エレクション 黒社会
ジョニー・トー監督アクション少なめのクライムサスペンス。香港のある犯罪組織は100年前の伝統を守って任期2年の会長選挙を行っている。で、その選挙を経て誰が会長になるのか。2人の候補は我こそが会長になるべきと、組織の面々を懐柔しようと試みる。しかし、彼らは犯罪組織。ボスに収まるためにはそれなりの闘争が必要なのであった。ネタバレあり。
―2007年公開 香 101分―
解説・スタッフとキャスト
解説:香港最大の裏組織で行われる会長選挙。候補者をめぐっての内部抗争をスリリングに描くアクション。監督は、「ザ・ミッション/非情の掟」「PTU」のジョニー・トー。主演は「PTU」「トゥームレイダー2」のサイモン・ヤムと、「愛人/ラマン」「美しい夜、残酷な朝」のレオン・カーファイ。(KINENOTE)
あらすじ:香港で最大の組織<和連勝会>では上級幹部によって新しい会長を選ぶ選挙が行われていた。今回の候補は二人。ロク(サイモン・ヤム)とディー(レオン・カーファイ)だ。選挙の裏ではさまざまな策略がめぐらされていた。そして選挙の結果、選ばれたのはロクだった。ディーは、この知らせを耳にするとすぐさま報復に出た。現会長のチョイガイに向かって、会長に選ばれたものだけが手にできる<竜頭棍>をロクに渡すな、と脅したのだ。言うなりになったチョイガイだったが、混乱を怖れ、<竜頭棍>を中国本土・広州に運ばせてしまう。その頃、香港警察のホイ警視は組織犯罪の名目で、<和連勝会>の幹部を片っ端から逮捕していく。幹部たちは塀の中でもおとなしくしているわけがなかった。ロクは部下のアウを使って密かに<竜頭棍>を探させ、ディー側も塀の外の妻が捜索に動き出していた。広州ではそれぞれのボスの命令で部下が<竜頭棍>を追いかけたが、お互いが敵なのか味方なのかさえ、わからない。ようやく<竜頭棍>は広州から香港まで到着する。そして怒り狂ったディーは、「自分の力で何とかしてみせる! “新和連勝会”だ!」と宣戦布告。そんな中、前会長のチョイガイが万策尽きてついに自殺してしまう。ロク会長時代の幕開けは目前となった。様々な謀略の結果<竜頭棍>はロクに渡った。そしてロクは最後に釈放されたディーの説得にあたることになった。ディーに協力を求めるロク。そして言った「次の会長選でお前を支持する」と。こうして、新生・<和連勝会>が誕生した。かつての対立を忘れたかのように、ディーもロクとがっちり手を組んで、縄張りを拡大するために協力を惜しまない。内部が安泰したことで、組織の基盤はゆるぎないものになったかに見えた。しかし運命の悲劇は、さらなる幕を開けようとしていた……。(KINENOTE)
監督:ジョニー・トー
脚本:ヤウ・ナイホイ/イップ・ティンシン
出演:サイモン・ヤム/レオン・カーファイ/ルイス・クー/チャン・カーファイ/チョン・シウファイ/ラム・シュー/ラム・カートン/ウォン・ティンラム/タム・ビンマン/マギー・シュウ/デイヴィッド・チャン
ネタバレ感想
この映画って、すごく面白いと思う。黒社会を描いた作品として非常に優秀だ。しかし、登場人物が多いので、香港映画およびジョニー・トー監督作品に触れていないと、役者さんたちの顔の見分けがつかず、初見では話が理解できないかもしれない。そこさえ乗り切れば、この手の黒社会を描いた作品好きな人には、とても楽しめると思うんだけど。
本作での一番の策士はサイモン・ヤム扮するロク親父なわけだが、次代を担う若者候補として、ルイス・クーやラム・カートンが扮するジミーやトンクンら、強者が登場する。彼らのことは次作で描かれるのでいいとして、本作でロクに対抗してくるのは、ディーである。
この、ディーを演じるレオン・カーフェイがとてもカッコイイ。悪者だ。そして直情径行型の武闘派バカだ。だが、そこがいい。彼のバカさが最終的にロクの異常性をわからせてくれる。
この作品に出てくる犯罪組織は、中国が女真族の清朝に支配された頃に結成された、秘密結社が源流になっているらしい。組織の初期の目的は、清朝を打倒して漢民族の明朝の復興を目指したものであると解説される。それが、現代においては黒社会の犯罪組織になってしまっている。だが、掟だけは生き残っている。ルールだけがだ。
ならずもののディーでさえも、一度はルールを逸脱しようとするものの、その掟を重んじる道を選ぶ。そして、最終的にはそれを超えようとしてロクに殺されることになるのだが、ともかく、掟なのだ。血を分け合う契りを交わす、掟の世界なのだ。
だがよく考えてみると、なぜ契りを交わしてまで掟を守ろうとしなくてはならないのか。それはひとえに、人間が他人を信用できない存在だからなのかもしれない。続編も併せての作品なので、2作まとめて鑑賞することをおすすめします。
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