コロニア
実話を基にした作品だそうです。物語の背景を知っていると違和感なく鑑賞できるけども、コロニア・ディグニダなる施設に対する前知識がなかったので、よくわからん部分も多かった。いずれにしても、こういう集団が実在してたってことが恐ろしいのである。ネタバレなし。
―2015年公開 独・仏・ル 110分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:南米チリの独裁政権下で起きた史実を基に「ハリー・ポッター」シリーズのエマ・ワトソン主演で映画化。キャビンアテンダントのレナは、クーデターに巻き込まれた恋人を救出するため、ナチス残党と結びつき拷問施設となった“コロニア・ディグニダ”に潜入する。共演は「ラッシュ プライドと友情」のダニエル・ブリュール、「ジョン・ウィック」のミカエル・ニクビスト。監督は「ジョン・ラーベ 南京のシンドラー」のフロリアン・ガレンベルガー。
あらすじ:1973年9月11日。ドイツのキャビンアテンダント・レナ(エマ・ワトソン)は、フライトでチリを訪れ、ジャーナリストの恋人ダニエル(ダニエル・ブリュール)と束の間の逢瀬を楽しんでいた。だが突如チリ軍部によるクーデターが発生。ダニエルは反体制勢力として連行されてしまう。レナは、彼が慈善団体施設“コロニア・ディグニダ”に送られたことをつきとめるが、そこは“教皇”と呼ばれる元ナチス党員パウル・シェーファー(ミカエル・ニクビスト)が独裁政権と結びつき、神の名の下に暴力で住人を支配する脱出不可能な場所だった。異国の地で誰の助けも得ることができないレナはダニエルを助け出すため、ひとりコロニアに潜入することを決意するが……。
監督:フロリアン・ガレンベルガー
出演:エマ・ワトソン/ダニエル・ブリュール
実話を基にしたフィクション
タグはノンフィクション入れているけど、実話を基にしたフィクションです。俺が好感を持ったエマ・ワトソン扮するフライトアテンダントの娘=レナちゃんは実在の人物ではないようだ。
そのフィクション的なところでいうと、主人公のレナは好感度の高い女性ですな。恋人のダニエルは政治的な活動に加担してて、お互い好き合っているものの、将来の約束はできないから、その場を楽しんじゃおう的なカップルとして冒頭は描かれる。
でも、物語が動き始めた直後、レナは人生を捨てる覚悟がないとできないような行動に身を移す。それはひとえに、拉致されたダニエル=恋人を助けたかったからだ。てなわけで、カルト集団のコミュニティに潜入後、ダニエルと邂逅したレナが、彼と手を握りあうシーンは、とてもグッとくる描写になっている。男の立場からしたら、あんな女性がいたら、そらまいっちゃうわねぇ。
きちんと調べてないんだけども、レナ役のモデルになったのは、コロニアの近隣に住む少年だったようだ。このカルト集団の親玉は少年に性的暴行を加えてたらしいので、コミュニティの中にいたその少年がそこから脱出するのが本当の話のようだ。それを基にしたフィクションの本作は、レナという女性がそれと似た役割を担う。鑑賞している俺はレナの行動力とか恋人に対する思いの深さにグッときたのであるが、なんだよ、そこはフィクションなんかい! と思ってしまったのである。
鑑賞後に調べてわかるって、作品としてどうなのか
てなわけで、チリにこうしたカルト集団の施設あって、それが政治の世界にも深い楔を打ち込んでいたことを始めて知った。作中ではあまり言及されてないけども、この施設のリーダーはドイツ人でナチスの党員だったらしい。どっちかというと、カルト教団の教祖みたいな感じに描写されていたので、鑑賞後に調べるまで、ナチスが絡んでいる話だと全然わからなかった。
なので、冒頭、政治犯的な容疑で軍に拘束されたレナの恋人が、なんでこんな施設に収監されているのか、理解できなかったのである。そんで、何でこんなカルトな奴らが軍と関係があるのかもサッパリ。
あとから調べて補完したら、なるほどそういうことかと思ったのだが、ちょっと不親切な気も。もしかして、あまり集中して鑑賞してなかった冒頭に、きちんと背景が描かれていたのだろうか。あと、チリから脱出するシーン。あんな無理やり飛行機飛ばしちゃっていいんだろうか(笑)。ただ、協力者が外にもたくさんいるのかなり恐ろしいことではある。
集団の中の異物でいることに耐えられるか
いずれにしても、政教分離って言葉ではよく言われているけども、実はどの国においても宗教的な何かが政治の裏側でうごめいていることはどこでもあるみたい。どうしてそういうことが起こってしまうのかってのは、人間の業の深さみたいのを感じて興味深い。
あと、こういう集団の中で生かされている人や、自ら所属しちゃう人に対して、外側から見ている俺は理解できないところがたくさんあるんだけども、抗いがたい力にさらされると、自分自身も無力になっちゃって、施設内の人みたくなってしまうんだろう思われた。異物でいるよりは郷に従うほうが楽だからね。ということで、さして面白くはないけども、自分の知的好奇心に広がりをもたらせてくれる作品でした。
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