『捕らわれた女』
ケイト・マーラ主演のサスペンス・ドラマ。逃亡犯によって自宅で人質に取られたシングルマザーの奮闘を描く。実際に起きた奇跡的な事件に基づき、信仰の力を描く。迷える魂の触れ合いが胸を打つ感動のドラマ。脱走犯のブライアン・ニコラス(ゴールデングローブ賞候補者デヴィッド・オイェロウォ)は生まれたばかりの息子に会おうと必死のあまり、シングルマザーになって間もないアシュリー・スミス(エミー賞候補者ケイト・マーラ)を彼女の自宅に監禁する。命の危険を感じ、二度と娘と会えなくなることを恐れたアシュリーは、リック・ウォレンの著書「人生を導く5つの目的」に救いを求める。人生の岐路に立つアシュリーと監禁犯は、絶望の中に希望と光を見いだす。Dove Foundation(ダヴ基金)はこのすばらしい映画を“感動的”と評した。 (TSUTAYA)
ネタバレ感想
サスペンス映画ではない・・・
サスペンスかと思ったら、全然違った(笑)。ハラハラとかしない。まぁでも、淡々と物語が続くものの、最後まで見ようと思わせてはくれる作品だとは思う。
とは言っても、登場人物の掘り下げが・・・
ある1冊の本を巡って主要キャラの人生に大きな変化が起こる――という奇跡を描いているんだろうけど、主要キャラがなぜそういう言動をするのか、その動機というか背景が説明されているようで説明しきれておらず、モヤモヤしちゃってイマイチ物語に入り込めなかった。
暴走男ニコルズ
まず、犯人のニコルズ。自分の子どもを産んだ恋人Aとは別の恋人Bがいて(たしか本命はBで、浮気した相手がAだったはず)Bをレイプして捕まったので(本人はやってないと言い張る)、冒頭の出廷シーンに至っているらしい。
で、「俺はレイプしてないYO! 子どもに会いたいYO!(この動機は後にわかる。該当シーンでは無言)」と、警察の拳銃を奪って判事ら計3人を殺して逃亡する。
わかる、やってることはムチャクチャでバカ丸出しだが、ここまではわかる。
わからんのはこの後、この人は逃亡中、また殺人を犯すのだ。なんか建築中みたいな住宅で作業している男を、車の中からジッと眺めているシーンがある。実際に殺す描写はないものの、後ほど、その作業していた人が遺体として発見されて警察が現場を調べるシーンが出てくる。
あれ? この人、殺されてたの?
調べによって遺体の人はFBIの捜査官だったとわかる。捜査官? それって偶然なの? それとも犯人と何か因縁があったから殺されたの? 偶然見つけて車を奪うために殺したんだとしたら、車からこの人を眺める意味深なシーンがようわからんのだが。しかも、この遺体の人が、捜査官だったり、税関職員と訳されてたり、どっちなんじゃボケェ! わけわかりません。
ヒロインは薬の常習犯
いっぽうの、犯人に監禁される側のヒロイン、アシュリー。この人はメスとかいう覚せい剤の常習者である。なんとかして依存状態から抜け出したいと思っているけど抜けられず、アメリカの映画によく出てくる集団セラピーみたいのに参加している。
ヒロイン、オメーもわけがわからんぞ!
よくわからんのが、何でこの人がメスの常習犯になったのかってことなんですよ。冒頭で彼女には娘がいて、今はその子を伯母に預けているのがわかる。彼女は「メスに全てを奪われた」と言っているが、この時点では、なぜ常習者になったのかが、わからない。
いずれわかるのかなと思ってストーリーを追っていくと、彼女の旦那が死亡していることが判明する。なるほど、それがメスを始めた原因かしらん? と思う。思うのだが、実はそうでもなさそう。なぜなら、「旦那は薬の売人に刺殺された」というのである。
いつから薬に手を出したんだ?
ん??? 売人に刺殺? それは、君がメスを購入していた売人なの? そうではなくて、無関係の売人? これがどっちだか説明しないと、彼女が旦那の生前からメスの常習者だったのか否かがわからないのでは?
これまた、字幕の訳が悪いせいなんだろうか? 該当シーンのセリフはかなり重要だと思うんだけど。彼女がいつ薬におぼれたかで、クズ人間ぶりの度合いが変わってくるからね。
つまり、旦那がいた頃から常習者だったら、旦那の死によって薬に溺れた――とは言えないから、クズッぷりが爆上げされるわけです。で、結局それがどっちだかを示す描写は出てこない。
「人生を導く5つの目的」? 知らねーYO!
しかも、作品内のキーとなる書籍「人生を導く5つの目的」なんだけど、彼女はそもそもこの本に救い見出そうなんて気持ちは微塵もなかったわけじゃん? たまたま犯人に監禁されたことがきっかけで朗読をすることになるだけで、その出来事がなければ、ページをめくったかどうかすら、疑わしい(そこが奇跡と言えばそうなんだが)。メディアの作品紹介(本稿の冒頭参照)には、「書籍に救いを求める」と書いてあるけど、求めてなかったと思うなぁ。ただの偶然だろ、あれ。
書籍に救いは求めてません(笑)
彼女が犯人に脅迫されてもメスの吸引を拒んだのって、別に本を読んだからではないよね? それを思わせるような描写はないから。あの時点で解釈するとしたら、監禁されて、命を取られるかもしらん状況下で、娘の顔が思い浮かんだからでしょ? その前から頑張って止めてればよかったのは当然なんだが、まぁそれはおいといて、明日をも知れぬ状況の中で、娘には会いたいんだけど、なぜかあそこで、死の可能性を突きつけられながらも、弱い自分と闘う意志を持ったということなんだと思う。
ということで、前述の繰り返しなんだが、この物語は本を朗読することで、読み手と聞き手のそれぞれに心境の変化が起きて、特に犯人には本に書かれている言葉が身に染みて自首につながっていくということが描かれるはずなのに、なんか登場人物の背景や行動の動機がハッキリ描かれてないし、本を軸にしたやり取りが少なすぎて、結末に至るまでの説得力が全くないんです。ないんです!
自分に英語力があれば・・・と反省させてくれました(笑)
ここまで延々と書いてきたことって、実話がもとになっているんだから、ちゃんと調べれば描けることだよね。何でやらなかったんだろう? 細部が適当だから、本当に伝えるべき内容までボンヤリしちゃっていると思うんだけどなぁ。これは全部、字幕に頼らずにセリフの内容が理解できたのなら、わかることなんだろうか?
斬新!? なエンドロール(絶句)
そんなこんながあって、劇終に至るのですが、ここまでだったら、作品自体にそこはかとない静謐さが漂っていたような感もあって、まぁ、いいかなと思えて終わりでした。しかし、エンドロールがそういう感想で終えることを許さない(笑)。
なんと、作品のモデルになった実在のアシュリーが、オプラ・ウィンフリーのトーク番組に出演している場面が流れ、事件の内容について語っているシーンが流れるのである! さらに、書籍の著者、リック・ウォレンなる牧師も出てくる!
それはないわ(笑)
なんじゃこりゃ? 正直、引いた(笑)。こんなんやってもうたら、鑑賞した人に「この映画って、本のプロモーションのためにつくられたんだな」と思われてもおかしくない。ていうか、もろ宣伝だろ、これ(笑)。このエンドロール見たことによって、本編そのものへの物足りなさが、作品全体への嫌悪感に変わってしまった!
何で嫌悪感を覚えるかって、こういうのがアメリカ的なところなんかもだけど、自分の体験をああいうテレビに出て得意気に語る感覚が俺には理解できないから。
あと、ああいうバカ騒ぎみたいのを見せることで、本編に流れていた静謐さみたいなんが、台無しになっていると思うんだが。うん、スポイルされているよ、スポイル。
なんか美談っぽく終わっているんだけど、全然共感も湧かないし、感動もないし、酷いなぁと思った。
もちろん、俺の個人的な感想です。
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