目撃者 闇の中の瞳
9年前の当て逃げ交通事故の真相をめぐり、二転三転する物語の筋を追っていくことで楽しむミステリー作品。強引な展開に思える部分もあるが、最後まで面白く観られる。ネタバレがあるので、未見の方は注意。
―2018年公開 台 117分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:台湾の新鋭チェン・ウェイハオ監督によるサスペンス・スリラー。新聞記者のシャオチーは、購入した中古車の持ち主が9年前の当て逃げ事故の被害者だったと知り、独自に調査を開始。だが、警察やマスコミ、修理工ら関係者たちの証言はことごとく食い違っていた。出演は、台湾の若手実力派俳優カイザー・チュアン、『TOP GUY トップガイ』のティファニー・シュー、「百日告別」のアリス・クー。(KINENOTE)
あらすじ:2007年。新聞社の実習生シャオチー(カイザー・チュアン)は、ある嵐の夜、郊外の山道で車同士の当て逃げ事故を目撃。被害者の男性は死亡、助手席の女性も瀕死の状態だった。その時、シャオチーは現場から逃走する車を撮影するが記事にはならず、また犯人が捕まることもなかった……。それから9年。敏腕記者となったシャオチーは、取材の帰り道に買ったばかりの中古車をぶつけてしまう。破損した車を自動車修理工に見せると、その車は過去にも事故に遭っていることが判明。さらに警察で調べたところ、車の以前の持ち主は9年前の当て逃げ事故の被害者だった。シャオチーは、先輩記者マギー(ティファニー・シュー)の協力を得て、独自に事故の真相を調べ始める。事故の直後に失踪した被害者女性、彼女につきまとう影、消された証拠写真、そして逃走車の所有者として浮かび上がる意外な人物……。関係者たちの証言がことごとく食い違うなか、シャオチーはある結論を導き出すが……。(KINENOTE)
監督・脚本:チェン・ウェイハオ
出演:カイザー・チュアン/ティファニー・シュー/アリス・クー/クリストファー・リー/メイソン・リー
感想
事件の真相を小出しにしていくことで、それぞれの登場人物の裏の顔が明るみになっていくストーリー展開に、飽きることなく鑑賞を続けられる。最終的に全容が明らかになるので、大きな部分での消化不良感がないところも、好ましい。
劇中で「世間は狭い」みたいなセリフが出てくるが、この作品の世界では本当に狭い。その狭さに多少の強引さは感じるし、ある人物の死と、彼が事件とどんな関わりをしていたかの描き方については、ちょっとボンヤリして説明不足感のあるところは不満だが、それ以外はスッキリできるので、娯楽作品としてはなかなかの秀作だと思う。
てなことで、以下はネタバレあります。未見の方はご注意。あと、一回鑑賞した限りでのネタバレ解釈なので、内容間違ってたらごめんなさい。
ネタバレ感想
適当な人物紹介
登場人物たちの名前を覚えておかないと、途中で話がこんがらがっちゃう部分もあるので、主要人物たちをネタバレなしで紹介しとく。
新聞社関係
ワン・イーチー 主人公の新聞記者。あだ名はシャオチー。新聞記者(序盤だけ)
マギー シャオチーが惚れてる先輩記者。
チウ・ジンカイ 編集局長でシャオチーとマギーの上司(序盤だけ)。大学教授も務めており、次期・内務大臣候補でもある。
チョン チウの退職後の編集局長。シャオチーのことを快く思っていない?
警察関係
ワン 巡査部長。シャオチーと仕事を通じて旧知の仲。お互いに情報を提供しあっている。
ダー 刑事。ワン巡査部長と同じく、シャオチーと情報を提供しあっている。
ウェイ 巡査。ワン巡査部長に命じられて、シャオチーの事故車の調査を行う。
9年前の事故関係
シュー・アイティン 9年前の当て逃げ事故の被害者である女性。
リャオ 当て逃げ事故の被害者で、アイティンの恋人。事故時に死亡。
その他
ジー 自動車整備工場の経営者。妻子思いな人。シャオチーとチウのことは昔から知っていて付き合いも深い。
てなことで、時系列的にあらすじを書いてみようかと思ったけど、全部かけるほど細部を覚えてないんでやめとく(笑)。事故の真相だけを紹介。
9年前の事故のネタバレ概要
9年前の話だ。シューとリャオは恋人同士で、野放図な生活を送っている。2人はある日、子どもを誘拐して身代金を奪う計画を立てた。そして、ウェイという男を協力者として誘い、見事3人で計画を達成する。
大金が手に入って浮かれるシューとリャオ。子どもを解放しようと思っていたら、「騒いだから」という理由で、ウェイが誘拐した子どもを殺害してしまっていた。恐ろしくなった2人は金を持って車で逃走を図る。置き去りにされたウェイは、彼らの後を走って追いかけるのであった。
いっぽう、新聞社で働くチウとその部下のマギーは不倫関係にある。彼らは酒を飲んだあと、車に乗って移動していた。運転手はマギーだ。豪雨が降る夜で視界が悪い。そんな状態で、マギーは運転を誤り、衝突事故を起こしてまう。
衝突した車には、シューとリャオが乗っている。チウとマギーは最初こそ警察に連絡しようとするものの、飲酒をしていたことを思い出し、警察を呼ばずに逃げることに決める。当て逃げだ。
チウは車を旧知の仲であるジーの整備工場に持っていく。そして、事故を起こした車を隠蔽してくれるよう依頼し、半ば強引にその願いを聞き入れてもらうのであった。
いっぽう、事故現場の近くには、シャオチーがいた。彼の車はエンストしてしまい、携帯電話も電波が悪いのか繋がらない。そのため、通りがかる車に助けを求めるしかない状態にあった。
で、一台の車が彼の車の横を通り過ぎていったかと思うと、衝撃音が聞こえた。驚いて音の聞こえたほうに向かうと、シャオチーの横を通り過ぎていった車が事故に遭っていたことがわかる。しかし、衝突したほうの車は現場にいない。
シャオチーが事故車の中を覗き見ると、運転席の男は死んでいるように見えた。助手席の女も虫の息のようだ。ふと車のシートに目をやると、札束が落ちている。彼は驚き戸惑ったが、2人に観られていないことを確認して、その金を懐に収めて自分の車に戻った。
その少しあと、ウェイが事故現場にやってくる。持ち逃げされた金の入ったバッグを見つけたウェイは、走ってそのまま現場を去っていくのであった。
シャオチーは自分の車に戻って動転する気持ちを抑えようとしていた。すると、車が通りがかる。その車を呼び止めた彼は、警察を呼ぶことに成功するのであった。
という内容だったと思う。
嘘の証言内容も映像化している
この事故の真相が語られるまでの間に、嘘の証言内容が描写されるシーンがある。例えば、ジーが9年前に事故を起こした犯人であると説明されるのと、現在のシーンでシャオチーが車で襲われる描写の犯人などなど。この物語では、嘘の証言も映像化して見せることで、物語の真相を二転三転させていき、最後に真実が告げられる構成になっている。
面白いのは、誰が嘘つきで、誰が悪人なのかを鑑賞者に気にさせておいて、物語展開を楽しませるようにしておきながら、こいつが善人、こいつは悪人――と単純な図式に分けられるように、登場人物らを設定していないことだ。
登場人物の多くは、それぞれがそれぞれの背景の中で何らかの犯罪を犯している。そのため、各人の表裏が物語が進むにつれて浮き彫りになってくるのが面白いのである。
とはいえ、冒頭でも少し触れたが、こうした物語にしたいがために、大分ご都合主義な部分もある。だが、ストーリー展開を楽しむ作品だと思えば、それはそれでいいのだろう。
よくわからないところ
てなことで、総じて言えば楽しめる作品であったことは間違いない。そのうえで、チョッとだけモヤモヤしたところについて、述べておく。
終盤部分である人物が、ある人物を殺害することになるシーン。あの場にいた、もう一人の人は最終的にどうなったんだろうか。あのまま生き続けるのはかなり酷だと思うんだけど、その辺は描かれない。
で、その後にシャオチーは手にしていた小切手(シューのものらしい)みたいなのを泣きながら燃やすんだけど、あれの意味がよくわからん。続いてラスト、シャオチーとマギーがそれぞれ微笑むシーン。あの笑みの持つ意味も、俺にはよくわからんかった。
台湾映画と言えば、個人的にはこれ↓
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