スプライス
モンスターパニック映画を期待している人には、この作品はおすすめできない。新しい生命体をつくってしまった科学者の夫婦が、その生命体に翻弄される姿が描かれる、アクション要素はほとんどない作品。ネタバレあり。
―2011年公開 加・仏・米 104分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:科学者夫婦が、人間と動物のDNAを配合して創り出した新生命体の恐怖を描くSFサスペンス。監督は、「CUBE」のヴィンチェンゾ・ナタリ。出演は、「戦場のピアニスト」のエイドリアン・ブロディ、「死ぬまでにしたい10のこと」のサラ・ポーリー。第42回シッチェス・カタロニア国際映画祭特殊効果賞受賞。 (KINENOTE)
あらすじ:クライヴ(エイドリアン・ブロディ)とエルザ(サラ・ポーリー)の夫婦は、ともに科学者である。2人は法と倫理を無視して禁断の領域に踏み込み、人間と動物のDNAを配合し、新種の生命体を創造するという実験を行う。実験は成功し、新生命体が誕生する。クライヴとエルザはその生命体にドレンという名前をつけ、誰にもこのことが知られないよう、秘密裏に育てていく。ドレン(デルフィーヌ・シャネアック)は、急速に美しい女性に成長する。しかし彼女の成長は止まらず、2人の想像をはるかに凌ぐ、得体の知れないモンスターへと変貌を遂げる。クライヴとエルザはドレンを抹殺しようと考えるが、反対に彼女の恐ろしい目的に巻き込まれていく。 (KINENOTE)
監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
脚本:ヴィンチェンゾ・ナタリ/アントワネット・テリー・ブライアント/ダグ・テイラー
製作総指揮:ギレルモ・デル・トロ ほか
主演:エイドリアン・ブロディ/サラ・ポーリー/デルフィーヌ・シャネアック/シモーナ・メカネスキュ
ネタバレ感想
序盤からラスト近くまで、ともかくエルザにイライラしてくる物語(笑)。彼女が鑑賞者をイライラさせる行動をしてくれないと物語が成り立たないので仕方ないのだが、それでもイライラするもんはイライラするし、ムカつく。
物語が進むにつれてわかってくるのは、どうやら彼女は母親に虐待されていたのではないかということだ。だからなのか、旦那のクライヴとの間に子どもをつくることを拒否している。しかし、クライヴに指摘されたように己の支配が及ぶ生物に対しては、母性を感じ、育てることに喜びを感じる人らしい。
だからこそ序盤のように、あのおぞましい2体の人工生物を「キュート」(全然キュートじゃねぇと思うぞ)と評し、ドレンに対しても自分の支配下にある時点までは、異常とも思えるほどに執着していたのである。というか、誕生時点からドレンの姿はきもい。あれを育てようと思える感覚が理解できないが、愛情(母性?)というやつはすごいでありますな。
クライヴはけっこうまともな男ではあるが、エルザの暴走を止められないという意味では、情けないやつである。もちろん、とめられるほどの威厳を持ってたら、これまた物語が進まないのであるが(笑)。
ということで2人の夫婦であり科学者は、自ら生み出した異形の生物に翻弄されることになる。最終的に、クライヴはエルザのDNAを持つドレンのフェロモンに抗えず、ダメとわかっていながら、積極的に性交をしていた。対するエルザはその後、性転換したドレンに襲われ、レイプされる。生みの親である2人と性交をし、その親によって殺害されたドレン。何とも恐ろしい生き物であるが、気の毒でもある。
俺はドレンには自己意識があったと思っているんだが、自分が彼女のような立場にあったら、どのような感情が芽生えるのかと考えた。しかし、そんなの考えてもわかるわけがないので、考えるのをやめた(笑)。
ラスト、クライヴはドレンに殺害され、エルザは身ごもったドレンの子どもを研究対象にするため、産む決意をするところで物語は終わる。
本作はネットフリックスで見つけて何となく観てみたのだが、鑑賞中、以前見たことがある作品だということに気付いた。つまり、俺にとっては鑑賞したのを忘れてしまう類の作品だったのである(笑)。
しかし、内容的にツッコミどころは少なく、ムカつきを感じながらも最後まで鑑賞できるのは、この作品にそれだけの力があるからだろう。
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