パラサイト(1998)
解説:「デスペラード」「フロム・ダスク・ティル・ドーン」のロバート・ロドリゲスと、「スクリーム」の脚本家ケヴィン・ウィリアムソンが組んだSFスリラー。気弱な少年ケイシーは、ある日、グラウンドで奇妙な生き物を見つける。その生き物を水槽に入れた時、その生き物は変形し、攻撃的な本性を露にした。やがて、ケイシーはやたらに水を欲しがる辺りの人達のおかしな行動に気づく。「あの生物が人間に寄生しているかもしれない」と感じたケイシーは、仲間と共に学園の調査を開始。そこで、取り付かれた先生が保険医を襲う場面に遭遇する……。 (all cinema ONLINE)
監督:ロバート・ロドリゲス
出演:イライジャ・ウッド/ジョシュ・ハートネット/ジョーダナ・ブリュースター/クレア・デュヴァル/ファムケ・ヤンセン/サルマ・ハエック
ネタバレ感想
SFホラー的青春映画
文字通り何かにパラサイトされる人間たちの物語。SFホラー的な青春映画です。宇宙からやってきた寄生生物がある高校にたどりつき、まずは体育教師に寄生します。そして、職員室の教員たちを中心に、人間の身体を乗っ取っていく。最終的には生徒たちが協力しあって寄生生物の親玉を退治、ハッピーエンド。
ユートピアとはどんな世界か
人体に寄生するエイリアンの話では、カイル・マクラクラン主演の『ヒドゥン』という傑作ありますし、人間になりすましている異星人の話としては『ゼイリブ』がありましたね。これも傑作でした。それらと比較しても、別のテーマで深いところをついている面白い作品です。
というのも、人間にとってのユートピアとはどんな世界なのかと示唆している描写があって、主人公はそれを否定して現実に生きようとする映画だから。要するにそれは、今ある世の中と向き合って「戦え、肯定しろ」っていうメッセージにも感じるんですなあ。そこがこの作品のよいところと思います。
SF小説好きな少女と主人公が、虚構について語るシーンあります。彼らは自分たちの身の回りで起こりつつある奇妙な出来事が信じられない。虚構内体験としての小説は信じても、現実が虚構めいていると信じられないのです。しかし、それは現に起こっている。
周りの人たちが昨日までとは違う人になっていってしまう。果たしてそれは、その人が変わったのか、寄生されたから変わったのか、見た目にはまったくわかりません。さらに物語は進み、次々と街の人たちが寄生された集団になり、主人公たちが取り残された少数者たちになっていくと、そこで価値観は逆転されます。
寄生されることを拒む主人公たちは“人間らしさ”に固執しますが、寄生済みの人たちは違う価値観、“寄生された宿主”としての価値観を持ち出すのです。
で、その“宿主としての価値観”が実現しようとする世界って実は、人間の理想世界でもあるんですね。人間よりもさらに進歩した、新しい生命の集団とも言える。例えば、人を憎むこともなく、争いも起きないから、殺し合いもない世界。人間がよく言う理想世界というのは、実はそういうものですよね。要するに、それを生み出すには、皮肉なことに、人間が“人間らしさ”を捨てなくてはならないということなのでありますな。
この話ってどっかで見たことあるなぁと思ったら、漫画家の藤子・F・不二雄さんの『流血鬼』というSF短編と似てますよね(ちなみに、F氏の短編自体も、リチャード・マシスンの小説にインスパイアされている)。話の根底に描かれていることは、本作『パラサイト』にも通低していると感じました。
ファムケ・ヤンセンがよかったねぇ
それにしても、今見るとかなり豪華なキャストだなあ。女性教員にサルマ・ハエックとファムケ・ヤンセンだもん。ファムケ・ヤンセンのバート先生は、眼鏡の地味な時のほうが素敵であったなあ。元が美人だからなあ。ほぼ同時期に出演していた『バッド・デイズ』や『ザ・グリード』でも、すごくよかったよね。
※この記事は2005年に書かれたものです。
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