フェイス/オフ
―1998年公開 米 138分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:凶悪犯とFBI捜査官がお互いの顔を入れ替えて戦うという、異色の設定のアクション大作。監督は「男たちの挽歌」などで香港ノワールの一時代を築き、ハリウッドに渡ったジョン・ウー。「ブロークン・アロー」に続く本作は、荒唐無稽なアイディアを、ド派手な銃撃戦と抒情溢れる描写で見せ、「ヴァイオレンスの詩人」の異名をとる、彼の集大成とも言える仕上り。製作はデイヴィッド・パーマット、バリー・オズボーン、テレンス・チャン、クリストファー・ゴッドシック。製作総指揮は「ゴースト&ダークネス」の俳優マイケル・ダグラスと彼と共にダグラス-ルーサー・プロを設立したスティーヴン・ルーサー、「マイケル」のジョナサン・D・クレーンの共同。脚本は『ダークマン3』(V)のマイケル・コラーリーと「マスク」のマイク・ワーブ(共に共同製作も)。撮影は「ダイ・ハード2」「トゥー・デイズ」のオリヴァー・ウッド。音楽はTVシリーズなどの作曲で活躍するジョン・パウエルで、『オズの魔法使』が銃撃シーンで効果的に使用される。美術は「ヒート」のニール・スピザック。編集は「ザ・ファン」のクリスチャン・ワグナー。衣裳は「ゴースト・アンド・ダークネス」のエレン・ミロジニック。特殊メイクはケヴィン・イェイガー。内面的なひとり二役という難しい役柄に挑戦した主演のふたりには、「ブロークン・アロー」に続いてウーと組んだ「マイケル」のジョン・トラヴォルタと、「コン・エアー」のニコラス・ケイジ。共演は「クルーシブル」のジョアン・アレン、「バウンド」のジーナ・ガーション、舞台・TVで活躍するアレッサンドロ・ニボーロ、「ミセス・パーカー ジャズ・エイジの華」(出演)「ミルドレッド」(監督のみ)のニック・カサヴェテスほか。(KINENOTE)
あらすじ:FBI捜査官ショーン・アーチャー(ジョン・トラヴォルタ)は、凶悪なテロリスト、キャスター・トロイ(ニコラス・ケイジ)に、6年前、幼い息子マイケルを殺された。幾多の犠牲を払い、空港での大捕物の末、キャスターを逮捕したアーチャー。だが、キャスターは逮捕直前に、ロサンゼルスを壊滅させるほどの威力を持つ時限式細菌兵器爆弾を仕掛けていた。植物人間になったキャスターはもとより、彼の弟のポラックス(アレッサンドロ・ニボーロ)も兄以外の人間は信用せず、爆弾のありかを聞き出すことは出来ない。焦るショーンに極秘指令が下る。キャスターの顔の皮膚を移植して彼に成りすましポラックスに接近せよというのだ。ショーンは悩んだ末、家族にも明かすことのできないこの任務につくことを決意した。ウォルシュ博士(コーム・フィオレ)による手術を受け、刑務所に送り込まれたショーンは、何とかポラックスから爆弾の設置場所を聞き出すことに成功。ところが。キャスターが奇跡的に意識を回復。彼は手下を使ってウォルシュに残っていたショーンの顔を自分に移植させ、ウォルシュやショーンの上司のティト(ロバート・ウィズダム)はじめ、秘密を知る者を皆殺しにしてショーンに成りすました。彼はポラックスを釈放して自ら爆弾を解除、一躍ヒーローに。そんな夫の変化にとまどいながらもショーンの妻・イヴ(ジョアン・アレン)は彼を受け入れる。父親の豹変ぶりに反抗期の娘ジェイミー(ドミニク・スウェイン)は目を丸くした。一方事態を知り、哀しみと怒りで気も狂わんばかりのショーンは刑務所を脱獄、キャスターの恋人サシャ(ジーナ・ガーション)に接近。キャスターの姿のショーンに、幼い息子アダムを「あなたの子よ」と会わせるサシャ。そこをキャスター率いるかつての部下たちが急襲。激しい銃撃戦。サシャの兄ディートリヒ(ニック・カサヴェテス)はキャスターの銃弾に倒れ、ショーンはサシャとアダムを逃がす。お互いの顔をまとったふたりは鏡をはさんでついに対面。銃を構えて対峙するふたり。ショーンはキャスターの愛する弟ポラックスを殺した。キャスターはショーンを完全に抹殺することを決意。ショーンはかつてのわが家へ逃げ込んだ。怯えるイヴにふたりだけが知る想い出を語り、女医である彼女に血液型を鑑定させて自分こそが本物の夫なのだと納得させた。海辺の教会。ふたりの最後の戦いが始まった。戦いの中、サシャはアダムをショーンに託して死ぬ。モーターボートの大追跡に続く肉弾戦。死闘の末、ショーンはキャスターを倒した。かくして手術を受けて自分の顔を取り戻したショーンは、キャスターの遺児アダムを連れて、愛する妻子の待つわが家へと帰った。(KINENOTE)
監督:ジョン・ウー
出演:ジョン・トラヴォルタ/ニコラス・ケイジ/ジョアン・アレン/ジーナ・ガーション
ネタバレ感想
ジョン・ウー監督ハリウッド進出第二弾にて、同監督の最高峰の作品の一つ。前作の『ブロークンアロー』に引き続いてジョン・トラヴォルタ主演。さらには相手役を、この時期いろいろなアクション大作でヒットを出していたニコラス・ケイジが務めている。
学生時代に友だち何人かと一緒に鑑賞した懐かしい作品。互いの顔の皮膚を入れ替えちゃうとかいう、かなり無茶な感じのする設定だけども、アクション作品としてはかなり高水準な面白映画。ジョン・ウー作品の中でも最も有名かつ誰にでも楽しめる内容だと思う。
設定がぶっ飛んでいるけども、それを気にしなければストーリーもけっこうしっかりしているように感じる。ジョン・ウー作品なのにだ。どの辺がしっかりしているかというと、顔を入れ替えたニコラスケイジとトラヴォルタ、それぞれの立場が入れ替わったことによって、本来の生活とはまったく異なる環境にそれぞれがおかれるわけだが、そこできちんと人間ドラマが繰り広げられているところだ。そして、それが物語の結末にしっかりと影響してくるのである。
荒唐無稽な内容なのに、それぞれの描写に突っ込む気がしないところがすごい。例えば、名作にして傑作の『男たちの挽歌2』などは、アクションはすごいんだけど、ストーリー無茶苦茶だからね(笑)。
今作は、顔を入れ替えちゃうことによって粋な演出ができているところに感心しちゃう。例えば、キャスターとアーチャーが対面して撃ち合おうとする場面では、二人の眼前に鏡が現れる。そこで二人は、己の姿に銃を向けることになるわけだが、中身が違うので、鏡にうつる自分の姿は真に倒すべき相手なのである。観てない人にしか意味がわかんない適当な説明になっているが、あのシーンはいい。かっこいい。
さらにいいのは、この作品のニコラスケイジの顔芸がすごいところだ。どの作品でも顔芸すごいけど、なんというか、表情の演技だけで、キャスターに入れ替わったアーチャーの複雑な心情が伝わってくるのだ。どのシーンが特にそう思うかというと、刑務所で自分の顔を奪ったキャスタートロイと再会するところ。トラヴォルタもすごいけど、この作品は、とにかくニコラスの顔面芸がすごい。
で、肝心のアクションはどうかというと、そこは安定のジョン・ウーである。2丁拳銃はもちろん、横っ飛びしながらの銃撃、派手な爆発。楽しめます。
ということで繰り返しになるけど、ジョン・ウーのハリウッド進出作品の中だけでなく、彼の作品歴の中でも、上位に入る名作である。同監督作で他におすすめしたいのは、先ほども挙げた『男たちの挽歌』シリーズだ。もう一つ紹介するとしたら、『ワイルド・ブリッド』だろう。ハードボイルドアクションにして、友情物語でもある。内容はかなりハチャメチャで、監督のやりたいことが全部詰めこまれたように見える贅沢な一品だ(笑)。
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