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映画 ルーム ネタバレ感想 監禁脱出サスペンスから母子のヒューマンドラマに

ルーム
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ルーム

―2016年公開 愛=加 118分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:長年の監禁生活から脱出した母子が外の世界で直面する葛藤や苦悩を描くドラマ。「ショート・ターム」のブリー・ラーソンが母親を演じ、ゴールデン・グローブ賞主演女優賞、アカデミー賞主演女優賞を受賞した。原作はエマ・ドナヒューのベストセラー小説『部屋』。監督は、「FRANK フランク」のレニー・アブラハムソン。他に、「スマーフ2 アイドル救出大作戦!」のジェイコブ・トレンブレイ、「ファーゴ」のウィリアム・H・メイシー、「きみに読む物語」のジョアン・アレンが出演。トロント国際映画祭観客賞ほか、世界の映画祭で受賞多数。(KINENOTE)

あらすじ:ママ(ブリー・ラーソン)と5歳の誕生日を迎えたジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)は、天窓しかない狭い部屋で暮らしている。夜、二人がオールド・ニックと呼ぶ男がやってきて、服や食料を置いていく。ジャックはママの言いつけで洋服ダンスの中にいる。ママは「息子にもっと栄養を」と抗議するが、半年前から失業して金がないとオールド・ニックは逆ギレする。さらに真夜中にジャックがタンスから出てきたことで、ママとオールド・ニックは争う。翌朝、部屋の電気が切られ寒さに震えるなか、生まれてから一歩も外へ出たことがないジャックに、ママは真実を語る。ママの名前はジョイで、この納屋に7年も閉じ込められていた。さらに外には広い世界があると聞いたジャックは混乱する。電気が回復した部屋で考えを巡らせたジャックは、オールド・ニックをやっつけようとママに持ち掛ける。しかし、ドアのカギの暗証番号はオールド・ニックしか知らない。ママは『モンテ・クリスト伯』からヒントを得て、死んだフリをして運び出させることを思いつく。ママはジャックをカーペットにくるんで段取りを練習させるが、恐怖から癇癪を起こすジャック。ママは、“ハンモックのある家と、ばあばとじいじがいる世界”をきっと気に入ると励ます。しかし、「ママは?」と尋ねられると、2度と息子に会えないかもしれないと知り、言葉に詰まる。そして、オールド・ニックがやってくる。脱出劇は失敗しかけるが、ジャックの記憶力と出会った人たちの機転で、思わぬ展開を迎える。翌朝、ママとジャックは病院で目覚める。ママの父親(ウィリアム・H・メイシー)と母親(ジョアン・アレン)が駆けつけるが、二人が離婚したことを知ってママはショックを受ける。数日の入院後、二人はばあばと新しいパートナーのレオ(トム・マッカムス)が暮らす家へ行く。しかし意外な出来事が次々とママに襲い掛かる。一方、新しい世界を楽しみ始めたジャックは、傷ついたママのためにあることを決意し……。(KINENOTE)

監督:レニー・アブラハムソン
出演:ブリー・ラーソン/ジェイコブ・トレンブレイ/ジョアン・アレン/ショーン・ブリジャース/トム・マッカムス/ウィリアム・H・メイシー

ネタバレ感想

2016年の公開当時、けっこう評判の高い作品だった記憶がある。俺はレンタルで鑑賞して、今回2度目の鑑賞。実は内容全く覚えてなかったので新鮮な気持ちで観られた。

前半はジョイという母親と息子のジャックの日常が描かれる。でも、2人の生活はなんだか変。話が進むにつれて分かってくるのは、オールドニックという謎の男に監禁されていて、汚い小屋みたいなところで生活をしていることだ。その小屋には天窓があるだけで、外の光はそこからしか入ってこない。

食料はニックが買ってくるものを受け取り、それをジョイが調理して食べている。それ以外の時間、息子のジャックはテレビを見たり絵本を読んだりしている。それか、運動不足を補うためにジョイとちょっとした運動をするくらい。

そうした日々が、ジョイにとっては7年。ジャックは5年間続いている。さらに詳細をネタバレすると、ある日、犬の散歩をしていたニックからジョイは声をかけられる。彼女が17歳の頃だった。そして、そのまま彼女はニックに拉致されて監禁生活が始まったのである。おそらく、レイプもされているようで、ジャックはその子どもなのだ。

ニックは罪を隠すためにジョイを監禁し続けているわけで、ジャックもその拍子で生まれてしまったのである。どうやって彼を産んで、どうやって世話をしていたのかは謎。その辺のことは物語では描かれない。あと、日を浴びることができない赤子がまともに成長できるのかというのも疑問だが、その辺は物語の展開上仕方がないことだろうから、あまり深く考えないでおく。

ともかく、ジャックにとって小屋の中の世界がすべてだ。ジョイもある程度架空の話をジャックに伝えていて、真の世界の情報は彼に伝えない。しかし、彼が5歳になって、知能が発達してそれなりに物事に対する理解力が高まっていることを見て取ったジョイは、この世界の真実を告げて、外の世界への脱出を図るのである。

その計画は、ジャックをまずは無事に外へ逃がすというものであり、自分の生死は二の次というものだった。殺されないにしても、ジャックが事の真相を外の世界の大人に伝えられなかったら、彼女はニックに監禁し続けられていただろう。何しろ、7年間にもわたって、何の疑いも持たれずに人間を監禁できる実績のある男だからだ。

であるから、ジャックが脱出に成功しただけでなく、ジョイが監禁から逃れ得たのは、ジャックが幼い割には聡明な子どもだったからという部分はなくもないが、運によるものが大きい。そして、監禁脱出には犬の散歩をしていた男と、何より対応がうまく機転の利く女性警官によるところが大きい。

でまぁ、この監禁脱出劇からこの映画は、まったく別の物語に変容する。前半が監禁脱出サスペンスドラマだったとするなら、後半は母子の成長を描いたヒューマンドラマだ。

普通のサスペンスであれば脱出したらめでたしめでたしヨカッタネ…で終わるわけだが、この映画が他と異なるのは、脱出した母子、主に母親のジャックのほうが通常の生活に戻るための苦悩をきちんと描写しているところにある。

確かに考えてみれば、17歳の娘が男に拉致監禁されてレイプされていたわけだから、その体験はトラウマ級のものであり、マスコミの取材攻勢などにさらされるストレスも相まって、俄かには社会復帰などできようものもないのであり、その辺が物語の軸となって描かれるのだ。しかも、彼女にとっての両親は7年の間にそれぞれの生活環境を変えているし、ジョイはそこにも慣れていかなければならない。いずれにしても、彼女の監禁生活は後の5年間のほぼすべてがジャックのために費やされており、それが彼女の生きる糧だったのだ。要するに救いだったのである。

ところが外の日常に戻ってみると、自分自身の抱えた問題に向き合わなければならなくなる。生活はジャックを生かして成長させるだけのものではなく、自分自身が社会と向き合い、旅立たねばならないのだ。そして、そのための成長に必要な10代を彼女は人と接することなく過ごしているわけで、かなりの困難が待ち受けているのである。

いっぽうのジャックは子どもだけあって立ち直りも早いのか、周囲の環境に慣れて普通の男の子として成長をしていく。その過程で、ジャックは母親を助けるために自分の大事にしていた長髪を断髪し、母親に捧げることで勇気を与えるのだ。そして母親はそれを立ち直りのきっかけとしていく。

この先にどのような物語が起こるのかはわからぬが、この作品はそういう意味ではやはり、親子の交流とそれぞれの成長を描いたヒューマンドラマなのである。という当たり前の感想しか出てこないが、楽しめる作品です。

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