新感染 ファイナル・エクスプレス
韓国製ゾンビ映画ってことでかなり期待して鑑賞。描かれる感染者たちをゾンビって言っていいのかよくわからんが、噛まれると自分も感染して別の変な生き物になっちまうんだから、ゾンビでいいんだと思う。事前の期待に違わぬ娯楽作で、充分満足できました。ややネタバレあり。
―2017年9月公開 韓 118分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:カンヌ国際映画祭やシッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭などで話題となったパニックホラー。感染した者を凶暴化させる謎のウイルスが高速鉄道の車両内にまん延する中、乗客たちが決死のサバイバルを繰り広げる。『トガニ 幼き瞳の告発』『サスペクト 哀しき容疑者』などのコン・ユらが出演。群れを成して襲い掛かる感染者たちに恐怖を覚える。(シネマトゥデイ)
あらすじ:別居中の妻がいるプサンへ、幼い娘スアンを送り届けることになったファンドマネージャーのソグ(コン・ユ)。夜明け前のソウル駅からプサン行きの特急列車KTX101号に乗り込むが、発車直前に感染者を狂暴化させるウイルスに侵された女性も乗ってくる。そして乗務員が彼女にかみつかれ、瞬く間に車内はパニック状態に。異変に気づいたソグは、サンファ(マ・ドンソク)とその妻ソンギョン(チョン・ユミ)らと共に車両の後方へ避難する。やがて彼らは、車内のテレビで韓国政府が国家非常事態宣言を発令したことを知り……。(シネマトゥデイ)
監督:ヨン・サンホ
主演:コン・ユ/マ・ドンソク/チョン・ユミ
躍動感溢れる感染者
この物語の感染者は走る。その勢いと群がりっぷりが半端なくて
オイオイオイ
て、笑えちゃう。こいつら躍動感ありすぎだろ(笑)。そして痛みも感じないようで、その上耐久力も高そう。対する主人公らが使う武器はバットくらいなもん。あとは素手とか(笑)。
見どころ
列車が舞台てのが新鮮
てなことで、数もものすごく多いから、主人公らの生存はかなり絶望的。そんな状況下で、様々な危機に見舞われながらも、感染者は暗いところでは人間の姿が見えないとか、音に群がるとか、その辺の特徴を把握しつつ生き残りゲームをサバイブしていくのである。
主人公たちがゾンビから逃げる舞台が列車内ってところが新鮮でいい。一回だけみんなで列車から降りて、ある駅を散策するシーンがあるけども、それ以外はほぼ車内。そして、あの途中下車が、物語の大きな転換点になっていて、主人公もあの駅での体験を経て、父親になっていくわけだ。そして父になる。
登場人物らの背景がきちんと描写されてる
この映画のよさは、主人公のコン・ユとその娘以外の脇役も、それぞれの背景や心境が、セリフを使った会話劇で説明的にならずにきちんと説明されているとこだろう。
だから、それぞれの言動や、心の動きなどがよく伝わってくる。これって当たり前なんだけど、それをやらずにいる駄作をたくさん観ている立場としては、すごくありがたいし、素直に作品を楽しめるのである。
中でもよかったのは、マ・ドンソクが演じたパワフル親父。すごくいい奴で好感が持てる。奥さんが美人なのも納得であった。
対する主人公のコン・ユはファンドマネージャーという職業に就いていて、日々、結構な冷徹判断を下している。で、相当な仕事人間らしく奥さんとも離婚調停中ぽいし、娘との仲も冷え切っているのだ。
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主人公の父としての成長劇
そんな彼は、中盤まで娘がドン引きするくらいの言動をするわけだが、ドンソク親父らと関わるうちに、常識的な振る舞いをするようになる。あの死地において、それがよいのかどうかはわからぬけども、その改心? によって彼は、娘との絆を取り戻していくのだ。
中盤以降、彼はトイレで1人、自分がファンドマネージャーとして犯した罪を知る。そして、鏡にうつる返り血を浴びた自分のシャツとそれをまとう自分を見て泣くのだ。
あの血はつまり、世界がおかしくなる前の彼が、自分の仕事によってたくさんの人をないがしろにし、血を出させていたことを示している。
彼は惨劇の渦中のなかで、ようやく自分が日常的に人を間接的に殺していたかもしれない職業に就いていたことに気づくのである。
そして、終盤。彼は娘との絆を再構築したことを確かめながらも、その行動が遅すぎたことも知る。
車外にダイブする前の彼の笑顔は本来、父としてしかるべき行動ができていたなら、この惨劇を味わう前に体験できたことなのであった。ちくしょう。
感想
ということで本作は、感染ゾンビ系パニックを題材にした、メロドラマだったのである。メロドラマは別に好みではないけども、充分楽しめる作品でした。
身近にいる大事な人は、あとで後悔しないように常日頃コミュニケーションを欠かさずに触れ合うようにしたいもんですな。それこそドンソク親父のように(笑)。
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