悪い男
ヤクザ者と、彼にはめられた売春婦の交流? を描いた何ともアブノーマルな恋愛作品。ラストは二通りの解釈ができそうな、韓国のキム・ギドク監督作。ネタバレあり。
―2004年公開 韓 103分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:孤独なヤクザと女子大生の苛酷な恋愛を描いた異色ラヴ・ストーリー。監督・脚本は「魚と寝る女」のキム・ギドク。撮影は『いい人がいたら紹介して』(映画祭上映)のファン・チョリョン。音楽は「Interview」 のパク・ホジュン。出演は「魚と寝る女」のチョ・ジェヒョン、同じく「魚と寝る女」のソ・ウォン、「ユリョン」のチェ・ドンムン、これが映画デビューとなるキム・ユンテほか。2001年釜山国際映画祭韓国パノラマ部門・アジア映画振興機構(NETPAC)賞、2002年韓国大鐘賞新人女優賞、同年韓国百想芸術大賞最優秀男子演技賞、同年福岡アジア映画祭グランプリを受賞。(KINENOTE)
あらすじ:昼下がりの繁華街。容易に言葉を発することのできないヤクザ、ハンギ(チョ・ジェヒョン)は、ベンチに腰掛ける清楚な女子大生ソナ(ソ・ウォン)に一目惚れする。ソナは侮蔑の視線をハンギに向け、ボーイフレンドの元に行ってしまうが、ハンギは強引にソナの唇を奪い、街はパニックに陥った。そしてハンギは策略を立てる。書店に財布を置くという罠を仕掛け、その中身を抜き取ってしまったソナは、持ち主に責められ多額の借金を背負ってしまう。そのせいで彼女は、ハンギの仕切る売春宿に売り飛ばされてしまうのだ。ハンギはマジックミラー越しに、娼婦へと変わっていくソナを見守る日々を送る。ところがソナに惚れたハンギの子分ミョンス(チェ・ドンムン)が口を滑らし、彼女はハンギの策略でここに連れて来られたことを知ってしまう。一度脱走するが、またハンギに連れ戻され、次第に売春宿の日常に染まり始めるソナ。そんな時、ハンギは宿敵ダルス派の襲撃を受け、復讐のためにダルスを殺した子分ジョンテ(キム・ユンテ)の代わりに、出頭して刑務所に送られる。ハンギは死刑囚となったが、結局ジョンテが自首して釈放。帰ったハンギは、ソナを最初に出会ったベンチへと送っていく。しかしソナは、ハンギの元に戻ってきた。そして2人は、ソナの売春で金を稼ぎながら、トラックに乗って共に暮らしていくのだった。(KINENOTE)
監督・脚本:キム・ギドク
出演:チョ・ジェヒョン/ソ・ウォン/チェ・ドンムン/キム・ユンテ/キム・ジョンヨン
ネタバレ感想
適当なあらすじ
ヤクザ者のハンギが、街でみかけたソナという女性に一目惚れ。ソナには男がいるみたいだが、ハンギは街中で彼女にキスしちゃう。そしたら野次馬にボコられて、ソナに唾を吐きかけられた。
ちくしょう。と怒り沸騰、逆切れしたハンギは事務所の弟分も巻き込んで、ソナを書店で嵌めて、借金を背負わせてやることに。金を返済できない彼女は借金の形にハンギが仕切る売春宿で働かせられることに。
ハンギはここでソナを犯しちゃうのかなと思ってたらそうはならず、彼女の部屋の壁に仕掛けたマジックミラー越しに、彼女の生活や仕事の様子を出歯亀し続ける。で、ソナのほうは、紆余曲折を経て娼婦としての日常に染まっていく。
しかし、ある事件をきっかけにハンギは彼女を自由の身にしてやることに。してやるんだけども、その頃のソナはハンギがいなくては生きていけなくなっていた。それで、思い出の海辺で再会した2人はトラックの荷台に簡易ベッドを設け、ハンギがポン引きとなって、ソナの売春を斡旋する移動売春宿を営んで暮らしていくのであった――というのが適当なあらすじ。
ハンギはソナの容姿が好き
引用でも、俺が書いた適当なあらすじを読んでも、未見の人のはどうしてハンギとソナが一蓮托生的な暮らしをする結末を迎えたのかよく分らんと思う。俺は全編鑑賞したものの、どうしてソナがハンギに依存して生きざるを得なくなってしまったのか、よくわからんかった。最終的にはハンギのことを愛していたってことなんだろうか? よくわからん。
いっぽうのハンギのほうは、ソナの容姿が好きだったんだろうね、最初は。だって、一目惚れしてたから。それ以降も、ハンギとソナは大して交流をしないので、ハンギはどうしてソナをあんなに愛しちゃっていたのか、これまたよくわからん。
人を好きになってまうのは理屈ではないので、好きなもんは好きなんであるから、まぁそれでもいいんだけど、やっぱりあの関係性では、ハンギはどうしてあんなにソナがいいのかよくわからん。
というか、愛しているんだとしても、それって、他者のない自分自身の一方的な欲望、つまりソナに愛されたいという欲望に過ぎないのではないかと思った。そういうのも愛と言えば愛なのかな? …よくわからん。
まぁでも、最終的にはソナがハンギに歩み寄る? わけだから、ハッピーエンドと言えなくもない。どこがって感じだが(笑)。
ヤクザのコンプレックス
特徴的なのは、この作品、ハンギがセリフを発するシーンがたったの一度しかない。最初、すげぇ驚いたんだけど、ハンギはメチャクチャ声が高い(笑)。そこでわかるのは、彼が全編通してほとんど喋らないのは、不器用な性格だったとかではなくて、自分の声にコンプレックスがあるからだったことがわかる。
たぶんこのコンプレックスのせいで、彼はヤクザ者になったんだろうね。けっきょく、彼はそのコンプレックスを克服することなく劇終を迎えたように見えたが、あのあと、二人はどうなるんだろう。
実は二人とも死んだ!?
でもよく考えたら、浜辺で二人が再会して以降からラストシーンまでは、ソナのことを好きだった舎弟に刺されたハンギの、死ぬ間際に観た夢みたいなもんだったのかもしれないとも思う。もしくは一人で浜辺にきたソナの夢か。
つまり、二人は再会することなくハンギは死に、ソナは海に入って自殺したという結末。そう思わせるのは、ソナが浜辺でつなぎ合わせた写真に自分たちが写っているから。そして、初めて浜辺に来た時に見た自殺者と同じ服装に彼女が着替えているからである。どっちかというと、結末をこう解釈したほうが、個人的には合点がいく。
https://hanbunorita.com/1/eiga/spring-summer-fa…inter-and-spring.html
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