ギャングース
―2018年公開 日 120分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:肥谷圭介・鈴木大介による同名コミックスを「ビジランテ」の入江悠監督が実写映画化。青春期を少年院で過ごしたサイケ、カズキ、タケオ。社会に見放された3人が生き抜くためにつかんだ仕事は、犯罪者だけをターゲットにしたタタキ(窃盗・強盗)稼業だった。出演は「世界でいちばん長い写真」の高杉真宙、「火花」の加藤諒、「勝手にふるえてろ」の渡辺大知。脚本を、入江悠と「森山中教習所」の和田清人が担当。音楽は「終わった人」の海田庄吾。(KINENOTE)
あらすじ:親から虐待され、ろくに学校にも行けず、青春期を少年院で過ごしたサイケ(高杉真宙)、カズキ(加藤諒)、タケオ(渡辺大知)。社会に見放された3人が生き抜くためにつかんだ仕事は、犯罪者だけをターゲットにした“タタキ”稼業だった。情報収集、作戦立案担当のサイケ。工具に関する秀でた見識を持つカズキ。そして、車両担当のタケオ。彼らは、振り込め詐欺や窃盗、ドラッグの密売など裏稼業のアガリ(収益金)を狙う窃盗団を結成する。そんなある日、仕事の最中に偶然にも振り込め詐欺のアガリの隠し場所を知った3人。それは、ヤクザ組織に属さない“半グレ”系アウトローによる犯罪営利組織カンパニーとして台頭する「六龍天」のものだった。組織に身元がバレないよう、慎重にタタキを繰り返す3人だったが、あるきっかけから彼らの身元が「六龍天」に知られ、絶体絶命の危機に追い込まれてしまう……。(KINENOTE)
監督:入江悠
原作:肥谷圭介・鈴木大介:(『ギャングース』(講談社))
出演:高杉真宙/加藤諒/渡辺大知/金子ノブアキ/篠田麻里子/林遣都
ネタバレ感想
今作観て思ったのは、入江悠監督は地方都市での若者の生き方や、二極化により底辺の生活をせざるを得なくなっている若者たちなど、格差社会の進展による日本社会の闇の部分を描くことをテーマとしているみたいということだ。
同監督の『サイタマノラッパー』シリーズには上記のような闇の部分はさほど色濃くないが、描いているのは地方都市の若者の姿。2018年公開の『ビジランテ』は主要人物たちこそ貧困にあえいでいるわけではないが、移民たちとの確執なども含め、地方都市に生きることの閉そく感のようなものを感じさせる内容であった。
で、今作は住所不定、身分証すら持たない少年院あがりの少年たちが主人公ということで、まさに底辺。登場人物らはその底辺から這い出そうと必死こいてもがく話なんである。しかもこの作品は、現実の社会で裏社会や貧困問題を取材するルポライターの取材内容をもとに制作された漫画が原作らしい。つまり、この作品の中で描かれるさまざまなことは、現実の世界で起きている俺らの日常の地続きの世界の出来事ということだ。もちろん、すべてノンフィクションではないにしても。
にしても、この作品で描かれているようなことが、世の中にリアルで起きているということが、恐ろしい。作品内で描かれるような暮らしをしている少年・少女がこの先増え続けたら、日本の治安はかなり悪化するだろうと思うからだ。
で、その懸念を解消するためには、親が子どもをきちんと育てられる社会をつくる必要がある。今の日本は、そういう状況ではないのだ。こんな状況に陥ったのは、いつの時代以来なのか。それとも俺が知らなかっただけで、昔からそうなのか。いずれにしても、現実に格差は広がり続けており、それを是正する気が政府にあるとは思えない。ではどうすればいいのか。正直、俺にはよくわからないのである。
作品の序盤で、加藤という男が振り込め詐欺を事業とする会社の社員たちに述べる演説。あれはなかなかに説得力がある。振り込め詐欺をすることが良しとは当然思わないものの、タンス預金が世の中に出回っていないのは事実であろうし、作中の社員たちほどに若くはない俺にしたって、将来の金は自分で何とかしなければならない状況だ。
何とかするしかないのだ。みんな、自分で何とかするしかないのだ。一部の人間だけが、なんとかしなくても甘い汁だけ吸って生き続けられる世の中になっている。それが資本主義の世の中なのである。その格差が昔以上に先鋭化しているように感じられるのが今の時代であり、この先も現状はよくならず、さらに悪いほうに流れていくだろう。
ところどころ、漫画的なベタな演出とか笑えないギャグがあったけども、その辺は好みの問題。なかなか楽しめるし考えちゃう内容でした。
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