ヒドゥン(1988)
映画評論家の故・淀川長治さんが長く解説を務めていた名番組、「日曜洋画劇場」で放映されていたのを鑑賞したことがある、アラフォー世代の人も多いはず。つくりはB級ぽいけども中身はA級、SFアクションの傑作である。見どころを紹介した後、ネタバレあり。
―1988年公開 米 96分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:凶悪なエイリアンを追う謎のFBl捜査官とロサンゼルス市警の刑事の姿を描く。製作総指揮はスティーブン・ダイナー、リー・ミュール、デニス・ハリス、ジェフリー・クライン、製作はロバート・シェイ、マイケル・メルツァー、ジェラルド・T・オルソン、監督は「エルム街の悪夢2 フレディの復讐」のジャック・ショルダー、脚本はボブ・ハント、撮影はジャック・ヘイトキン、音楽はマイケル・コンヴァーティノが担当。出演は「フラッシュダンス」のマイケル・ヌーリー、「ブルー・ベルベット」のカイル・マクラクランほか。(KINENOTE)
あらすじ:ロサンゼルスで、今までごく普通の人間と思われていたデヴリーズ(クリス・マルキー)という男が、突然凶悪犯に変貌し、数々の凄絶な事件を引き起こしていた。ロサンゼルス市警の刑事トム・ベック(マイケル・ヌーリー)は、激しいカー・チェイスの末に彼を撃ち倒し、ひとまずこの事件は解決したかに見えた時、ベックの前にFBI捜査官でロイド・ギャラガー(カイル・マクラクラン)と名乗る男が姿を現わした。その頃、病院に収容されたデヴリーズの口から謎の生き物が吐き出され、同室のミラー(ウィリアム・ボイエット)の体に乗り移り、今度は身動き1つできない重態患者であった彼が犯罪を繰り返してゆく。この凶悪事件の原因こそが、この人間の口から口へと乗り移りその体を乗っ取るエイリアンの仕業だったのだ。以下略(KINENOTE)
監督:ジャック・ショルダー
出演:マイケル・ヌーリー/カイル・マクラクラン
見どころ紹介
アクション、刑事もの、異星人侵略もの、の映画が好きな人には、ぜひ鑑賞をオススメしたい面白映画です。序盤からラストまで休む間もなくストーリーが展開するテンポのよさ。ところどころにコメディチックなユーモアもあり、最後まで楽しめます。
バディムービーとして面白い
見どころとしてはまず、マイケル・ヌーリー演じるベック刑事と、カイル・マクラクラン演じるFBI捜査官のギャラガーの関係である。上司からギャラガーとの共同捜査を命令されたベックは、最初はギャラガーを煙たがって軽く扱うのだが、物語が進むにつれ、事件の謎を握るギャラガーの話に耳を傾けざるを得なくなり、少しずつ彼を信頼をするようになっていく。そんなバディムービー的な面白さがあるのだ。
余談だけど、エイリアンとコンビを組む刑事のバディ・ムービーと言えば、本作とほぼ同じ頃に公開された作品、ジェームズ・カーン主演の『エイリアン・ネイション』もかなり面白いのでオススメ。
悪役のキャラクターがよい
もう1つは悪役のキャラクター。少しも悪びれずに悪事を働き、盗む車はフェラーリやポルシェなどのスポーツカーのみで、音楽はロックを好む。作品が始まってからラストを迎えるまで、ともかく邪魔する奴らは全員殺す。主に銃殺が多いのだが、他にも武器を使用した撲殺、セックス中の腹上死? 的な殺人など、やりたい放題である。
その行動は一見、目前の欲望を満たすための行き当たりばったりのものと思わせといて、実は将来的な目標も見据えて活動している野心家な一面も(笑)。この凶悪かつユーモラス(どこがユーモラスかは、鑑賞して確かめてみてください)な悪役がいるからこそ、この物語は面白いのである。
下記からネタバレします。
異星人同士の戦いでもある
実はこの脇役と、ギャラガーは異星人である。特に前者はナメクジみたいな体の超気持ち悪い寄生生物。こいつが人間の口から体内に侵入して宿主の精神をのっとり(多分)、肉体も操っちゃうのだ。つまり、こいつを倒すためには、宿主の体を破壊するだけでなく、破壊された肉体から次の宿主に移るまでの間に外に出ている、ナメクジを殺さなくてはならないのである。しかもその本体=ナメクジは、ギャラガーの持っている異星人が開発した光線銃でしか、殺せないらしい。
敵が異星から来た寄生生物で、それを追う善玉も同種の異星人である――というところが本作の一番の肝であり、そこに地球人のベック刑事が絡むことで物語が展開していくのが、一番の面白ポイントである。この設定があるから物語に奥行きが出るし、どうやってアイツを倒すのか、結末まで目が離せなくなるのだ。
ただし、謎なポイントもいくつか
しかしまぁ、このナメクジ寄生生物は何なんだろうね。ギャラガーも同種の生き物らしいんだが、こんな生き物がどうやって異星からやってきたんだろうか。ギャラガーの持ってた異星人の銃、あれって、手がないナメクジには使えないと思うんだが(笑)。もともと、宿主に寄生して生きるのが彼らの生き方なんだろうなぁ。と、独自の解釈をして擁護したくなるのはもちろん、本作が面白いからである。
てなことで、このナメクジは善良に暮らしている人間に寄生し、そいつの体を使って散々悪さをして体をぼろぼろに酷使したら、次の宿主に寄生することを繰り返すのである。だから、序盤から中盤にかけて、ベックは次々と起こる強盗殺人の解決の糸口がつかめないで困るのであり、何かを知っているそぶりのギャラガーを不審に思いつつ、探りを入れることになるのだ。
で、ギャラガーのほうだが、彼の姿形はナメクジなんだろうか。物語の描写だけだと、そうではないらしい。彼は何か、黄色い霧状? の生命体みたい。それがわかるのは物語ラスト。殉職したベックの体内に寄生して、地球人として暮らすことを決めるシーンだ。これは観ればわかるけども、よく考えると変だ。何でナメクジと同種の生き物なのに、こいつは霧状なんだ?
まぁでも、いちおう善側の彼が、ベックの家族を想って彼に成りすますことを決めたよいシーンなので、ナメクジが寄生するグロ映像にするのは好ましくないと作り手が考えたのだろう――ということにしておく。なぜ擁護するのかは、前述の通りです(笑)。
興味がある方は、ぜひ鑑賞してみてください。ちなみに超スーパーチョイ役で、ダニー・トレホも出演してることに、今回の鑑賞で初めて気付いた(笑)。
実は続編がある。できれば、なきものにしたい(笑)
ちなみに、俺は2000年代に出たこの作品のDVDを購入していて今回もそれで鑑賞したのだが、購入当時は初回限定版ということで、監督のオーディオコメンタリーが入っているだけでなく、続編の『ヒドゥン2』もパックになっていた。
この続編は話がきちんとつながってはいるものの、本当に酷いので鑑賞する必要はないです。あまりにも酷くて悲しくなるので、2回くらいしか観ていなくて、しかも内容はほとんど覚えていない。もう、観たくない(笑)。
こんなんパックにして売るくらいなら、日曜洋画劇場放映時の吹き替え版を収録してほしかったなぁ。
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