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映画 すばらしき世界 ネタバレ感想 長澤まさみの啖呵がよい

すばらしき世界
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すばらしき世界

―2021年公開 日 126分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:直木賞作家・佐木隆三の小説『身分帳』を原案として、「永い言い訳」の西川美和が舞台を現代に移し映画化。13年の刑期を終えた三上は、保護司の助けを借りて自立を目指していた。そこに、彼の姿を面白おかしく番組にしようとするテレビマンが近づいてくる。出演は、「孤狼の血」の役所広司、「静かな雨」の仲野太賀、「コンフィデンスマンJP プリンセス編」の長澤まさみ、「家族はつらいよ」シリーズの橋爪功、「曽根崎心中」の梶芽衣子。第45回トロント国際映画祭正式出品作品。(KINENOTE)

あらすじ:13年の刑期を終え、目まぐるしく変化する想像もつかない世界に出てきた元・殺人犯の三上(役所広司)は、保護司の庄司夫妻(橋爪功・梶芽衣子)の助けを借りて自立を目指していた。三上が生き別れた母親を探していると、テレビディレクター(仲野太賀)とプロデューサー(長澤まさみ)が接触してくる。彼らの本当の目的は、社会に適用しようと足掻く三上の姿を面白おかしく番組にすることだった。まっすぐ過ぎるが故にトラブルが絶えない三上だったが、次第に彼が持つ無垢な心に感化された人々が集まってきて……。(KINENOTE)

監督・脚本:西川美和
原案:佐木隆三:(「身分帳」(講談社文庫刊))
出演:役所広司/仲野太賀/橋爪功/梶芽衣子/六角精児/北村有起哉/長澤まさみ/安田成美/白竜/キムラ緑子

ネタバレ感想

けっこう面白そうだったので期待して劇場で鑑賞してきた。出所したヤクザが足を洗って社会復帰するために苦労する姿が描かれるーーという内容だけ抽出すると、現在(2021年2月25日時点)も公開中の『家族とヤクザ』に似ていると言えば似てる。

大きく違うところは、こちらの主人公、三上は仕方なくではなく、積極的に一般社会で働く道を探ろうとするところか。しかし、一度レールを外れた人間が再起を図るのに際し、厳しい社会常識やルールがあると言われることもある日本社会。更生は容易ではない。

しかも三上は、そもそもキレやすい性格で、人の道に外れる行いをする奴に対しては容赦なく暴力をふるってしまうのだ。であるから、いわゆる堅気の世界で生きていくのは性格そのものを何とか矯正する必要がある。その中で、いろいろな人の助言や助けを得たり、そうした人たちと軋轢を生じさせたりする中で、彼のまっすぐな性格に惹かれていく人間が出てくる。

特にもう一人の主人公とも言えそうな小説家志望のテレビディレクターは当初、金のために三上を撮影する役を受けたものの、彼に正面から向き合うようになっていき、友情に似たようなものが芽生えて親密な関係を築くようになっていく。

元ヤクザでありながら、弱者をいじめるようなことをしている人間に対して容赦なく詰め寄っていく三上の姿は、ある意味で普通の生活をしている人間たちが、そうした事柄について見て見ぬふりの事なかれ主義になってしまっていることを暗に風刺しているようなふしもあり、実際にそれは鑑賞者たる俺も身につまされる部分があった。

また、ある意味で考えると、長澤まさみ演じたプロデューサーは視聴率のためと割り切って三上を撮影した番組をつくろうとするあたり、ヤクザよりもヤクザっぽいことをしている人だ。しかし、そのキャラにけっこう魅力があった。

例えば、路上でチンピラと喧嘩をしてる三上に対して撮影を続けるでもなければ、喧嘩を止めることもせずにその場を去ったディレクターを追いかけまわし、捕まえて後、彼に対して「喧嘩を止めに行かずに、カメラも回さず逃げてったテメェがどっちつかずで一番のクズ人間だ」みたいな啖呵を切るシーン。これは非常にカッコいいせりふで、そして、確かにその通りだと思わせる。

こんな言葉を言われちゃったら普通は立場ないんだけど、相手が長澤まさみだけに、俺だったらもしかしたら、キュンキュンしてしまって、もっと罵倒してほしくなっちゃうかもと、変態的なことを思った(笑)。

ともかく、三上は最終的になんとか介護施設でパート仕事をゲットし、そこで頑張るようになる。その職場の同僚で障害を抱える青年が、他のスタッフからいじめを受けていることを知るものの、いつもの怒りの虫を抑え、いじめ相手への暴力による修正行為を我慢するのだ。

これは彼にとっての成長を示すシーンではある。だけど、これが一般社会で生きるための処世術であると考えると、三上は大切な何かを封印しているのであり、このシーンはやはり、風刺と観るべきなのかもしれない。

暴力で片付けなくても、何らかの方法でその青年を守るような言動はできたと思うんだが、この作品ではそういう展開を見せずに、三上が怒りを抑え切ったところで別のシーンに移っていく。もし仮に、彼がその怒りをより良い方向に向けて動ける人間になったことを描けば、三上という人間の成長を色濃く示すことができたんではないかと思うので、その辺はなんかもったいなく思った。

そしてラスト、彼は自宅で洗濯物を取り込み中に、持病により死んでしまう。どんなにたくさんの人の手助けを受けても、人間、死ぬときは一人だ。

ということで、期待したほどには自分の胸をえぐってくる何かがあるわけではなかった。よく考えてみると、この監督の作品は、俺にとってはいつもそんな感じなのである。普通に楽しめはするんだけど。

映画『永い言い訳』ネタバレ感想 予定調和っぽくも感じる
昨年劇場に行く機会がなかったので、レンタルで鑑賞。西川美和監督の作品は『ゆれる』以来かな。こっちのほうが面白いと思います。本木雅弘はいつ観てもカッコいいでありますな。内容は分かりやすいので、あとは観た人それぞれがどう感じるかですね。ネタバレあり。 ― 2016年 日 123分―
映画 ヤクザと家族 The Family ネタバレ感想
シャブ中の父親の死後、荒れた生活をしていた不良が、偶然出会ったヤクザの親分に父性を感じて忠誠を誓い、裏社会で生きていくことを決める。親分のためなら何でもやったると鼻息荒く奮闘していたが、ある事件をきっかけにムショでお勤めすることになり、14年後に出所してみたらさらに不幸が待っていたという話。

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