ファナティック ハリウッドの狂愛者
ロサンゼルスで大道芸人みたいな仕事をしている映画大好き人間のムース=トラボルタが、大ファンの役者のサイン会に行ったら予想外に冷たい扱いを受けたので逆恨みして役者をストーカーしちゃう話。話自体は全然面白くないけど、映画オタクを演じたトラボルタの存在感が笑える。ネタバレあり。
―2020年公開 米 88分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:J・トラボルタが狂気に満ちたストーカーに扮したスリラー。ハリウッド大通りのパフォーマーのムースは、人気俳優ハンター・ダンバーの熱狂的なファン。しかし、念願かなって参加したサイン会で冷たくあしらわれたことから、ムースの愛情は次第に歪んでいく。出演は、「ファイナル・デスティネーション」のデヴォン・サワ、ドラマ『デグラッシ:ネクスト・クラス』のアナ・ゴーリャ。監督は、「奇跡のロングショット」のフレッド・ダースト。(KINENOTE)
あらすじ:ハリウッド大通りでパフォーマーをしながら日銭を稼ぐムース(ジョン・トラボルタ)は大の映画オタクで、人気俳優ハンター・ダンバー(デヴォン・サワ)の熱狂的なファン。いつか彼からサインをもらうことを夢見てさえない毎日を送っていたが、ついに念願かなってサイン会に参加することに。ところが、そこで思いがけず冷たくあしらわれたことから、ムースの愛情は次第に歪んでいく。ダンバーの豪邸を突き止めたムースは、何度となく接触を試みるが、気味悪がられて激しく拒絶される。ムースの行動はエスカレートしていき、やがて凄惨な悲劇へと発展する……。(KINENOTE)
監督:フレッド・ダースト
出演:ジョン・トラボルタ/デヴォン・サワ/アナ・ゴーリャ/ジェイコブ・グロドニック/ジェームズ・パクストン
ネタバレ感想
なんなんこれ? 結末に至るまでに楽しめるのは、ただただ、ダサい恰好をしたトラボルタの存在のみ。
大ファンのハンターが劇中で着用したベストを購入し、そいつを着て嬉しそうに原付を乗り回すトラボルタ。
ハンターにサインがもらいたくてもらいたくて仕方がなくて、相手にとって迷惑だろうなという想像ができずに暴走しちゃうトラボルタ。
そのサインを邪険に断られた結果、おかしくなっちゃって、ハンターの家に押しかけちゃうトラボルタ。
それがハンターにバレて門前払い食らうトラボルタ。
それでもめげずに弁解のファンレターを書いてハンターの屋敷に置いてったけど、それを読んでもらえたか気になっちゃって、ハンターの家に不法侵入しちゃうトラボルタ。
そしたらハンターのメイドさんがそのレターを読んじゃいそうになって、止めようとしたら図らずもメイドさんを殺害しちゃうトラボルタ。
動揺してたくせに、殺人のことは忘れてしまって、再びハンター宅に潜入するトラボルタ。
ハンターの歯磨きで、自分の舌を磨くトラボルタ。
ハンターの耳のにおいをかぐトラボルタ。
もうメチャクチャ。
トラボルタ演じるムースは幼少期に母子家庭だったようで、その母親が育児放棄してる人だったようで、ムースは映画の中に生きることで人生の喜びを得ていた。その辺はかなり同情の余地があるし、彼は犯罪には手を染めないで生きようとする、いたって真面目な人間のように見える描写がある。彼を理解して付き合いをしてくれる人間もそれなりにいるようで、そういう意味では善人なのだ。
しかし、どう見たって彼はまともじゃないところもあって、それが言動の端々に見えている。本当に、ああ、こういう人いるなって感じのふるまいなのだ。もちろん、自分の身近に彼みたいな人物はいないので、こういう他人、見たことあるなって言い方のほうが正しいのかもしれない。
と考えると、そういう類型的な人物造詣がこの映画ではきちんとできている。その一方、類型的なその人物に女性の友達がいたり、理解してくれている知人がいるのがあまりリアリティを感じないのだが、それはある意味では、鑑賞している俺が、実際につきあいのない、その類型的な人物を、類型的であるがゆえの推測というかほぼ独断で、ああいう人間には友人、ましてや親身になって接してくれる異性なんていないだろうなと感じていることを皮肉っているのかもしらぬ。
とはいえ、ムースはストーカー扱いされることを嫌っているのに、やってることはどう見てもストーカー。
だが、今作のストーカー相手が思いのほかファン思いではないくず人間で、ムースの常軌を逸した行為に対して、反撃に出てしまうというラストの展開には、なかなか笑わせてもらった。
にしても、さすがにメイドさんの死体はもうちょっと早く見つけられそうなもんだけど。しかも、なぜか警察が勘違いしてとりあえず彼をメイド殺害の容疑者として逮捕していくところが笑える。
対するムースは負傷を負ったとはいえ、罪に問われることなく、しかも、絶交したと思った女友達が助けてくれるという謎展開は謎でしかないのだが、この作品はいったいなんなんだろうか、と考える必要もなく、ともかくこんなトラボルタは初めて見たし、それが見られただけでお腹いっぱいーーと思える貴重な作品だ。しかし、けっして面白い内容ではない。
コメント