱は治まり、サニーはラニング博士に頼まれて彼を殺し、博士は自分の死をもってメッセージを送ったことが判明するのだった。
監督:アレックス・プロヤス
原作:アイザック・アシモフ
エグゼクティブプロデューサー:ウィル・スミス
出演:ウィル・スミス/ブリジット・モイナハン/シャイア・ラブーフ
ウィル・スミスはSF系によく出てるね
ウィル・スミスって、エイリアンとかゾンビとか、ロボットと戦ったり、大変だねぇ(笑)。この人が今作演じるのは、ロボット大嫌い刑事。なんで嫌いかというと過去、自分と見知らぬ少女が遭遇した交通事故でロボットに救われたんだけど、その際のロボットの選択が気に入らなかったそうです。
事故に遭った少女とウィル・スミス。どちらが生存率高そうかを計算したロボットは、その論理的思考によって、助かる可能性が高かったほう、つまりウィル・スミスを救う。それが気に入らないらしい。「おまえが人間だったら、俺じゃなくて少女を救うだろ!」というのがウィル・スミス=スプナー刑事の意見。だからロボットが嫌いなのである。
ということで、そんなロボット嫌い刑事が、ロボットによって生活に革命が起ころうとしている社会の中でちょっとしたキーマンとなり、ロボット軍団と戦う、というか、軍団を操っている奴と戦うことになるわけだ。
SF小説の古典的な有名作品はいくつか読んでいるけど、有名なアイザック・アシモフは読んだことなくて、この作品では彼の「ロボット三原則」が軸になっていることを知って、興味を持ったので鑑賞。内容自体は直線的でわかりやすいので特に難しさもなく劇終に至る。てなことで普通に楽しめばいい作品です。
だが、突っ込みたいところはある(笑)
スプナー刑事は上述した事故がきっかけで左腕を失ったらしく、左肩から左手のひらまでは、ロボット化されている。その手術を施したのは物語冒頭で自殺することになる博士。なんでも警察署員はそういう手術を受けられる権利みたいのがあるらしい。
でも、物語中にはスプナー刑事以外にそういう手術を施された警察官は出てこない。しかも、スプナーは左腕が機械なことを、同僚たちに隠している。なんでだろうか? 警察官が事故にあった場合に機械化手術を受けられるのは、ある意味名誉みたいなもんだと思う。忌むべきものとして隠される必要はないと思うのだが。
ついでに、この左腕のおかげてスプナーは危機を脱するシーンが2回ほどあるんだけども、もう少し左腕を使った活躍がいっぱいあってもいいんじゃないかなぁとは思った。どっちかというと、右腕の銃ばかり使っている。
※上記について、2018年8月15日くらいにコメントいただきました。その方曰く、「スプーナーが義手を隠していたのは、ロボット嫌いなのにロボット工学を元にした義手を頼ってしまっていることに嫌悪感があったからなのでは…?」ということです。(記事末参照)うーむ、確かにそうだ。何で俺はそこに思いが至らなかったんだろうか(笑)。(2018.8.17)
物語は中盤まで、スプナーが捜査を進めてロボットを作っている大企業の謎に迫る展開だ。ここはけっこう退屈。要所でロボットとスプナーが追いかけっこしたり、スプナーがロボット軍団に襲われたりするものの、なんか物足りない展開。特に後者のロボット輸送トラック2台に挟まれて危機に陥るトンネル内のシーン。
何でスプナーの車しかいないんだよ。しかも、あの車耐久力高すぎ。ついでに、あんな派手に襲っちゃったら、ロボットの危険性が世間に洩れてしまうと思うんだがなぁ。ちょっと都合がよすぎるシーンである。
本作のロボットと人間の違いは?
とかまぁ、いろいろ突っ込みたいシーンはあるけども、ウィル・スミスのアクション映画だからこんなもんだろうと許せちゃうのは、最初からそこまで期待してなかったからだ。なので、ちょろっと暇つぶしに観るにはいいんではないだろうか。
ちなみに、SFでロボットが出てくる、しかもアシモフの有名なロボット三原則というやつが取り扱われている話ということで鑑賞したのは、このブログでたまにクローン人間を扱った作品などを取り上げるのと理由は同じ。
俺はロボットはロボットで人間ではないと思うものの、言葉を使って人間と齟齬のないコミュニケーションが取れる存在には、人間でいう魂みたいのがあると思っている。この物語で言えばそれは特別なロボットであるサニーだ。
彼は人間の感情に近いものを持っていることがわかるし、ところどころ人間の言葉の使い方を理解してはいないものの、終盤に至って、スプナーと言葉を使わない意思疎通ができるようになっている。あれはもう、人間とは大差ない存在じゃないかなぁ。
では、サニーとそれまでの型式のロボットの何が違うかというと、その、言葉を使わない意思疎通ができるか否か――ということではないだろうか。サニーの型式は進化できるらしいので、それもまた人間的と言えば人間的。
子どもが言葉を使いながら人間の様々な慣習やらなんやらを学んで社会生活が営めるようになるのと同じように、サニーたちの型式は進化=学習=成長できるのである。それってもう人間と一緒とまでは言わぬでも、存在の在り方としては同じような気が。同等の自己意識があるっていう意味では。
だから、サニーと同じ型式のロボットたちが、仮にこの物語で人間の生活を助ける存在として活躍を続けたなら、サニー以外にも彼(彼女?)と同じような感情を持って人間のことを理解できる奴があらわれるはず。そして、そのように人間の感情を理解できるロボットたちは、外見以外は人間と変わらぬ存在なのである。
ターミネーターにつながると考えてもさほど違和感はない
ラスト、サニーは他のロボットたちと保管所に移動するわけだが、あの後はどうなるんだろうか。俺の予想だと、サニーがリーダーとなってロボットたちはコミュニティをつくって生活をすると思う。最初はいろいろあっても人間社会とつかず離れずか、それとも密接にかはわからないが、協業的に相互補完的に関わりを保つのだろうと思われる。
だがきっとそれが続いた場合、人間の中には彼らに反発する人も出てくるだろうし、ロボットの中にも人間に反抗することを考える存在が出てくるはずだ。そして、何十年先か数年かはわからんけども、人間たちと血みどろの戦争を繰り広げるはずである。その世界はターミネーターのような世界ほど殺伐としたものではないかもしれないが、そうなったら恐らく、勝つのはロボット側だろうねぇ。けっきょく、理解し合えるということは、全面的には理解し合えないということでもあるので、人間同士とは言わなくても、似たもの同士は争いをするもんなんである。
なんかあんまり関係ないけども、そういうことを考えた作品でした。
※上記の、ターミネーター的世界になる可能性はかなり低い――というご指摘いただきました! 詳しくはコメント参照ください。2019.08.05
コメント
スプーナーが義手を隠していたのは、ロボット嫌いなのにロボット工学を元にした義手を頼ってしまっていることに嫌悪感があったからなのでは…?
なるほど、確かにそうですよね。本文内にコメント引用させていただきます。名無しの権兵衛さん、ありがとうございました。
ロボット三原則を破れるのは博士に作られたサニーと三原則を拡大解釈したAIであるVIKIのみ。
その他のロボットは三原則に従って動いているのでサニーのようなコミュニケーションを取ることは不可能だと思われます。
よって、仮にサニーがNS-5のリーダーになってコミュニティを作り上げたとしても、ターミネーター的展開になることは極めて低い。
なぜならVIKIはサニー以外のNS-5を制御出来るが、サニーには出来ないので仮にサニーが人間に敵対しても作中のように弾圧することが出来ない。
なるほど。そういうもんなんですね。本文中でもコメントあったこと追記させていただきます。ありがとうございました!