もらとりあむタマ子
―2013年公開 日 78分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:「クロユリ団地」の前田敦子が演じるタマ子の日常を、四季を通じて描く青春ドラマ。音楽チャンネルのステーションIDとして始まった映像プロジェクトを長編映画化。監督は、「苦役列車」の山下敦弘。脚本は、「陽だまりの彼女」の向井康介。釜山国際映画祭A Window on Asian Cinema部門出品作品。(KINENOTE)
あらすじ:タマ子(前田敦子)は東京の大学を卒業後、父親がひとりで暮らす甲府の実家に戻ってくる。しかし就職もせず、家業のスポーツ店も手伝わず、ただひたすらに食っちゃ寝の日々を過ごしている。起きているときはマンガを読みふけるか、ゲームをするかで、かつての同級生とも連絡を取らず、まるで引きこもりのような生活を送っていた。「就職活動くらいしろ!」と父が言っても、「いつか動く! でもそれは今じゃない!」と意味不明な言葉で自分を肯定するタマ子。ようやく履歴書を書いたかと思うと、応募先は芸能プロダクションだった。それでも父は、タマ子を応援せずにはいられない。四季を通してダメダメなタマ子は、新たな一歩を踏み出せるのか……?(KINENOTE)
監督:山下敦弘
出演:前田敦子/康すおん/鈴木慶一/中村久美/富田靖子
ネタバレ感想
実家で何もせずに日暮ししているニートのタマ子。父と母は離婚していて、タマ子は父と二人暮らし。暇はあるものの、家事手伝いはほぼしない。食うか漫画読んでるか以外、ほとんど寝てるだけ。
なんとも羨ましい生活だ。俺も20代の頃、ニートだったので彼女に対して偉そうなことは言えないが、もう少し家事は手伝ってたけどなぁ。とかそんな話はどうでもいい(笑)。別に彼女の言動に共感するところなどはないんだけども、就職活動を熱心にしたくない(できない)ことに対しては、過去を振り返るに気持ちがわからんくもない。
対する父親は、タマ子のことが気にはなっているものの、強いて何かを言うわけでもない――というより、一人娘に対してあんまり強く言えないみたいな感じか。だから、家事をしろだの(途中であきらめたから)しつこくは言わない。飯はつくってやるし、洗濯もしてやるし、掃除もしてやるし、生業のスポーツ店の仕事に勤しむ。
物語途中で分かってくるのは、タマ子はアイドルになりたいらしい(どこまで本気かは謎)。だから、ひそかに写真店の息子に「アー写」を撮らせて、タレント事務所かなんかに応募しようとする。しかし、いろいろあってその試みは父の知るところとなる。
で、父がゴミ箱から拾ったタマ子の履歴書の志望動機には、「自分ではない誰かになっているときが自然で、そのための名前を付けてほしい」という内容が書かれていた。父は彼女が何かを始めたことを喜んだが、タマは子ブチ切れて、そんなものはやめた! と宣言するのである。そして、せっかく青汁飲んでダイエットとかもしてたのに、彼女は団子を食いまくって憂さを晴らす。
終盤にかかってくると、父親が、ある女性(富田靖子)とイイ感じになりかける。そのことをタマ子に突っ込まれた父は、今さら異性と生活するような人生はさほど送りたくない――というようなことをタマ子に答える。しかしそれは、本音なのかどうかわからない。娘に対してはそうは言っているものの、本心ではそうではないのかもしれない。
タマ子は本当は、父に再婚してほしくはなかったようだ。自分の居場所がなくなるし、親離れもできてない。しかし、本人は父が子離れできてないと思っている。だが、富田靖子と2人で話をする機会を得てからは、してほしいような気もしていた。
で、先ほどの話に続いて、父がいきなりタマ子に「お前は夏が終わったら家を出ろ」と命令するのだ。父は子離れする覚悟ができたようだ。するとタマ子も「ごうかく!」と父に述べて、その命令を素直に受け入れる。つまり彼女は、この時点で親離れする決心をしたということだろう。
てなことで、この映画はタマ子の成長を描いた内容というよりは、父娘の交流というか微妙な関係を描いた愛情映画みたいなものに感じた。
尺が短い中で、さしたる説明はせずに父娘の関係を描いた内容は、なかなか好感が持てる。何かの感銘を受けるわけでもカタルシスがあるわけでもないけど、こうした作品の存在はなかなかに重要だなと思った。
前田敦子のアイドル時代を俺はまったく知らないのだが、女優としてはかなり好感度が高い。今作でもタマ子のタマ子っぽさが良く出ている感じ。その“ぽさ”が何なのかはよくわからんが。
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