エスコバル 楽園の掟
コロンビアの麻薬王エスコバルの姪? のマリアに恋して婚約するに至ったカナダ人青年が、エスコバルファミリーの一員となる。そして、表向きには慈善家として活動していたエスコバルの真の顔を知ることとなり、彼の組織から逃れてマリアとカナダで生活しようと目論むことで悲劇を迎えるという内容。ネタバレあり
―2016年公開 仏・西・伯・巴 119分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルの実話を基にした犯罪アクション。麻薬王の姪と恋に落ちたカナダ人青年が、組織の闇に巻き込まれる。「トラフィック」でアカデミー助演男優賞を受賞したベニチオ・デル・トロがエスコバルを演じる。「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」出演のアンドレア・ディ・ステファノによる初監督作品。(KINENOTE)
あらすじ:サーファーのカナダ人青年ニック(ジョシュ・ハッチャーソン)は、兄の住むコロンビアを訪れる。青い海と白い砂浜が広がり、まるで理想郷のような場所で、ニックは美しいコロンビア人女性マリア(クラウディア・トレイザック)と出会い、激しい恋に落ちる。マリアの敬愛する叔父パブロ・エスコバル(ベニチオ・デル・トロ)は国会議員を務め、民衆からの支持も厚い富豪であるが、コロンビア最大の麻薬カルテルのボスという裏の顔を持っていた。我が子のようにかわいがる姪が連れて来た恋人を、暖かくファミリーに迎え入れるエスコバル。やがて、ニックはその楽園のようなエスコバルの“王国”の恐ろしさに気付いていくが、簡単に抜け出すことはできない。脱出不可能な巨大な悪のスパイラルに巻き込まれていくニックの運命は……。(KINENOTE)
監督:アンドレア・ディ・ステファノ
製作総指揮:ベニチオ・デル・トロ/ジョシュ・ハッチャーソン
出演:ベニチオ・デル・トロ/ジョシュ・ハッチャーソン
感想
この話がどんだけ実在した麻薬王のエスコバルに近い話を描いているのかはよくわからん。どちらかというと、彼の姪の恋人であるカナダ人青年の視点で描かれ、彼に感情移入するように作品がつくられているので、鑑賞者は彼の行く末を追うことでハラハラしながら劇終を迎えることになる。
で、そういうストーリーラインを追って楽しむ映画としては、いいのではないかと思う。俺は楽しく観られた。ただ、エスコバルという実在した人物の人となりをさらに深く知りたいと思うのであれば、この作品ではかなりのもの足りなさがある。
彼が善人なのか悪人なのかと問われれば、どちらとも言えそうだ。本作を通して個人的に興味を感じるのは、血縁者を大事にしてそのつながりに執着する割には、他人に対して猜疑心の塊になってしまう人間の心理についてだ。単なる猜疑心の塊でなく、その心のありようによって残酷なことをすることに何のためらいも持たない人間。
こうした犯罪組織のボスを描いた話では、『ゴッドファーザー』シリーズのヴィト・コルレオーネもそうだが、家族を大事に思う男が多い。ヴィトなどは「家族を大事にできない奴は男じゃない」とか言うくらいで、そのセリフ自体は格好いいんだが、そういう愛情を持つ人間が、敵対する相手にも大事な家族がいることを知りながら、敵だからという理由だけで残酷なことができるのはなぜなんだろうか(老人になってからのヴィトはそれなりに平和主義者ではあるが)。
おそらくこういう人たちにとっては、苦楽を共にして生きてはいない、知りもしない他人のことなど、人形と同じなのであろう。そして、こうした人間たちが行う、常識からかけ離れているように思える行為は、実は俺も含めた誰もが潜在的に抱えている人間の一面性なのである。
というかエスコバルは、けっきょくは愛していると言っていた姪も不幸にしているわけだから、本当の意味で家族を大事にしているかも微妙なんだけど。
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米W杯のコロンビア代表は魅力的であった
ちなみに、俺はサッカーのアメリカワールドカップに出場していた頃のコロンビア代表がすげー好きで応援していた。アメリカ大会出場をかけた南米予選では、アルゼンチンをアウェイにも関わらず5-0で破っちゃうとか、すごいチームだったのである。で、個性的な選手がたくさんいる中で、俺はMFのカルロス・バルデラマが大好きであった――と、どうでもいい話。
そうではなくて、そのコロンビア代表の中に、アンドレス・エスコバルというDFがいた。彼はグループリーグのアメリカ戦でオウンゴールをしてしまい、帰国後に射殺されてまうのである。当時、かなりニュースになった衝撃の出来事だったけども、この選手、本作のパブロ・エスコバルがオーナーだったクラブチームに在籍していたそうである。別にエスコバルの組織がエスコバル選手を(ややこしい)射殺したわけではないんだけど、この映画を観てあの魅力的だったコロンビア代表チームを思い出したのである。
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