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映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』その怒りをライムしろ!

ストレイトアウタコンプトン
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ストレイト・アウタ・コンプトン

史実を基にした映画ってことで、ヒップホップ好きじゃなくても見て損はない! かえってヒップホップ好きになれるかも。個人的にはこの作品を見ると、当時のラップミュージックを聴きたくなる。ネタバレはほんの少し。 ―2015年公開 アメリカ 147分―

解説:アメリカのヒップホップ・グループ、N.W.A.の真実を描く伝記映画。監督は、「交渉人」のF・ゲイリー・グレイ。アイス・キューブ役を息子オシェア・ジャクソン・Jrが演じるほか、「サイドウェイ」のポール・ジアマッティが出演。製作はN.W.A.のメンバー、ドクター・ドレーとアイス・キューブ。(KINENOTE)

あらすじ:1986年、アメリカ、コンプトン。全米屈指の危険な街に、暴力的なほどにストレートなリリックをハードコアなビートに乗せ、日常に感じるフラストレーションと怒りを吐き出す5人の若者たちがいた。彼らはリリック、プライド、虚勢、そして才能という武器で、自分たちを抑圧する権力者たちに立ち向かい、世界で最も危険なグループと言われたN.W.A.を結成する。理不尽な社会への反骨精神を等身大で表現した彼らの叫びは社会現象にまで発展し、今なお多くのアーティストに影響を与えている。(KINENOTE)

監督:F・ゲイリー・グレイ
製作:マット・アルバレス/スコット・バーンスタイン/Dr. ドレー/F・ゲイリー・グレイ/アイス・キューブ
出演:オシェア・ジャクソン・Jr/オルディス・ホッジ/ポール・ジアマッティ/コーリー・ホーキンス/ジェイソン・ミッチェル/ニール・ブランウン・Jr

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N.W.Aのかっこよさがわかる

ヒップホップを題材にした映画って、『8マイル』『ハッスル&フロウ』、邦画だと『サイタマノラッパー』シリーズとかいろいろある。それらと比較してこの作品がどうかというと、イイです。もちろん上に挙げた作品のどれも面白いし、それぞれ描いているテーマは違うんだけども、なんたって、N.W.Aは実在したグループなわけだし、史実を基にしているところが、この作品の良さを際立たせている。中盤のライブシーンで「ファック・ザ・ポリス」をやっちゃう場面までなんかは、本当にカッコイイです。

あんまり詳しくないんだけど、ヒップホップは20代の頃に日本語ラップも含めてそこそこ聴いていたので、この作品を劇場でも家でも非常に楽しく見れた。知っている曲もけっこう流れてたし。Dr. ドレーやアイス・キューブも製作に関わっているということで、多少の美化はあるんだろうけども、それなりに真実に近い話が描かれてるんだと思う。

金の切れ目が縁の切れ目

個人的にギャングスタラップと言えば、この作品にも出てくる2パックやスヌープ・ドッグなんかを思い出す。N.W.Aはそうしたギャングスタラップというジャンルを定着させたグループのようだ。

こういうグループって大成功を収めた後に、金の支払いを巡って確執が起こるのってある意味でお決まりのパターンではないか。Dr. ドレーやアイス・キューブはマネージャーも含めその辺に不満があって脱退するんだけども、彼らは独力でもやっていける力があるから遅かれ早かれいずれは脱退するのは目に見えていたとも言える。

結果、Dr. ドレーはシュグ・ナイトと立ち上げたデス・ロウ・レコーズでスヌープや2パックをセルアウトして大成功を収める。ただ、シュグ・ナイトのせいで結局そこも出て行かざるを得ない。ドレーは純粋に作品をつくりたいだけなんだが、セルアウトできる能力がありすぎちゃって、周りが彼を利用したがるし、しかもその周りがろくな人間でないという。主にシュグ・ナイトのことを言いたいんだが(笑)。

いっぽうのアイス・キューブは移籍先でもいろいろありはするが、ソロとして成功。映画にも出始めちゃうわけだ。

この脱退した2人は古巣をディスるラップなんかもしてて、ビーフ(揉め事)っぽくなっていく。これもまぁ、ある意味ではプロレスみたいなもんでもあるから、どっちに立っても商売になっちゃうところは、ギャングスタラップの面白いところではある。

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イージーEは真っ直ぐでピュアである

てなことで、イージーEなんだけども、彼はこの作品では一番、ピュアな人物として描かれているように思える。金ももちろん大事なんだけど、ラッパーとしてのスタイルを大事にするというか。

それを思わせるのは、イージーEがマネージャーと対立グループについて話をしている、あるシーン。マネージャーは弁護士立てて裁判沙汰にしようとするものの、イージーEは、そうするつもりはない、という。ストリートの流儀では、売られた喧嘩は自ら買うものなんだと。

その手段が暴力だったかラップだったかは忘れたけど「それがギャングスタのスタイルなんだ」てな発言をするのである。そう、これがスタイルなのだ。どんなにバカげていても、そうしなくちゃおかしいのが、ギャングスタなのだ。イージーEにとっては。

これ、Dr. ドレーやアイス・キューブだったらそう言わないと思う。なぜなら彼らは、黒人としての差別を受けてはいたももの、中流な暮らしをして育った人たちだから、もう少し違う考え方をすると思う。対してイージーEはストリートギャング出身。そういう意味で、当たり前だけど、それぞれ考え方やスタイルが違うんだよね。そんなわけだから、袂を分かつのは必然てな感じも思わせる内容であった。このシーンを見ると、イージーEは真っ直ぐでピュアな奴だったんだなぁって感じちゃう。

暴力だけが怒りを表す手段ではない

この映画で印象的なのはもう1つ、ロス暴動のシーンで、いつもは対立しているカラーギャング同士がお互いのカラーを象徴したバンダナを結び付けて警官たちと向き合う場面。N.W.Aが叫んだ怒りの声は、ギャングの対立も後回しにさせる力があったのである。

日々の抑圧を他人への暴力や誹謗中傷に使うのではなく、それを別の形で昇華するのが表現活動の素晴らしさ。しかもその表現活動により生まれた作品に触れた、他人の行動をも変えていくきっかけになる。何でもセルアウトすればいいってもんじゃない。人の心の奥に届いて、その人たちの何かを変える力を持った作品が、いろんな分野でたくさん創られてほしいもんですね。

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