ミッドサマー
―2020年公開 米 147分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:「ヘレディタリー/継承」のアリ・アスター監督による異色スリラー。家族を不慮の事故で失ったダニーは、恋人や友人ら5人でスウェーデンの奥地で開かれる90年に一度の祝祭を訪れる。太陽が沈まないその村は楽園のようだったが、次第に不穏な空気が漂い始める。出演は「ファイティング・ファミリー」のフローレンス・ピュー、「ビリーブ 未来への大逆転」のジャック・レイナー。(KINENOTE)
あらすじ:家族を不慮の事故で失ったダニー(フローレンス・ピュー)は、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンの奥地で開かれる“90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れるなか、優しい住人たちが陽気に歌い踊る日々。太陽が沈まないその村は、ダニーにとって楽園のように思えたが、次第に不穏な空気が漂い始め、彼女の心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖……それは想像を絶する悪夢の始まりだった。(KINENOTE)
監督・脚本:アリ・アスター
出演:フローレンス・ピュー
ネタバレ感想
妹が両親をも巻き添えに自殺してしまい、そのショックで精神が不安定になっている主人公のダニー。
恋人のクリスチャンに支えてもらわないと、どうしようもない状況だが、クリスチャンはその対応に苦慮してる模様。もっと悪く言うと、話を聞いてやることにウンザリしつつある。
しかし、別れを切り出すこともできず、グダグダな付き合いが続いている。そのクリスチャンが大学の友人たちに誘われて、スウェーデンを旅行することになったので、いろいろあったものの、ダニーもそれに同行することにした。
友人の中の一人、ペレの故郷であるというスウェーデンのホルガという集落は、ちょうど90年に一度の夏至祭を行うところだった。
その祭事に加わることを許された一行は、その集落が伝統的に行っている奇怪な風習にふれるうちに、逃れられない運命にさらされていくことになるーーというのが超適当なあらすじ。
同監督の『ヘレディタリー』と比べると、個人的には分かりやすい話だった。簡単に言えば、カルト教団の儀式に旅行者がいけにえとして利用された話ということだ。
ただ、最後まで生き残る主人公にとっては、そこは安らげるよりどころになるかもしれないーーという終わり方にも見える。
逆に、その後を考えるとやっぱり悪夢が続くのかもしれないーーという見方もできるし、それはどっちでもいいんだろう。
ということで、冒頭からいろいろな伏線が張り巡らされているらしいこの作品、それは前作の『ヘレディタリー』でも同様だったけど、何度も見返してそれを楽しみたいと思うほどには、楽しめなかったな。
日が沈まないホルガ村での生活ってのはなかなかきつそう。行われている儀式にさして興味が湧かない人間からしてみれば、2時間も訪問できれば十分な場所だ。
そもそも、日が沈まない土地で暮らし続けるって大丈夫なんだろうか。夜を知っている人間からしてみれば、頭おかしくなってしまうんじゃないかと不安。逆に、ダニーのように精神的に不安定の人は、そういう場所のほうが心がやすらぐもんなのかどうか。
ホラー、スリラー的に楽しめるかというと、グロ描写はいくつかあるものの、スリルには欠ける展開だし、ハラハラはしない。
とはいえ、普通の恐怖映画ってのは闇があってこそみたいな部分があるので、そこを逆手にとったようなこの物語はすごいといえばすごい。
例えば、闇がないからこそ、主人公たち一行は恐怖をさほど感じずにいられて、村での生活に知らぬ間に溶け込んでしまっていたとも考えられる。つまり、明るさに安心してしまって本来ならおかしいと思うはずの体験についてもどこか危機感がマヒしてしまい、自分たちが犠牲になるまでに逃げようという発想すらわかなくされていたーーというような。
その辺は想像の域を出ないものの、最後の主人公の選択もなかなか酷いなぁと思いつつ、犠牲にされることになったクリスチャンに対しても、さしたる同情心はわかない。
唯一、ペレは最初からこの一行を犠牲にするために誘い込んだわけだから、こいつの柔和さの奥にある本心が、ある意味ホラーではあるのだが、彼は完全にホルガ側の人間だったわけだな。
ということは、途中で犠牲になる論文学生やションベン学生は、写真を無断で撮影していよういまいが、神木みたいのにショウベンをかけていようがいまいが、殺されることには変わらなかったっていうことなんだろう。
いずれにしても、この集落のカルトさは、集落のみで完結しているからカルトというだけで、我々の常識のほうが彼らにとってはカルトでもあるわけだから、同じ穴の貉。
最後に、ダニーが椅子取りゲームみたいな踊りで女王になっていくとき、彼女は自分の抱えるトラウマ的心の闇や不安や恐怖やらから解放されていったように見える。
それを見るに、踊りの持つ力ってのはすごいなと思う。人間は原始の頃から火を囲んで踊りを踊ってきた。それは儀式的な祝祭でありつつ、娯楽的要素も含んでいたであろう。
踊って踊って踊り狂うと、人はある種のトリップ状態になるケースがあるらしい。これはクラブで酒飲みながら踊っても同じことだ。踊りは別の世界への接続に向けた儀式とも言える。
踊りは音楽と同じく人間が発明したアートの初期のものとも考えられて、その辺はちょっと勉強すると面白そうだななんて感じたが、だいぶ話がズレた。
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