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映画『はじまりへの旅』ネタバレ感想 スパルタ親父の華麗なる育成術

はじまりへの旅
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はじまりへの旅

森の中でスパルタ教育を施された子どもたちが森から出て俗世に触れる中で、自身に足りないものにそれぞれ気付いていく。いっぽう万能な親父は、森に引きこもり続けるダメ人間であったこともわかる。俗世に生きる人たちにとっての常識が彼らの常識と比較されることで、風刺になっているようなシーンがあり、なかなか笑える。ネタバレ少し

―2017年公開 米 119分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:ヴィゴ・モーテンセンが風変わりな大家族の父親を演じるロードムービー。アメリカ北西部の森の奥深くで現代社会に触れることなく6人の子供たちと暮らすベン・キャッシュ。しかし母親の葬儀のため、一家は2400キロ離れたニューメキシコへと旅立つことに……。監督・脚本は「グッドナイト&グッドラック」など俳優としても活躍するマット・ロス。共演は「パレードへようこそ」のジョージ・マッケイ、「フロスト×ニクソン」のフランク・ランジェラ。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞受賞作。(KINENOTE)

あらすじ:現代社会に触れることなく、アメリカ北西部の森深くに暮らすキャッシュ一家。父親ベン(ヴィゴ・モーテンセン)は、自分の全てを6人の子供たちの教育に注ぎ、厳格に育てている。そんな父仕込みの訓練と教育で子供たちの体力はアスリート並み。みな6ヶ国語を自在に操ることができる。女子と話すのが苦手な18歳の長男ボゥドヴァンは、名立たる大学すべてに合格。キーラーとヴェスパーは双子姉妹で、キーラーはスペラント語、ヴェスパーは狩りが得意だ。レリアは他の兄弟と違い森での生活に疑問を持ち、ベンに反発。好奇心旺盛なサージは、自分で動物の剥製を作るのが趣味。そして末っ子のナイは、いつも裸でいるのが好きだった。ある日、入院していた母レスリーが亡くなり、一家は葬儀のため、そして母の最後のある“願い”を叶えるため旅に出る。葬儀の行われるニューメキシコまでは2400キロ。チョムスキーは知っていても、コーラもホットドッグも知らない世間知らずの彼らは果たして母の願いを叶えることが出来るのか……。(KINENOTE)

監督・脚色:マット・ロス
出演:ヴィゴ・モーテンセン/ジョージ・マッケイ/フランク・ランジェラ

ネタバレ感想

育成術に長けた親父

ずいぶん子育てが上手な親父だなぁ。頭もいいし、サバイバル術にも長けていて、ものすごく頼りになる。子どもから観た親父としてはかなり尊敬できるタイプではなかろうか。

というか、森に住んでいる息子に教育を施すことで、難関大学にも合格させちゃうって、塾の講師とかやったらものすごい優秀そうだ(笑)。この親父は妻を精神疾患から救うために山奥の静かな病院に入院させて、自分らも子どもたちを連れてその近くに引っ越してきて、森の中で俗世を離れた生活を始めたようだ。でも、変わりもんであることを隠して一般的な社会生活を営めていれば、何かの分野でかなりの成功を収めそうな人物に思える。

でも、育成後の子どもたちをどうしたかったの?

しかしこの親父は物語中、そういう生き方はせずに、妻を亡くしてからも6人の子どもたちと一緒に、森の中に引きこもる生活を選択している。子どもたちは彼の教育によって様々な教養だけでなく、自然の中で生きるためのサバイバル術をも身につけていく。

その成果により子どもたちは、アスリート並みの体力と、幅広い分野に対する知識を身につけている。中にはエスペラント語を使っちゃうやつもいたりして、そこまでやる必要があるのかと思いもするものの、何もない自然の中で生きるには、知識を得ることもある意味娯楽なんだろうねぇ。

てなことで、親も子も、両方優秀。親父はスパルタ過ぎる部分もあるが。でも、育成術としてかなりイイと思う。俺が仮に子ども持ったとしたら、そういう育て方をしたいと思うが、いかんせん俺にこの親父のような能力は皆無なので無理(笑)。

でもこの親父、何のためにあそこまで子どもたちにエリート教育を施し続けていたのか疑問である。この人、奥さんの葬式がきっかけで子どもたちを連れて街に出て行くわけだが、仮にあの出来事がなかったら、山から出ようとしなかったと思うのだ。

すると、サバイバル術は役に立つものの、子どもたちが得た教養は何の役にも立たない。山の中で役に立たない文化・学術的才能を施してもあまり意味がないような。確かに、それぞれの個性を伸ばしたり、各人が人生において何をなすべきかなど、自分で考える能力をつけさせるには学問や芸術を学ぶことは大事だと思う。でも、学習によって培われた知識や教養などを発揮する場がなければ、親父の教育にはさほど意味がないと言えなくもない。その辺はこの親父、子どもたちを将来どうしたかったんだろうか。

身につけたことは、たくさんの人と関わることで役立つんだな

もちろん、それでは物語は進まないので、劇中では有能な子どもたちが、いろいろあって俗世に触れる中で、自身に足りないものについてもそれぞれ気付いていくわけだ。そして、万能な親父も、見方によっては単なる森に引きこもり続けるダメ人間と言えることもわかる。あとは、俗世に生きる人たちとっての常識が彼らの常識と比較されることで、風刺になっているようなシーンもあり、なかなか笑える。

最終的にいろいろあって、子どもたちは親父とともに生活することを選ぶ。個人的にそれは、なんかヌルいラストだなぁと思った。もちろん、長男が旅立ったように、他の子どもたちも学校にも通い始めたようだから、いずれは一人立ちしていくのだろうが、なんかね。

いずれにしても、あの子どもたちはエリート級の子どもたちなので、友達をつくって社会一般の常識も身につけることで、それぞれが将来何らかの形で大成するんだろうなと思われた。そうなってこそ、あの子どもたちが身につけたものが本当に生きてくるのだ。いささか常識的な目線での解釈であるが、勉強の大事さって部分がこの作品にはよく現れていると思う。

この親父は人生半降りができている

てなことで、この親父の大事にしている生活と、その信条は人生を半分降りるために必要なものであると思った。もちろんこんな生き方をしなくとも、俗世間にまみれても人生は半分降りられるのであるが、彼のような能力を持っていれば、どこにいたって半分降りながら、ある意味でストレスの少ない快適な暮らしができるはずだ。

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