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映画『トールマン』ネタバレ感想 独自の「子育て論」を押しつける慈善事業集団

トールマン
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トールマン

中盤以降の展開になかなか驚かされた。しかも、子どもをさらうと言われる都市伝説的存在のトールマンの目撃情報が、嘘ではなく本当の情報だと思わせるところもすごいのである。てなことで、なかなか楽しめる作品でした。ネタバレあり。

―2012年公開 米・加・仏 106分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:「マーターズ」のパスカル・ロジェ監督が、「トータル・リコール」のジェシカ・ビールを主演に迎えたサスペンスホラー。幼児連続失踪事件が続く僻地の炭鉱町を舞台に、自らの子供を誘拐された看護師の姿を描く。共演は「ローズ・イン・タイドランド」のジョデル・フェルランド、「X-ファイル ザ・ムービー」のウィリアム・B・デイビス、「ON AIR オンエア」のスティーヴン・マクハティ。(KINENOTE)

あらすじ:広大な森と迷路のような地下道に囲まれた炭鉱町コールド・ロック。6年前の鉱山閉鎖で急速に寂れたこの町で、次々と幼い子供たちが消えていく連続失踪事件が発生。犠牲者は既に18人。謎が謎を呼び、人々は正体不明の誘拐犯を“トールマン”と名付け、恐れていた。そんなある晩、夫に先立たれ地元で看護師として働くジェニーは、自宅から何者かに連れ去られた子供を追い、傷だらけになりながらも町外れのダイナーに辿り着く。そこに集う住人たちの奇妙な行動。やがて、想像を絶する真実が明らかになったとき“トールマン”は忌わしい伝説と化すのだった……。(KINENOTE)

監督・脚本:パスカル・ロジェ
出演:ジェシカ・ビール/ジョデル・フェルランド/ウィリアム・B・デイビス/スティーブン・マクハティ

ネタバレ感想

序盤の展開も面白い

もう少しホラー要素の強い映画かと思って鑑賞したら、イイ意味で期待を裏切られた。開始10分くらいして物語が動き出してからの怒涛の展開は、母親が子を思う一心で頑張る内容で、ジェシカ・ビール演じるジュリアが、トラックに張り付いたり森を駆け抜けたり、アクション要素もあってスリリング。

そのシーンが一段落してジュリアがレストランにたどり着いてからは、町ぐるみで何かおそろしげなことをしている集団と、その真相を暴こうと頑張るジュリアの姿が描かれるんだろうと勝手に想像していた。だが、この作品はそうはならない。そこがいい。

実は主人公のほうが怪しい

このシーン以降、ジュリアのほうが怪しい奴になっていくのである。廃工場みたいな建物に子どもを探しに行ったジュリア。そこで子どもをさらった奴と思われる謎の人間にぶん殴られて彼女は気絶してしまう。ここからの展開に、俺は「何なの? どういうこと?」と戸惑ってしまった。

なぜなら、上述したような展開を勝手に予想していたのに、ジュリアの息子だと思ってたデヴィットには、実は別の母親がいるらしいことがわかる。――というか、デヴィットをさらってジュリアをぶん殴って気絶させたのが、彼の母親のようなのだ。

俺はこの時点でも、デヴィットが何者かに洗脳されて、そのせいで彼がジュリアを怪しい人物と判断しているのかと思っていた。だが、そうではないのだ。この町の子どもをさらっていたのは、ジュリアだったのである。

ジュリアには旦那がいたが、すでに他界したことになっている。彼は町のリーダー的存在で、町人たちに慕われていたらしい。そんな夫を持っていたジュリアがなぜ、人さらいをしてたのか。てことで、ここからはさらにネタバレをします。

慈善事業的人さらい集団

実はラストでわかるんだけども、ジュリアの旦那は死んでいない。彼がトールマンなんである。彼はある団体みたいのに所属している。その団体は、あまり生活環境のよくない状況で暮らしている幼子たちを引き取り(さらってるんだけど)、その財力でまともな生活をさせてあげることを目的とした慈善事業的人さらい集団らしい。

で、ジュリアの旦那が派遣されていたのが、この物語の舞台となる廃鉱山の町なのである。鉱山が閉鎖して以降のこの町は、働き口が少ないので寂れている。そのため、そこに住む人々は貧乏だし、教育水準も低い。よって、そこで生まれ、育てられている子どもたちも、ロクな生活ができていないし、将来も暗い。

ジュリアは子どもがほしかった

ジュリアの旦那はそういう町に医者として赴任してきて、町人たちの人気を集めていく。しかし、その裏では奥さんのジュリアとその妹(専属のベビーシッター)? を使って子どもたちをさらっては団体の保護下にして、さらった子どもたちの名前を変えて新たな人生を送らせていたのである。何でジュリアがそんなことをしていたかというと、彼女が子どもに恵まれていないことが一因であるようだ。

自分の子どもがつくれないから、さらってきた子どもを団体に預けられるくらいに子どもを洗脳するまで、彼女が子どもを我が子のように育て教育を施すのである。そういう役割を果たすことで、彼女は自分の子が持てないことの寂しさを紛らわせていたようだ。

彼女は最終的に捕まってムショ送りになるものの、真相は隠し続ける。恐らくそれは、子どもの生まれ育つ環境が、彼ら、彼女らの人生に大きな影響を及ぼすと信じて疑わないからである。

彼女が「体制は変わらない、変えることはもうできない」とかブツブツつぶやくシーンがある。社会の環境は変わらない、つまり格差は是正できない。だから、底辺に育った子は底辺で育たざるを得ない――。そういうことを彼女は嘆いているのだと俺は解釈した。

だからこそ、彼女は底辺の生活をしている子どもたちを救うために、子どもをさらっていたのである。

ジェニーは自らの意思で選択したが

この作品において重要な存在は、喋れない少女のジェニーだ。彼女以外の子どもたちは全員、選択の余地なくジュリアと黒幕たる団体に人生を変えられている。しかし、ジェニーだけは自分の意思でジュリアにお願いし、それを許可してくれたジュリアのおかげで、恵まれた環境で過ごせるようになった。

しかし、彼女は時々迷うのだ。確かに恵まれた環境ではなかったが、自分を愛してくれた本当の母親がいたことを彼女は覚えているから。次の母親は優しくしてくれて、新たな人生を掴むきっかけを与えてくれたジュリアである。そして最後の母親は、ラストで彼女が暮らす環境を提供してくれている初老の女性。自分で選んだこととはいえ、その選択はあっていたのか。それは誰にも分からないのである。

旦那の存在がよく分からぬ

てなことで、なかなか面白い作品でした。しかしよく分からんのは、ジュリアの旦那の存在だ。彼は何で、町から姿を消してしまったのか。彼が人気者として町に居続ければ、ジュリアに疑いの目がかかることはなかったように思うのだが。

と考えると、彼は本当は、ジュリアの旦那ではなかったのだろうか。しかし、彼とジュリアは世界各地を転々としながら子どもをさらって再教育していたようなので、少なくともパートナーではあったはず。それなのにどうして、ジュリアを見捨てるような結果になったのか、そこんとこがよく分からんかった。

まぁそれをおいておけば、楽しめる内容でした!

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