帰ってきたヒトラー
移民問題に揺れるドイツの現代社会にヒトラーを登場させ、全体主義の復活を予見させる風刺作品。ラストは恐ろしいけども、コメディ要素もたくさんあって楽しめる。ネタバレあり。
―2016年公開 独 116分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:ドイツで200万部を売り上げ、世界41か国で翻訳されたティムール・ヴェルメシュの同名小説を映画化。突如現れたヒトラーの姿をした男が、モノマネ芸人としてテレビ界でスターになる。しかし彼は、タイムスリップしてきた本物のヒトラーだった。監督・脚本は、「Feuchtgebiete」のデヴィッド・ヴェンド。出演は、「グリード」のオリヴァー・マスッチ。(KINENOTE)
あらすじ:ヒトラーの姿をした男(オリヴァー・マスッチ)が突如街に現れる。リストラされたテレビマンに発掘された男は、復帰の足掛かりにテレビに出演させられる。男は長い沈黙の後、とんでもない演説を繰り出し、視聴者の度肝を抜く。自信に満ちた演説はかつてのヒトラーを模した完成度の高い芸と見做され、過激な毒演はユーモラスでありながら真理をついていると評判を呼び、男は一躍人気者に。しかし、彼はタイムスリップしてきた本物のヒトラーだった。そして天才扇動者である彼にとって、現代のネット社会は願ってもない環境だった……。(KINENOTE)
監督:デヴィッド・ヴェンド
出演:オリヴァー・マスッチ/フランツィシカ・ウルフ/カッチャ・リーマン/ファビアン・ブッシュ
ネタバレ感想
現代に復活したヒトラーが、ドキュメンタリー番組に出演することに。視聴者は彼を優れたモノマネ芸人として解釈し、その言動に魅力を感じ始めるのだが――というのが適当なあらすじ。
現代に蘇ったヒトラーが第二次世界大戦時の目線でもって現代社会に生きるため、時代間のギャップに戸惑ったり驚いたり感心したりするシーンがあって、そこにユーモアを感じられる内容になっている。
ということで序盤から終盤まで、内容的には移民問題に揺れるドイツの現状が描かれながらも、コメディ的に笑いながら観られる作品であった。
ところが、ラスト近く、主人公の番組制作者がヒトラーが本物であることを知るにあたり、彼を亡き者にしなくてはならないと奔走し始めてから、少し物語のトーンが変わる。つまり、ユーモアのある描写がなくなる。
最終的に主人公はヒトラーを抹殺するのだが、それは自身が撮影をしていた作品内のお話であり、本人は精神病者扱いされて病院送りになる。そしてヒトラーは、外国人排斥の機運が高まるドイツの現状をみて、まさに自分の時代がやってきたことを確信し、ほくそ笑んでいるシーンで物語は終わる。
移民問題はヨーロッパ各国の問題のようなので、要するにこの物語はヒトラーを現在に復活させることで、現代のヨーロッパが全体主義的社会になりつつあることを風刺的に描いた作品なのだと思われた。コメディ的描写はなかなか笑えるし、そのうえで勉強にもなる、なかなかのおすすめ作品です。
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