21世紀の資本
―2020年公開 仏=新 103分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:ベストセラーとなった経済学書を、著者ピケティ自身が監修・出演を務めて映画化したドキュメンタリー。700ページに及ぶ大著の理論を、映画や小説、ポップカルチャーなどの引用により、分かりやすく解説。21世紀を生きる私たちが知るべき最重要課題とは。監督はドキュメンタリー作家のジャスティン・ペンバートン。(KINENOTE)
あらすじ:2014年に日本でも発売され、一大ブームを巻き起こした経済学書『21世紀の資本』。フランスの経済学者トマ・ピケティが執筆し、“史上最も重要な経済学書”として世界中から称賛を集めた。その一方で、700ページという超大作のため、完読が難しいことでも有名だ。そこで、著者ピケティ自身が監修から出演まで務め、一般の人も五感だけで理解できるように完全映画化。難しい数式などは使わず、著名な経済学者とともに、本で実証した理論を映像で表現した。「ウォール街」「プライドと偏見」「レ・ミゼラブル」「ザ・シンプソンズ」といった映画や小説、ポップカルチャーなどをふんだんに用いて、過去300年の世界各国の歴史を“資本”の観点から切り取って見せる。“働いてもお金持ちになれないのはなぜか?”、“社会の何を変えなければいけないのか?”……。21世紀を生きる私たちが知らなければならない最重要課題が次々と明かされてゆく。世間に渦巻く格差社会への不満や政治への不信感、誰も教えてくれなかった答えがここにある。昭和の高度経済成長や平成のリーマン・ショックの真相にも迫る必見の経済エンターテインメント。(KINENOTE)
監督:ジャスティン・ペンバートン
監修・出演・原作:トマ・ピケティ(『21世紀の資本』(みすず書房))
ネタバレ感想
本が高いし分厚いので敬遠していたものが実写化されて、ピケティ本人が監修・出演して解説しているということで鑑賞してみた。短い時間にまとめているので細部の説明が少なめだが、映画作品や小説なども引用しつつ、過去、現在の世界の経済状況をわかりやすくまとめている印象。
現代に時代がもどってくるまでは17世紀から18世紀以降の歴史を経済的視点からおさらいしているような感じ。で、なぜ現代社会に格差が広がっているのかなどが紹介されていき、この格差をいかように是正すべきかなどが語られる。そして、未来のことも少し。
今の世の中がいかに巨大企業たちに支配されているかということが描かれており、そして、政府もある意味ではその企業たちの傀儡みたいな機能しか果たせていないことが説明される。社会の上級国民ではない位置で生活をしている俺なんかから見ると、やっぱりこの世はディストピアになっちゃってるんだなと思わされる。抗うことが不可能だと思えてくるくらいに。
この作品ではそこまで言及されてないが、個人的には、格差の広がりにより、下層の人間たちは考える力を失い、分断させられていると感じている。この分断というのは富裕層との経済的分断でもあるんだけども、隣人に対する寛容性の摩耗――つまり横のつながりの分断も同時に起きている。例えば、人間を右よりか左よりかでしか考えず、その間にいることを意識せずに、下層の人間同士も敵味方にわかれて分断されつつあるのではないか。
というか、自ら進んでそういうような状況をつくり上げている。本来なら、そのような現状を生み出しているシステムについて意識を向けるべきなのに、そういう考えが持てない、客観性がない人が増えているんではないか。
そう言ってる俺自身もその中の一人なのかもしれないが、ともかくなんというか、この作品自体に新しさや革新的な何かがあるわけではなくて、資本主義社会がこのまま進んでいくと、必然的に起こるべきことが今目の前で繰り広げられているのだということを、ありありと見せつけてくるという意味では、ホラー映画よりもホラーだ。
ディストピア映画よりもディストピアだ。困ったもんであるが、そこに対して自分のできることを粛々とするしかないのである。
そして未来、人間は考えることをやめてロボットに支配されるようになるか、それとも踏みとどまって機械を支配して有効活用できるのか、かなり瀬戸際に来ているんだなと思うのである。
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