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映画 セデック・バレ 第一部 太陽旗 ネタバレ感想 モーナは中間管理職

セデックバレ
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セデック・バレ 第一部 太陽旗

大日本帝国統治下の台湾で起きた、地域の先住民で首狩の風習を持つセデック族による抗日暴動を描いた実話に基づく物語。ネタバレあり。

ー2011年公開 台 143分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:「海角七号 君想う、国境の南」のウェイ・ダーション監督による社会派ドラマ。1930年、日本統治下の台湾で起こった先住民セデック族による抗日暴動・霧社(むしゃ)事件を描く。第一部となる本作は、自分たちの文化や習慣を禁じられ、過酷な労働を強いられていたセデック族が、部族の誇りをかけた蜂起に至るまでを描く。2012年3月9日より大阪で開催された第7回大阪アジアン映画祭にて上映。2013年4月20日より全国劇場公開された。(KINENOTE)

あらすじ:台湾中部の山岳地帯に住む誇り高き狩猟民族・セデック族。その一集落を統べる頭目の息子モーナ・ルダオは村の内外に勇名をとどろかせていた。1895年、日清戦争で清が敗れると、台湾の主権が日本へ委譲されたことにより、先住民であるセデック族も日本人の開墾の労働者として扱われるようになっていく。それから35年、頭目となったモーナは依然として日々を耐え抜いていた。そんな中、日本人警察官とセデック族の一人が衝突したことをきっかけに、長らく押さえ込まれてきた住民たちが立ち上がり……。(KINENOTE)

監督:ウェイ・ダーション
出演:リン・チンタイ/マー・ジーシアン/ビビアン・スー/安藤政信/木村祐一

ネタバレ感想

モーナは中間管理職

まず先に感想から述べておくと、登場人物たちの複雑な感情が入り乱れるお話であるなぁということだった。日本人とセデック族のみの話であれば、もう少し話は単純だったかも。しかし、大陸から逃れてきた漢人もいれば、セデックとは異なるらしい先住民もいるし、日本が統治するようになって以降は、日本人化したセデック族もいるし、そうでないもともとのセデックもいるし、まぁともかく出自やら境遇がいろいろの人がたくさんいる。

いろいろいるから、それぞれがそれぞれの立場を考慮して平和にやっていければいいんだけど、なかなかそうもいかないので、感情的になったグループの怒りのパワーによって事が動かざるを得なくて、そこがなかなか観ていてつらい。

で、日本の占領下になって以降、物語の舞台となる霧社地域のセデック族は、基本的には日本人に従ってはいる。しかし、ある事件をきっかけに、頭目のモーナ・ルダオが仲間の呼びかけに応じて武装蜂起するわけだ。

で、このモーナという男を中心に物語が展開するわけだけども、若い頃の彼を見るに、よくもまぁ、日本統治下に置かれて後、20年だか30年近くも耐えられたもんだなと感心する。この物語では日本統治後から一気に霧社事件が起こる近い時期まで時間が飛ぶので、モーナは頭目として中間管理職みたいな立場に収まっている。彼は日本の武力の強さは分かっているので、若者たちの日本人に対する怒りを抑えるのに苦労する姿が、気の毒なくらいに板挟みの中間管理職(笑)。

とはいえ、自分自身もひそかにマッチをこつこつためては先端の発火部分を火薬?に加工して、喧嘩の準備をしていたのである。いつまでもストレス溜まる立場にはいられないからねぇ。やっちまいな!

でまぁ、見ての通りの惨劇であるわけだけど、この作品からは、日本人どもをぶっ殺してやったぜざまぁみろ。みたいな反日感情がにじみ出てくる印象はない。もっと複雑で切ない感情を抱かせるラストになっている。てなことで、単なる反日映画ではないからこそ余計に切ないわけで、日本人も広く見ておくべき映画であるなぁと思った。だって、こんな事件あったの知ってる人あんまりいないでしょ。

今はどうか知らんけど、俺が義務教育受けてた頃は、歴史の勉強で大日本帝国時代の外地で日本人がどんなことをしてたのかってこと、ほとんど学んでいない。ドイツでは、ナチスが犯した数々の負の歴史をきちんと教育するのだそうだ。それによる弊害もあるみたいだが、日本ではほぼ教えられる機会がないのは何でだろうか? 今は違うのかな? そういうときこそ、こうした映画は役に立つなぁと思うのである。

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他者との争い、吸収の繰り返しが人類の歴史

ちなみに、日本化していくセデック族は別として、もともとのセデックたちは独自の信仰を持っているので、殺人に対してもさほど罪悪感がない。こういう人たちに異なる信仰だの、死生観だの植え付けて日本化するには、時間をかけて彼らの血を絶やしていくのが常套手段なんだろうなと思われた。

で、さらに思ったのは、人間の歴史ってのは異民族だの人種の違いだの生活習慣だの住む土地だの信仰だの、いろいろの違いはあるんだけども、それらの接触時にはほぼ確実に対立し、軋轢となって争い、多くは血みどろの殺し合いや潰しあいをすることで、長い歴史的時間をかけて消滅させたり、吸収して混ざりあったりしてきて、少しずつ似たような価値観を持つグループの人口を増やしてきたんだと思う。

例えば、キリスト教圏とか、イスラム教圏、資本主義と社会主義ーーとかね。その中で、ある意味世界は狭くなってきたんだろうということだ。そして、俺は今そうした世界の中で、日本という島国に住んでいる。ではこれを踏まえた未来の社会はどうなるのかって考えることがあって、俺の中ではだいたいこうなるんだろうな――というような予想はあるんだけども、それはまぁここで触れるような話ではない。

ちなみに、もう一つ思ったのは、俺は戦争ものの映画をそこそこ鑑賞しているんだけども、いつも外国産のものばっかで、邦画ではあんまり観てないので、有名どころを鑑賞しようかなと思った。

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