ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ
前作よりも楽しめた。今回はベニチオ・デル・トロ=アレハンドロの描写を中心に物語が展開。ジョシュ・ブローリン=マットも相変わらずの非情ぶりだが、実は仲間を大切にする男だったことがわかる部分もよい。ネタバレあり。
―2018年公開 米 122分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:国境麻薬戦争の闇を捉えたサスペンス・アクション「ボーダーライン」の新章。メキシコからのテロリスト流入に危機感を抱くアメリカ政府から、密入国ビジネスを仕切るカルテルを混乱に陥れる命を受けたCIA捜査官マットは、暗殺者アレハンドロに協力を要請する。出演は「ボーダーライン」のベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、ジェフリー・ドノヴァン、「トランスフォーマー/最後の騎士王」のイザベラ・モナー、「オリエント急行殺人事件(2017)」のマヌエル・ガルシア=ルルフォ、「ゲット・アウト」のキャサリン・キーナー。監督は「暗黒街」のステファノ・ソッリマ。脚本を「ボーダーライン」「ウインド・リバー」のテイラー・シェリダンが務める。(KINENOTE)
あらすじ:アメリカで市民15人の命が奪われる自爆テロが発生。犯人はメキシコ経由の不法入国者と睨んだ政府は、CIA特別捜査官マット(ジョシュ・ブローリン)にある任務を命じる。それは、国境地帯で密入国ビジネスを仕切る麻薬カルテルを混乱に陥れるというものだった。マットは、カルテルに家族を殺された過去を持つ暗殺者アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)に協力を要請。麻薬王の娘イサベル(イザベラ・モナー)を誘拐し、カルテル間の内戦を誘発しようと企てる。だがその極秘作戦は、敵の奇襲やアメリカ政府の無慈悲な方針変更によって想定外の事態を引き起こす。そんななか、メキシコの地で孤立を余儀なくされたアレハンドロは、兵士としての任務か、一人の少女の運命か、究極の選択を迫られる……。(KINENOTE)
監督:ステファノ・ソッリマ
出演:ベニチオ・デル・トロ/ジョシュ・ブローリン/イザベラ・モナー
ネタバレ感想
前作はエミリー・ブラント演じる女性捜査官が終始、物語の蚊帳の外に置かれていて、そのことにより鑑賞している自分まで蚊帳の外にいるような感じがするよくわからん内容であった。
ベニチオ・デル・トロが好きなので、今作も鑑賞。冒頭に書いたように、今作は物語の軸がマットとアレハンドロにあることがはっきりしているので、前回のような戸惑いがなく鑑賞でき、けっこう楽しめた。
物語は政府の方針転換によりマットの任務が終了せざるを得なくなって以降、話の規模が縮小していく印象がある。そもそもの目的はメキシコの麻薬カルテル同士を内戦状態にすること。しかし方針転換が決定して以降は、アレハンドロが拉致したカルテルのボスの娘を保護しながら国境越えを目指すロードムービーになる。
それが物語の筋なんだから仕方がないけども、前半の国家的策略が単なる娘を守るだけの話に縮小してしまっているところが、少し期待外れではあった。しかも、娘が拉致されたのはニュースとして知れ渡っているのに、肝心の彼女の親父やカルテルの構成員たちがどのような反応をしているのか、直接的な描写がまったくないのでマットたちのチームが独り相撲しているような印象もなくはない。
もちろん、メキシコの警察に襲撃されるシーンなどは、警察組織にまでカルテルの息がかかってるからこそ起きる出来事なんだけども、実際に指示を出したカルテル側の人間が出てこないので、より彼らの不在さを感じてしまって、その辺は何か物足りなさがあった。
それでも、後半の内容はアレハンドロとマットの前作にはない人間的な部分が垣間見れる展開になっており、男くさい話として観られたので、そういう話が好きな俺としては結果として楽しめたのである。序盤から出てくる小僧が、終盤でアレハンドロを撃つことでギャングとして生きざるを得なくなっていた筋の持って行き方と、ラストの意外性もなかなか。続編出るといいな。
にしても、政府関係者ら現場に出てこない奴らと、現場で血みどろの戦いをしている人間たちの対比は非情であり、しかしこれが現実の世界にも起きているリアルな出来事なんだよなって考えると、本当に為政者のやっていることって尊敬できない。国防長官(であってる?)が会見でアメリカの軍事力云々とかイキってるシーンなんて滑稽でしかない。おまんも戦場行くなら別だけどな。
あと、拉致される娘役の少女、登場シーンが滅茶苦茶かっこよかった。拉致されて以降は普通の少女になっていたが、ボスの娘としての貫禄がある素晴らしいシーンであり、とてもいい役者さんだなと思った。
ちなみに、渋いデル・トロが観たい人で『誘拐犯』を鑑賞したことがない人には、ぜひおすすめしたい。あの作品のデル・トロも本当にかっこいいから。
コメント