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映画『ムーンライト』ネタバレ感想 誰もが苛烈な人生ゲームを生きている

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ムーンライト

どう生きるのかを決めるのは自分自身――。作中で売人のフアンはこう主人公にアドバイスをする。もちろんそれはその通りだ。しかし、生まれる環境は選べない。だからどう生きるのかを決めるのは、そう簡単なことでもない。映画の内容を踏まえて感じたことを。ネタバレはほんの少しだけ。

ー2017年公開 米 111分―

解説:第89回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞など3部門を受賞したドラマ。学校で苛められる日々を送っていた内気な少年シャロンは、麻薬ディーラーのフアン、男友達のケヴィンと絆を結ぶ。やがて、高校に進学したシャロンは、ケヴィンに惹かれて行くが……。監督は、これが長編2作目となるバリー・ジェンキンス。出演は「素晴らしきかな、人生」のナオミ・ハリス、本作でアカデミー賞助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリ(「ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男」)。(KINENOTE)

あらすじ:シャロン(アレックス・ヒバート)は、学校で“リトル”というあだ名で苛められている内気な少年。ある日、いつものようにいじめっ子たちに追われていたところを、麻薬ディーラーのフアン(マハーシャラ・アリ)に助けられる。何も話さないシャロンを、恋人のテレサ(ジャネール・モネイ)の元に連れ帰るフアン。その後も何かとシャロンを気にかけるようになり、やがてシャロンも心を開いていく。ある日、海で“自分の道は自分で決めろよ。周りに決めさせるな”と生き方を教えてくれたフアンを、父親のように感じ始める。(中略)(KINENOTE)

監督:バリー・ジェンキンズ
出演:トレヴァンテ・ローズ/アシュトン・サンダース/アレックス・ヒバート/マハーシャラ・アリ/ナオミ・ハリス/アンドレ・ホランド

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自分自身に振り回されうつむいている

人間は雄と雌があまりにも明確に区分された生き物なんだなぁと思わされた。それがまず第一の感想だ。主人公の苦悩はその明確に区分された側で生きている人間にとってはなかなか理解できぬものではあるものの、現実にこうした境遇に置かれているひとは、自分の想像するよりも遥かにたくさんいるのだろう。だからこそ、こうしてたくさんの人の心に届く作品として創造されるのだと思われる。

様々な種類の個体であり、誰一人として同じ在り方をできない人間たちは、ある場合は他者の個別性を受け入れ、ある場合は拒絶する。今作は主人公がある点において他者から拒絶されることが示されるのではなく、拒絶されることを恐れている主人公が、自分のそのあり様に振り回されて終始うつむいており、自身の生、性を享受できずにいる。

誰もがマイノリティな何かを抱えている

本作の主人公は、同性愛者としての苦悩を生きるわけで、そうした自分の特異性を他者に告白できずにいる。他者からの拒絶を恐れるという意味で、人間は誰もが墓に持っていかざるを得ないアブノーマルな自己の何かを抱えて生きているものだろう。その抱えている何かが、他者にとってはとるに足らないものである場合もあるだろうし、どうにも承服しかねる許しがたい何かの場合もあるはずだ。

なんとも突拍子もないが、わかりやすい例え話を出す。他人を殺さずにはいられない欲求を持つ人がいたとする。その人は、それ以外の部分では一般的かつ常識的な分別を持ち、普通の生き方をしていて、その欲求というか衝動を成就しないでいられる自己抑制力も有し、死ぬまで殺人を行動に出さないでいられたら、その自己抑制は彼の死後、なかったことになる。結果がなかったからだ。

では彼は、己の生を全うしたと言えるのだろうか。言えるのは、本作の主人公のようにある程度、受け入れられる余地がある性質も、そうでないものも、一般化された人間の特性と多少なりとも逸脱しているだけで、他人に語ることのできない自己否定の対象となるのである。

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人生ゲームは過酷である

そう考えると、きっと誰もが他者から受容されないであろう何かを抱えながら、残酷かつ冷酷なこの世の中で、人生を生き抜くゲームに参加しているのだ。

そうした自身の抱えるマイノリティーさは、他者に受け入れを要求するよりも、自身でその逸脱性をなんとか飼いならし、何か別の形で発散・昇華できるようになる強さと自己抑制が必要なのだろう。

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