ハクソー・リッジ
メル・ギブソンが久しぶりに監督した作品ってことで観てきた。戦場の描写はかなりグロいが、そもそも死地なわけだからキレイなほうがおかしいわな。ということで、前半はデズモンドがどんな信条を持つ男なのかが描かれ、後半はそんな彼が太平洋戦争の激戦地となった沖縄のハクソーリッジに赴き、どんな行動をしたかという話だ。ネタバレすこし。
―2017年 米=豪 139分―
解説とあらすじ
解説:メル・ギブソンが「アポカリプト」以来10年ぶりに監督、良心的兵役拒否者として名誉勲章を受けたデズモンド・ドスをモデルにした戦争ドラマ。武器を手にしないと誓った衛生兵デズモンドは激戦地ハクソー・リッジに赴き、銃弾が降り注ぐ中多くの命を助ける。のこぎりで切断したような断崖がそびえアメリカ軍と日本軍が激しく衝突した沖縄・前田高地(ハクソー・リッジ)で、味方が撤退しても信念を曲げず丸腰のまま負傷者を救出したデズモンドを「沈黙 -サイレンス-」のアンドリュー・ガーフィールドが演じたほか、「タイタンの戦い」のサム・ワーシントン、「マトリックス」シリーズのヒューゴ・ウィーヴィングらが出演。第89回アカデミー賞で編集賞・録音賞を受賞。(KINENOTE)
あらすじ:ヴァージニア州の田舎町で育ったデズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)の父トム(ヒューゴ・ウィーヴィング)は第1次世界大戦出征時に心に傷を負い、酒におぼれて母バーサ(レイチェル・グリフィス)との喧嘩が絶えなかった。そんな両親を見て育ち「汝、殺すことなかれ」との教えを大切にしてきたデズモンドは、第2次大戦が激化する中、衛生兵であれば自分も国に尽くせると、父の反対や恋人ドロシー(テリーサ・パーマー)の涙を押し切り陸軍に志願する。グローヴァー大尉(サム・ワーシントン)の部隊に配属され、上官のハウエル軍曹(ヴィンス・ヴォーン)から厳しい訓練を受けるデズモンド。生涯武器には触らないと固く心に誓っている彼は、上官や仲間の兵士たちから責められても頑なに銃をとらなかった。ついに命令拒否として軍法会議にかけられても貫き通した彼の主張は、思わぬ助け舟により認められる。1945年5月、グローヴァー大尉に率いられ、第77師団のデズモンドとスミティ(ルーク・ブレイシー)ら兵士たちは沖縄のハクソー・リッジに到着。そこは150mの断崖がそびえ立つ激戦地だった。倒れていく兵士たちに応急処置を施し、肩に担いで降り注ぐ銃弾の中をひるむことなく走り抜けるデズモンドの姿に、感嘆の目が向けられるように。しかし丸腰の彼に、さらなる過酷な戦いが待ち受けていた。(KINENOTE)
予告とスタッフ・キャスト
(timewarpjp)
監督:メル・ギブソン
出演:アンドリュー・ガーフィールド/サム・ワーシントン/テリーサ・パーマー/ヴィンス・ヴォーン/ヒューゴ・ウィービング/レイチェル・グリフィス
主人公は、なんか変
前半部は主人公の人となりが描かれるわけだが、この人、なんだか普通の人とはちょっと違う。なんか人との接し方が変てこなのである。それは恋人になり、奥さんになる女性と親密になる過程をみていると何となくわかる。
軍に入隊した後もそう。体力はあるものの、銃を持つことを拒否し続けて、上官をいろいろと困らせる。確かに戦地に向かうのに銃を使わない人なんて、なんのために軍にいるのかよくわからない。でも、彼にはきちんとした目的があるのだ。だからいろいろと軋轢のあった父親の助けも得て、衛生兵として沖縄へ。あと、軍曹の最初の登場シーン。あれって『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹と兵士たちの掛け合いに少し似てた(笑)。
日本兵が怖すぎ(笑)
戦地に着いてからが、この映画のすごいところ。ともかく戦闘描写が血みどろの地獄絵図なのだ。でも、それによって戦争の嫌さ加減がこれでもかって伝わってくるわけだから、これでいいのだ。しかし、何だか変だなと思うのは、日本兵の描き方。
デズモンドたちの隊より前にハクソーリッジで戦っていた兵士たちの日本兵に対する恐れ。ともかく、同じ人間と戦っているようには思えないというような説明をするのだ。そして、「奴らは死を恐れない」と生きて戻った一兵士は、放心状態で言う。確かに伝えられているところによると、沖縄戦の日本兵は死を恐れぬ鬼気迫る戦いを繰り広げたらしい。この映画でも、そうした日本兵の恐怖が描かれる。
地下に掘られた塹壕から現れるため神出鬼没。アメリカ兵は敵がどこから攻められているのかわからぬままにバタバタ殺されていく。しかも、無限にいるんじゃないかと思われるくらいに数が多いし、防御もへったくれもない戦法で特攻しかけてくるからたまったもんじゃない。
そんな相手と命のやりとりをする戦闘シーンだからすさまじいわけだが、日本兵の描写が殺戮マシーンみたいな感じで、人間と戦っているようには見えない。デズモンドの戦地における行動を描いた作品だから、詳細に日本兵を描写しろとは思わぬものの、戦っている相手も同じ人間なんだけどなぁと突っ込みたくなってしまったのは事実である。
いや、本当に日本兵はそういう感じだったのかもしれないけど、それでも全員がそうだったとは思えない。アメリカ兵の中には怯えて戦えない奴もいるし、ものすごく勇気のある奴もいて、いろいろな人間が描かれる。だが、日本兵にはそれがないんだな。この作品においては仕方ないんだと思いつつも。やっぱり気になってしまった。なんか、良くも悪くもその部分はホラー映画的に感じた。
反戦映画として一度は鑑賞することをオススメしたい
あと、実際はどうだったのかわからんが、崖にかけられた縄梯子。あれを登り切ったところが大激戦の舞台であり、陣地の奪い合いになるわけだが、なんで日本兵はロープ切らないんだろうか(笑)。六回攻められてその都度敵を殲滅してたわけだから、あの梯子に気付いて切ってしまうチャンスはいくらでもあったように思うのである。
と、少し突っ込みをいれたものの、非常に楽しんで観られる作品でした。反戦的な映画であることも確かで、あんなん観ちゃったら戦地になんて絶対行きたくないと思わせる。そう思わせてくれるだけでも、この映画の持つ意味は大きい。
何度も観たいとは思わないけども、一度は鑑賞することをオススメしたい良作です。
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