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映画『リベリオン』単なる風刺のきいたSFアクションではない

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リベリオン (2002)

解説:第3次世界大戦後、生き残った指導者たちは戦争勃発の要因となる人間のあらゆる感情を抑止させるべく、精神に作用する薬プロジウムを開発。これを国民に毎日投薬することを義務づけ、徹底した管理国家体制を敷いた。反乱者は、クラリック(聖職者)の称号を持つプレストンを中心とした警察に厳しく処罰される。銃を用いた武道ガン=カタの達人でもあるプレストンは、冷徹に任務を遂行する非情の殺人マシンだった。だがある日、誤ってプロジウムの瓶を割ってしまった彼は、仕方なく薬を投与しないまま仕事を続けてしまう…。(all cinema ONLINE)

監督:カート・ウィマー
主演:クリスチャン・ベール

ネタバレあり! この記事は2005年に書かれた内容を修正しました。

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管理社会を風刺している

管理社会を風刺、そしてその恐怖を描いた傑作の一つです。単なるアクション作品としても面白い。オリジナルの格闘術ガン=カタがいいですね。そして、考えれば考えるほど、広がりが出てくる作品と思います。

物語は21世紀の第3次大戦後、という設定です。人類は戦争をなくすため、人間の感情を抑制する薬を開発する。なぜそんな薬を使うのかって言いますと、「人間が人間同士で争いを起こすのは、怒りや憎しみの感情があるからだ」ってなわけです。「だから、そうした感情を薬で抑え込めば、みんな楽しく、わきあいあい、人類みな兄弟的な人生を歩めるに違いない!」そう思ったらしい。感情を抑制するってことは楽しいって感情も抑制されるわけですがね。

とにかく、そう思った人たち、管理し始めます。人々の感情を管理します。管理者たちが政府だと思ってくれてよいです。で、その政府、「感情禁止」という法を施行するんですな。それにより、例えば人々の感情に強く働きかけるような作品が抹殺され、創作も禁止されます。したがってその世界では、芸術的なものは一切創造されなくなるし、享受もできなくなる。

だから街が酷く無機質で、色彩に乏しい灰色の世界です。あと、動物いません。いるとしても大戦によってできた廃墟、復興されていない廃墟にしか存在しないんですな。しかも、それらの動物も駆除、見つけたら駆除するのです。

犬、犬は可愛いですな。しかし、可愛いと感じること、それは感情違反です。怖いですね。もし自分が犬を可愛がっているところを警察に見つかれば、「感情違反である!」と言うことでお縄を頂戴です。嫌な世の中ですね。

銃撃と格闘技を合わせた殺人術

で、やっかいなのがこの政府、クラリックという戦闘者達を組織していることです。こいつらはガン=カタと呼ばれる格闘術、銃を駆使した殺人術を身につけています。冒頭でも触れたとおり、ガン=カタ、すごいです。強いです。アサルトライフルを持った人間十数人に囲まれても、一発の銃弾も受けずにハンドガンだけで相手を殲滅できるという格闘術です。

無敵のガン=カタ

ガン=カタを習得すれば、どこで、どのタイミングでどの角度に銃口を向けて引き金を引くと、敵を一発必中で葬れるのかということが、わかるんです。これはすごい。そして強いです。この映画の魅力の一つは、このガン=カタのアクションにありますな。

というわけで、主人公、実はこのクラリックと呼ばれる、法の番人みたいな人なんですね。で、彼は感情違反者である政府に対抗する地下組織の人間を抹殺しつつ、彼らが隠し持っている本、音楽、など芸術作品を回収しては、次々と燃やしていくわけです。

でも、薬止めました

ところがあることをきっかけに、彼は感情を抑える薬を常用することを放棄します。これをすると作品の社会では犯罪者になっちゃうんですが、薬を常用しているフリをしながら地下組織と結託し、感情抑制を強いてくる政府を転覆してやろうと目論むわけ。

感情は抑えているだけ

この作品は『華氏451度』という、レイ・ブラッドベリの小説がもとになっていますよね。にしても、感情を刺激するものは全て廃棄されるってな恐ろしいことですな。映画も本も漫画もゲームも絵も音楽も全部だめ。

主人公が地下組織の隠し部屋を見つけて、そこでベートーベンのレコード、蓄音機で流します。彼、顔を覆って涙流しますな。薬で感情を抑えるということは要するに、無理やり抑えつけているんだってことがわかるシーンです。やっぱり感情あってこそ、人間てことでしょう。ところがこの感情は時に暴走し、まあ、いわゆる悪を生む温床ともなるわけです。複雑。

アメリカン・サイコもいいよ!(余談)

クリスチャン・ベールってこういう感情抑えた演技が上手ですねぇ。同じ頃に主演した『アメリンカン・サイコ』もマジなサイコ野郎をリアルに演じていました。同作の主人公はエリート会社員でしたけど、この、『リベリオン』で感情を取り戻す主人公より、あっちのエリートのほうがよっぽど感情がない人間に見えました。というのは余談だけど、『アメリカン・サイコ』もとてもいい映画です。俺は大好き。さすがクリスチャン・ベールという感じです。

映画『アメリカン・サイコ』ネタバレ感想 殺人鬼ベイトマンの苦悩
優雅な生活をしているエリート会社員が実は、社会に適合できない殺人鬼という設定もいいし、シリアスな内容を描きつつ笑えるシーンもあり、エリート会社員やセレブの生活様式を風刺および、からっている痛快作品。 ―2001年公開 米 102分―

人々に感情がない世界はよい世界か?

ということで、よりよい社会をつくるために、感情は抑えたほうがいいのか否か、どちらでしょうな。感情を抑えた世界では家族すら、家族ではないです。すでに家族の機能は解体されたようなものです。それは果たして善いのか、悪いのか、好いのか、好くないのか、難しいですな。

争いがないといっても、そこは支配者が独裁的に政治を行う、全体主義的な社会です。そして、文化的な創作物のない世界なんで、楽しみも少ないですな。というか、感情を抑えるってことは、恋愛もできないんだろうから、どうやって子どもつくったりするんだろう? ランダムに人を選んで結婚させる制度でもあるんですかねぇ。

1つの理想社会であることは確かと思います

ただ、以前も『パラサイト』で紹介したように、こんな世界でもある意味、理想社会であろうということは、細部が間違っているような気もしながら、事実ですな。感情をなくす、というのは人間が人間であることをやめるのと似たようなもんとも言える。でも、感情がない人間たちは、争わないわけだから、争いはおきません。この映画で争っているのは、感情がない人(抑えられている人)と、感情のある人たち。つまり極端に言えば、ゾンビと人間が戦ってるのと変わりはないわけです。怖いですな。

こういう作品を見て思うのは、今の社会も悪くない。むしろよいってことですね。いろいろのことを自分で選べるわけだから。つまり、わざわざ感情を抑える薬を常用しなくても、感情を抑えるか抑えないか、自分の責任において多くを決められるから。てことは、何事もバランスが大事だと考えてみると、一人ひとりが感情ってものを自分の力でコントロールできていれば、そんなに争いは起こらないとも言えるわけだ。みんなが半分ゾンビ、半分人間でいられる世界が、最も理想的なのかもしれない。

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