タイム・クライムス
パッケージによると、デビッド・クローネンバーグによるハリウッド版リメイクが決定しているらしい。しかし、後追い情報がないところを見ると頓挫したのか、まだまだ先になるのか――。クローネンバーグの映画はおもしろいけど、リメイクなんてなくてもこの作品だけ観ておけば充分です。いろいろな意味で楽しめます。ネタバレあり。
―2007年製作 未公開 西 88分―
解説・あらすじ
解説:1時間前の世界に舞い戻ってしまった男の顛末を描くSFサスペンス。森の中の一軒家に引っ越してきたエクトルは、ある日気を失っている裸の少女を見つける。その時、突如現れた謎の男に襲われた彼はある施設に辿り着くが、そこは“1時間前の世界”で…。(「キネマ旬報社」データベースより)
あらすじ:ひょんなことから、1時間前の世界へ舞い戻ってしまった男・エクトル。人類初のタイムトラベラーとなった現在の“エクトル2”が生き残るためには、タイムトラベル前の“エクトル1”との干渉を避けながら、その行動を正しく補完しなければならない。だがその一連の行動が、稀代の殺人事件を巻き起こすことに…。 (「Oricon」データベースより)
スタッフ・キャスト
監督:イグナシオ・ビガロンド
出演:イグナシオ・ビガロンド/カラ・エレハルデ
ダメおやじの成長物語
一言で言うと、ダメな主人公、エクトルおじさんの成長物語です(笑)。奥さんを愛しているようだが、引っ越し先の庭から見える林の中にいた若い女性が目に入り、双眼鏡で彼女を盗み見る。すると彼女の行動が不可解。なぜか林の中で服を脱ぎ出しちゃう。それを双眼鏡で眺めながら勃起しちゃっているような奴、それがエクトルおじさんです(マジでズボン膨らんでるっぽいシーンあります)。
確かにそれはまぁ、見たくなる気持ちは分かる。で、エクトルおじさん。気になりすぎて、奥さんが出かけたのをいいことに、林のほうに女性を探しに行くのだ。林の中に入り見つけた彼女はなんと、全裸で岩にもたれて眠っている! これはエロいです。なんかすごくエロい。
おじさん堪らず近付いちゃう。すると背後からいきなり腕を刃物で刺された! 「いてぇ!」ってなことで、エクトルおじさんは痛がり転がりながら、背後から襲ってきた奴から逃げ出すのである。
ジタバタするエクトルおじさん
なんとか逃げ切ったかと背後を見ると、そこには包帯で顔がグルグル巻きになっている男が!!
この、包帯男の振り返りシーンは爆笑もんです。
とまぁ、下心が働いて庭先の寝椅子から 立ち/勃ち あがったことで、エクトルおじさんはへんてこな出来事に巻き込まれることに――。
というのが序盤の話。タイムリープものかと思わせてのこの超展開。ここだけでも面白いです。先の展開に、本当にワクワクしてきます。ただしエクトルおじさんはまだ単なるエロ親父、襲われてからのうろたえぶり。かなりウザいです。でも笑える。
ようやくタイムリープものに
で、包帯男から逃げ続けたエクトルおじさん。なんかの施設に不法侵入しちゃうのだ。ここがなんと、タイムマシンを開発研究している施設。逃げ込んだある部屋で見つけた無線機を手に取り必死に交信を図るエクトルおじさん。
すると、無線機のむこうから返信が! 泣きだしそうなほどの形相で助けを求めると、無線の相手はなかなか物分かりがいい。包帯男が監視モニターに映っているから、鉢合わせにならないルートで自分のところにくるといい。と指示を出してくれる。これは天の助けと自慢の鈍足で男のもとに駆け付けるのであった――。
ということで、ここからようやくタイムリープ系の話に突入。いろいろあって、エクトルおじさんは1時間前の過去に戻っちゃうのである。そこで目にしたのは、林の女を絶賛“出歯亀”中の自分であった!
その後どうなる!?
状況が全く飲み込めないエクトルおじさん。施設で自分を助けてくれた男(の1時間前の彼)の説明を聞いても、全然何を言っているのか理解できない。そんで、あそこで出歯亀している自分を説得するとか言い始める。何を説得するつもりなのか自分でもよくわかってないようだが、とにかく説得をしたがる。
施設の男は冷静に、あいつはタイムトラベル前のエクトル1だ。あんたはタイムトラベルをしたエクトル2だ。というようなことを言ってエクトル2(つまりエクトルおじさん)を説得するが、エクトルおじさんはチンプンカンプン。男の指示を聞いても上の空。自分でなんとかせねばと暴走を始めるのだ。
エクトルのエクトルによるエクトルのための物語
ということで、この説明の仕方めちゃ難しいし疲れるので止めます(笑)。この後エクトルおじさんはいろいろあって、包帯男が自分であったことを知ります。んで、エクトル1に向かってあの双眼鏡ポーズを取るなど、糞バカシーンを繰り広げる(笑)。
そして最終的には、あの裸の女性を犠牲にして奥さんを自分の魔の手(つまり包帯男になったエクトル1)から守りきるのであった(笑)。
というダメおやじが自分の巻いた種に翻弄されつつも、若い女ではなく、覚悟を決めて自分の愛する奥さんを守り切り、真の男になる話、それが本作品なのである。
あの若い女性、性格よさそうだったのにエクトルおじさんの犠牲になってしまってすごい気の毒。
タイムリープものを取り上げることで自分の私的な疑問を紹介したり考察しようと思ってたのに、なんかそういう気にはなれないくらい、エクトルおじさんが面白い作品でした。オススメです。
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雑談の中でも、かなり私的な話題に触れてます。映画の内容に触れながら考えていることが多いかも
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