ブルー・リベンジ
両親を殺されて立ち直れずにホームレスになった男が、ムショから釈放された犯人に復讐を企てる。にっくき相手を葬ったかと思ったら、いろいろと面倒なことになってきてジタバタすることに。鑑賞後にいろいろ想起させることがある点では、優れた作品と言える。ネタバレあり。
―2013年公開 米=仏 91分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:両親を殺されたホームレスの悲しい復讐劇を描いたサスペンス・スリラー。第66回カンヌ国際映画祭監督週間で上映されるや完成度とリアリティを持った世界観が話題となり、国際映画批評家連盟賞を獲得した。監督・脚本は、数々の作品の撮影を担当するほか、ホラー作品「Murder Party」(未)で注目を集めたジェレミー・ソルニエ。孤独な戦いに乗り出すホームレスを、これまでのジェレミー・ソルニエ監督作品全てに出演しているメイコン・ブレアが演じている。ほか、「ホーム・アローン」のデヴィン・ラトレイ、「SHAME-シェイム-」のエイミー・ハーグリーヴスらが出演。ロードショーに先立ち、特集上映『未体験ゾーンの映画たち2015』で上映される。(KINENOTE)
あらすじ:オンボロの青い車の中で暮らすホームレスのドワイト(メイコン・ブレア)は、ある日警察に呼び出され、両親を殺害し服役していた犯人が刑期満了を前に釈放されることを知らされる。金も地位も理解者もないドワイトは、一人、復讐を果たすべく釈放された犯人のもとへと向かう……。(KINENOTE)
監督・脚本:ジェレミー・ソルニエ
出演:メイコン・ブレア/デヴィン・ラトレイ
ネタバレ感想
超適当なあらすじ
ドワイトは過去に両親を殺され、ホームレスに身を落としている。ちなみに彼には姉がいて、彼女は両親の死を乗り越え、普通の暮らしをしている。ドワイトは姉の住所に登録した車を所有しており、その車の中で生活している。
食事はだいたい、盗んでいる。入浴は勝手に人の家に上がり込んでシャワーをしてすます。冒頭では彼のそんな、ホームレス生活が描かれる。白昼堂々、人の家に上がり込んでシャワーを使うとかなかなか豪胆な奴だ(笑)。
ある日、ドワイトがいつも通り車中で夜を明かしていると、顔見知りの警官がやってきた。不法侵入でパクられるのかと思いきや、そうではない。なんと、両親を殺した男、ウェインが釈放されるというのだ。ショックを受けるドワイト。…そもそも警察ってそんなことしていいのか? と思わなくもないが、それはおいておく(笑)。
ドワイトはその話を聞いてすぐに、ウェインと喧嘩をする準備を始める。もしかしたら、最初から復讐する気があったのかもしれない。なぜなら、彼は車からバッテリーを抜き、通常時は車を使わないようにして消耗を減らしていたからだ。
でまぁ、いろいろ準備をする。繰り返すがそれは喧嘩=殺しの準備だ。ウェインを殺したろうとするのだ。で、武器入手のために窃盗をしたり、買い物をしたりするドワイト。一度は拳銃も手に入れるのだが、なぜかそれは使うのをためらったのか、解体して廃棄してしまっている。
ともかく、彼はムショから出てきたウェインを追跡し、娑婆に出た彼を祝おうとする家族に気付かれないように、バーの便所で復讐を果たすのである。
ところが、いろいろの不手際で、ウェインの家族にドワイトがウェイン殺しをしたことがバレてしまい、ウェイン家族との復讐戦がスタートするのであった…というのが超適当な途中までのあらすじ。
真の復讐相手は殺した奴ではなかった
てなことでネタバレ。その後いろいろあって、ドワイトが真に殺すべき復讐殺相手は実は他界していて、彼が殺害したウェインはその息子だったことが判明する。なぜ彼の父がドワイトの両親を殺したかというと、ドワイトの親父がウェイン父の母親とデキていたから。
怒ったウェイン父はドワイト父を殺害し、その現場にいたドワイト母も殺したのである。しかし、ウェイン父はガンを患っており余命が少ないと思われた。そこで、代わりに息子が自首することでムショ入りしたのである。ところがウェイン父親はその後、ガンで苦しむこともなく穏やかに余生を過ごしたそうだ。
虚しい殺し合い
ということが判明したところで、ドワイトがしでかしたことは覆らない。ドワイトがウェインを殺してしまったことで、彼の家族が激怒。兄弟たちがドワイトを殺しにやってくる。それを察知したドワイトは、姉とその子どもを守ることに注力せざるを得ないというか、すでに目標を達成してしまっている(本当は未達なんだけど)ので、それ以外に彼がドワイト一家と戦う理由はないのだ。姉たちを守ることしか生きる理由がないのである。
最終的に、その血みどろの戦いは、ウェイン一家全滅+ドワイトの死で完結する。本当は、ドワイトと腹違いの弟がまだ生きているので、ドワイト一家は厳密には全滅ではないが。
弟はドワイトの姉たちに復讐をするのか
この物語の悲惨なのは、ドワイト父が、ウェイン母とセックスした時の子どもが、ウェイン一家の末っ子として成長していることである。繰り返しになるが、それはドワイトの弟だ。ラストバトルで、ドワイトは弟を殺せない。しかし、彼を殺さないことで、もしかするとドワイトの姉と子どもたちが命の危険にさらされる可能性もなくはない。
最後のシーンで姉の家に郵便物が届く。ドワイトが送った手紙もその中には含まれていた。しかし、あの時に外にいたのは、ドワイト弟だったという可能性もゼロではない。ドワイト弟の言動を見るに、それはないかなと思うものの、ゼロではない。
取り返しはつかないが、事前に止めることはできた
というように、この物語は最後まで、復讐戦の根っこみたいのを残して終了する。悲しいのは、この人々の復讐心の発端が、単なる浮気騒動にあったということ。そして、その渦中の人々がすでに死んでいて、真の復讐が果たせないところ。さらに、間違った復讐をしてしまって、取り返しのつかない争いが続くことになってしまうところだ。
しかも、それは止めることができたのである。少なくとも、ドワイトは復讐をしない選択肢を選べた。しかし、選ばなかった。上のほうで、彼は復讐を考えていて、いつでも車を動かせるように普段はバッテリーなどの消耗を避けていたと書いたが、それはドワイトの一面的な行動にすぎないと思われる。
復讐心にすがることだけが彼の生きがいであるなら、わざわざホームレスにならずとも、働きながら喧嘩の準備はいくらでもできたはず。と考えるに、彼は姉に言われたように、「両親の死と向き合おうと」していなかったのかもしれない。それを乗り越えて大人になれなかったので、ニートを飛び越えてホームレスになってまったのである。
だから、彼は警察にウェインの釈放を告げられなければ、それを知らずにホームレスのままだったことも考えられる。とか何とか、考えれば考えるほどいろいろのことが想起できて、それはこの映画がなかなか優れた作品だったということを示していると思える。
だけど、だけどなんだけど、この作品、俺には全然おもしろくなかったんですよ(笑)。その割には感想は長い。それはやっぱり、優れた部分があるからなんだろうね。
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