暁に祈れ
ベストセラーになった小説を映画化した作品。タイの刑務所に収監された元ボクサーが、ムエタイと出会ったことで更生していく様が描かれる。
―2018年公開 英=仏 117分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:世界的ベストセラーとなった英国人ボクサー、ビリー・ムーアの自伝小説を映画化。人生の再スタートを切るため、タイに渡ったビリー・ムーアは、麻薬に手を出したことから、刑務所に送られる。地獄のような日々の中、囚人たちのムエタイチームと出会うが……。出演は『ピーキー・ブラインダーズ』などで注目を集める若手俳優ビリー・ムーア。監督は「ジョニー・マッド・ドッグ」のジャン=ステファーヌ・ソヴェール。(KINENOTE)
あらすじ:英国人ボクサーのビリー・ムーア(ジョー・コール)は、人生の再スタートを切ろうと、タイを訪れる。しかし、麻薬に手を出した彼は目標を見失い、闇社会で行われるボクシングの試合に出場するように。ファイトマネーは、すべてヘロインとドラッグ“ヤーバー”に注ぎ込む自堕落な日々。そんな暮らしは、警察に逮捕され、チェンマイの刑務所に収監される形で終わりを告げる。言葉も分からず、頼れる者もいない。囚人たちが溢れる床で眠り、看守からは動物のように追い立てられる。やがて、喧嘩に巻き込まれたビリーは、独房に隔離された後、所内で最も凶悪な囚人たちが集う大部屋に送られる。そこは、レイプや殺人が横行する生き地獄。弱い者はたちまち他の囚人の餌食となる運命にあった。何とかそこを抜け出そうとするビリーだったが、看守からヘロインを譲り受けたことをきっかけに、再び独房へ。希望を失いかけたビリーが格子越しに目にしたのは、ランニングに精を出す男たちの姿だった。他の囚人とはどこか違う雰囲気が漂うその男たちは、所内に設置されたムエタイチームの囚人選手だった。独房から出たビリーは、彼らの練習場を訪れ、チームに参加したいと訴える。追い返されながらも必死に食い下がり、何とか加入を認められたリーは、生まれ変わったように練習に打ち込む。次第にメンバーとも打ち解け、その技だけでなく、精神も学んだビリーは、ムエタイによって再生しようとしていた。レディーボーイのフェイム(ポンチャノック・マーブグラン)とひと時の恋に落ち、外国人選手として初めて刑務所内で行われる全国大会への出場も決定。だが、長年の不摂生が、その肉体を蝕んでいた。突然の吐血で大会出場が危ぶまれる中、牢名主のゲン(パンヤ・イムアンパイ)が借金取り立てに現れる。目当ては、ビリーのファイトマネー。戦わなければ命はない。ビリーは全てを賭けてリングに立つが……。(KINENOTE)
監督:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール
原作:ビリー・ムーア:(『A Prayer Before Dawn: My Nightmare in Thailand’s Prisons』)
出演:ジョー・コール/ポンチャノック・マブラン
ネタバレ感想
元ボクサーのビリーは、いろいろあってタイに流れ着いた。ドラッグをやりながら闇社会のムエタイ競技に参加していたが、ある日、自宅が警察のガサ入れにあって逮捕。刑務所にぶち込まれてまうのだ。
タイ人の囚人たちが収監されているそのムショは、大部屋で雑魚寝させるような劣悪な環境で、しかも、ビリーは言葉がわからないので、誰ともコミュニケーションが取れずに孤立している。だが、ムショ内のムエタイクラブの存在を知った彼は、紆余曲折ありながらもなんとかクラブに所属できるようになり、トレーニングに励む。そんな日々の中で、仏教に帰依しはじめたビリーは少しずつタイ人たちのコミュニティに溶け込みはじめる。
ある日、外国人選手として試合に臨むことになったビリー。このファイトに勝たないと、借金取りに殺されてしまう。クスリなどで体がボロボロながらも必死でトレーニングして、必死に戦ったビリーは、見事勝利を得る。ラスト、刑務所に面会に来たのは自分の父親であった。めでたしめでたしーーというのが超適当なあらすじ。
実話をもとにした作品ということで興味深く鑑賞したが、個人的に印象深ったのは、タイ人しかいない囚人部屋で、言葉を話せないビリーの恐怖感がとても伝わってきたところ。囚人たちはどいつもこいつも入れ墨まみれで、筋金入りのヤクザものだということがわかる(元囚人たちが演じているらしい)。そんな奴らが囁いたりわめいたりしているのに、自分には彼らが何を言っているのか理解できない。これは恐怖ですよ。いつ尻の穴をやられるかわからんし、殺されるかもわからんし、ともかく怖いだろうなと。
その他はどうかというと、過酷な環境でもがくビリーの奮闘が描かれるわけだが、ビリーのどうしようもなさにあまり感情移入できない部分もあって、そんなに楽しめなかったなぁ。ちなみに、レンタルしたDVDの字幕はムエタイのことを「ボクシング」って訳してて、でもビリーがやっているのはムエタイなので、その辺の訳の区別をきちんとしてほしかったなと思った。普通、日本人がボクシングという訳を見たら、キックを使わない競技のほうを連想しちゃうでしょ。実際俺はそうだったもん。
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