オール・アイズ・オン・ミー
伝説のラッパー2PACの生涯を描いた伝記映画。立川シネマの極音上映で鑑賞したので、クラブでのライブシーンなんかは、かなりの迫力。それを観れただけで満足できた。ただ、25歳という若さで凶弾に倒れた人物とはいえ、ずいぶん濃い人生を歩んだ人だから、2時間ちょいの尺では描き切れてないと思わせる部分もある。ネタバレあり。
―2017年公開 米 137分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:25歳の若さで凶弾に倒れたラッパー・2PACの知られざる真実に迫る伝記ドラマ。ニューヨークのスラムで生まれ育った2PACは、1991年にソロデビューを果たす。ラッパーとして着々と名を上げるなか、スタジオで強盗に襲われた彼は、ある疑念を抱く。監督は、「S.W.A.T. 闇の標的」のベニー・ブーム。(KINENOTE)
あらすじ:2PAC(ディミートリアス・シップ・ジュニア)はニューヨークのスラムで生まれ育ち、ブラック・パンサー党員の母に連れられ住まいを転々としていたため、あまり周りに馴染めない辛い幼少期を送る。役者に憧れた彼は、12歳でハーレムの劇団に入団し舞台に立つ。1986年、一家でボルチモアに移り住んだ2PACはボルチモア芸術学校に入学し、そのころからラップに没頭して数々の詩を書き始める。17歳でカリフォルニアに移り住むころには母親がドラック中毒となっており、家庭はひどい有様と化していた。そんななかラッパーになる夢を追い続けた彼は、1991年、アルバム『2Pacalypse Now』でソロデビューする。2PACは着々と名を上げていくが、レコーディングに訪れていたスタジオで強盗に遭い、銃弾5発を受ける。一命を取り留めるが、この事件を仕組んだのは同じスタジオにいたショーン“パフィ”コムズとノートリアスB.I.G.(ジャマール・ウーラード)だと思い込むようになる。西海岸のヒップホップ・レーベルDeath Rowレコードに所属する2PACは、東海岸のBad Boyレコードのショーン“パフィ”コムズやノートリアスB.I.G.をことあるごとに非難し、ヒップホップ界史上最悪の東西抗争が勃発する。1996年9月7日、ラスベガスでついに2PACは銃撃され、その6日後の9月13日に25歳の若さでこの世を去る。 (KINENOTE)
監督:ベニー・ブーム
出演:ディミートリアス・シップ・ジュニア/ジャマール・ウーラード/ダナイ・グリラ/カット・グレアム/ドミニク・サンタナ/ハロルド・ハウス・ムーア
ネタバレ感想
曲にノリノリになれる!
冒頭にも書いたように、自分が2PACの曲をある程度は知っているからってのもあるけど、ライブシーンが楽しい映画であった。近くで鑑賞していたB-boy風な格好をした若い兄ちゃんは、「California Love」のシーンなど、曲のシーンのたびにノリノリになってたが、極音上映のよさってのはそういうところにありますな。
全体的には、何かボンヤリ
ただ、全編通した感想としては、けっきょく2PACの何に焦点をあてたかったのかがボンヤリしているように感じた。別に退屈とは思わないんだけども、2PACの友人でありながら、後にビーフ合戦を繰り広げる相手となるラッパー、Notorious B.I.G(ビギー)との関わりも、あっさりとしか描かれてないし、2PACが表現者として目指していた部分についても、それほど深く触れられているようには感じなかった。
前者については2人がどちらも死んでしまったし、真相が明らかになっていないので、中立的視点に立たざるを得ないのはいいとして、それ以外の部分、例えば後者のことなども、単なる事実としてなぞっただけのように感じてしまって、何かの物足りなさを感じたのである。
つまり、きちんと取材をして製作された作品なんだろうなぁと思うものの、対象の生涯を淡々と紹介して終わってしまっているような感もあるのだ。そこが残念ポイント。
これはこれで、2PACなんだろう
とは言うものの、これも冒頭で触れたように、25年という短い生涯にも関わらず、出自や育った環境、彼の取り巻きや関わりがあった人たちなど描くべきことは多い人物なので、なかなか焦点を絞りにくい部分もあったんだろうとは思う。
知性が高く、アーティストとしての繊細さもありながら、直情径行で後先考えずに行動しちゃうところなんかは、天才的でもあるし、ゲットーで生き続けてきた人間の負の部分を感じさせもして、そういう意味では2PACという人間の姿をきちんと浮かび上がらせることに成功している作品なのかもしれない。
それにしても、シュグ・ナイトは本作においても糞野郎ぶりを存分に発揮してましたな(笑)。個人的にはこの人の伝記が観てみたい。きっと面白いと思うんだが。
余談ついでに、ビギーを演じていたのはジャマール・ウーラードという人。実はこの人、別の映画『Notorious B.I.G』でビギーを演じていた人と同一人物。なかなか面白い作品なので、そちらもおすすめです。
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