ハングマンズ・ノット
いい意味でぶっ飛んだバイオレンス映画。序盤の勢いそのままにラストまで押し切る力強さを感じた。主要人物を演じる役者たちも良い。ネタバレあり。
―2018年公開 日 87分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:カナザワ映画祭2017期待の新人監督賞を受賞し、「ファミリー☆ウォーズ」で商業映画デビューした阪元裕吾によるバイオレンスホラー。コミュ障の柴田と暴力的なヤンキーの影山兄弟。この2組が出会ったことから、周囲も巻き込む容赦ない殺し合いが始まる。カナザワ映画祭2017出演俳優賞(安田ユウ)、ゆうばり叛逆映画祭2018作品賞受賞。第5回夏のホラー秘宝まつり2018で上映。(KINENOTE)
あらすじ:孤独でコミュ障で心に闇を抱えた大学生の柴田と、田舎でくすぶりながら暴力衝動を発散し続けるヤンキーの影山兄弟。出会ってはいけない2組が出会ったことから、無関係な人たちも巻き込んだ情け容赦のない殺し合いが勃発する。(KINENOTE)
監督・脚本:阪元裕吾
出演:吉井健吾/安田ユウ/松本卓也
ネタバレ感想
ネットフリックスで見つけて鑑賞。なかなかぶっ飛んでますな、いい意味で。バイオレンス作品は結構好きなので、俺は楽しめた。
突っ込みどころはかなりある。例えば、後醍醐親子って結局何だったん? とか。武器は彼らのところから調達したのかなと思えるんだけども、直接描写がないから何とも言えない。そもそも、何で彼らがそんなに武器を手に入れられるかも謎だし。
あと、影山兄弟率いるチンピラ集団の乱暴狼藉に対して、警察が動くのは序盤のみ。他にも白昼でも堂々と酷いことしてるのに、彼らは逮捕されない。人も殺しまくってるのに。終盤で京都タワーが爆発するシーンも、彼らがどうしてそんなことできたのかは描かれない。
さらに、柴田君が友人だと思っている野口君は、なぜ柴田君の平手打ちだけで絶命しちまうんだろうとか、それよりなにより、なぜ柴田君はあんなに強いんだろうとか。
なんか、中途半端に格闘センスありそうな動きをしちゃうところにも少しの違和感(笑)。あと、これは影山兄弟もなんだけど、射撃うますぎだろ。
とかまぁいろいろ腐してしまったけど、短くまとまっててそれなりに楽しい。特に、序盤のほうの女子高生をさらってからのレイプシーンとか、延々と長回しで影山率いるチンピラ軍団の凶悪かつ無軌道な様を描写するシーンは、本当に恐ろしく胸糞が悪い。でも、こういう若者もいるんだろうなと思わせる力がある。
ともかく、この映画には、何かパワーを感じる。そこがいいところだ。近年の邦画には、大々的に話題になることはないものの、こうした作品を撮影する監督が何人かいて、例えば『クズとブスとゲス』の奥田康介監督とか、『全員死刑』の小林勇貴監督とか、『獣道』の内田英治監督とか、『ケンとカズ』の小路紘史監督らがそれにあたる。
あと、入江悠監督なんかにも、その感じがある作品がいくつか。本作の監督もふくめ、みんな20代~40代とかなり若いところが共通している。
みんなロスジェネ世代から下の人たち(たぶん)の作品ということだ。こうした監督らは、格差の広がる日本社会の底辺層を描いた作品を撮っている。それが題材にされるほど、リアルの世界がバイオレンスになっているのだろう。
で、上記の監督らの手により次々生み出される作品を鑑賞して思うのは、若者の怒りと閉そく感だ。こうなりたくてなったわけじゃないんだよ、こん畜生ーーというような感情だ。
そして、それは確かにそうなのだ。何でも自己責任で片付けさせられては困るほどに、これらの作品の登場人物たちは哀れな出自の若者が多い。
特にこの作品では、影山兄弟たちに「大人がむかつく」というようなセリフを直接喋らせている。
ロスジェネ中年の俺が思うのは、理解できない若者たちの恐ろしさを感じるのと同時に、こうした若者が現れてくる環境をつくりあげることに、自分も加担してきたんだろうなということだ。
あと、この映画を観てすごいと思ったのは、みんな無名の役者なのに、なかなか演技が上手だなぁということ。特に、影山兄弟と柴田君はそれぞれ対極な恐ろしさを感じる存在感があって素晴らしい。
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