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映画 ギャングスターナンバー1 ネタバレ感想 主体性のない名もなき男

ギャングスタ―ナンバーワン
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ギャングスター・ナンバー1

たまに鑑賞したくなる異色のギャング作品。何が異色かというと、主人公の身の滅ぼし方が、他のギャング映画とは異なるところだ。ネタバレあり。

―2003年公開 英 103分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:ボスに憧れたギャングスターの30年にも及ぶ愛憎劇。監督は「アシッド ハウス」のポール・マクギガン。撮影は「フェイク」のピーター・ソーヴァ。音楽は「キス★キス★バン★バン」のジョン・ダンクワースと、「花を摘む少女と虫を殺す少女」のサイモン・フィッシャー・ターナー。美術は「アシッド ハウス」のリチャード・ブリッジランド。衣裳は「キャラクター 孤独な人の肖像」のジェイニー・テミメ。出演は「キス★キス★バン★バン」のポール・ベタニー、「カリギュラ」のマルコム・マクダウェル、「シャンドライの恋」のデイヴィッド・シューリス、「仮面令嬢」のサフロン・バロウズ、「スリーピー・ホロウ」のジェミー・フォアマンほか。アメリカン・フィルム・インスティテュート最優秀視覚効果賞受賞。(KINENOTE)

あらすじ:1968年のロンドン。ギャングたちがしのぎを削る時代、ダンディなフレディ・メイズ(デイヴィッド・シューリス)がその頂点に君臨していた。彼は、若い駆け出しのギャングスター(ポール・ベタニー)にとって、憧れの対象。彼はフレディに取り入ることに成功し、右腕と呼ばれるまでになる。だがそこに、カレン(サフロン・バロウズ)という女が現われ、フレディが彼女に惹かれるようになると、二人の関係は崩れ始める。ギャングスターの純粋な憧れの感情は、嫉妬という狂気に形を変えていった。そしてギャングスターは、フレディに罪を着せ、刑務所送りにすることで、新たなトップの座を手に入れる。そして30年後、フレディが出所してくる。しかしフレディはギャングを卒業しており、喉を切られたものの生き延びたカレンとの愛を貫き、結婚。彼のいない間、頂点を極めながらも人を信用しない人生を送ってきた老練なギャングスター(マルコム・マクダウェル)は、フレディの落ち着いた態度に動揺し、激情。ビルの屋上から投身自殺するのだった。(KINENOTE)

監督:ポール・マクギガン
出演:ポール・ベタニー/マルコム・マクダウェル/デイヴィッド・シューリス/サフロン・バロウズ/ジャミー・フォアマン

ネタバレ感想

俺は犯罪組織を描いた作品が好きなので、この手の映画をよく鑑賞する。で、冒頭に書いたようになぜこの作品が異色なのかというと、通常の犯罪組織を描いた映画は、その組織が崩壊するきっかけが、家族との血縁を大事にしすぎたor信頼しすぎたとか、友情にこだわりすぎたとか、愛する人ができちゃったとか、まぁともかく、他人と絡んだことに起因しているのである。ーーというような話の詳細は下記でしたので、興味があれば。

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雑談 バイオレンス映画、犯罪映画が好きだ。なぜなのか
バイオレンス、犯罪映画が好き! 3つの理由がある。要約すれば悪に対する憧れであろう。善悪の基準を介入させずに生きられるのが悪人だ。俺は社会から逸脱して善悪の彼岸に生きたい。しかし善悪を超えた言葉を獲得できないから無理だ。そういうお話。

そうした作品とは異なり、今作の主人公であるギャングスターは、他人との関わりが破滅を導いたといえば確かにそうなのだが、他人との関わりがなかった人間だったことが、原因なのである。それが原因で、自ら命を絶つという異色の自爆さ加減が、他の作品とは異なる部分なのだ。そして、そこがこの作品の面白さにもなっている。

ギャングスター(ちゃんとした名前がないのが興味深い)は、暗黒街の貴公子と呼ばれたフレディに憧れ、彼のようになりたいと思っていた。だが、彼はフレディではないので、地位や金銭は彼を凌駕するものを手にしても、当然、フレディのようにはなれない。女性の扱いも彼ほどには上手ではないし、自己表現が下手というか、できないのか、ともかく他人と仲良くなることが下手らしい。

しかも、憧れていたフレディが女にうつつを抜かし始めて、嫉妬しちゃい始めてからは、フレディを嵌めて自分がナンバーワンになることを決めるのだ。で、それがまんまと成功。彼はその後、フレディの時代とは比べ物にならないくらいに組織を大きくする。

だが、彼には心を許して話せるような相手はいない。そういう相手がいないままにあの老人になるまで平然と生きていられるってけっこうすごいことだ。よく孤独死しないもんである(笑)。けっきょく彼は、娑婆に出てきたフレディを無理やり呼び出し、彼から復讐の銃弾を浴びることでしか自分の生きてきた証の立てようがなくなってしまうのだ。しかし、フレディは彼を撃たない。あの選択は、むしろギャングスターに対する大きな復讐になっているようにも思える。

いずれにしても、ギャングスターはフレディに憧れ、それを超えること以上には人生の目的がなく、常にフレディという比較対象がない限り、自分のやるべきことを考えられなかった人間なのである。要するに主体性がないのである。

あれだけの老齢になってまでそれがない人生を送り、自分に主体性がないことにあの歳で気付いてしまったら、生きる理由なんて何もなくなってしまうものかもしれない。繰り返しになるが、だからこそ彼はフレディに射殺してもらいたかったのだ。そうされることでしか、彼は自分の生きてきた人生を肯定する術を知らなかったのだろうから。

ポール・ベタニーの狂気溢れる演技と、役者たちのスーツの着こなしもかっこよくて見事な面白映画なのでオススメ。音楽も良いです。

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