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映画『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』ネタバレ感想と個人的考察

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
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雨の日は会えない、晴れた日は君を想う

原題のタイトルは『demolition』。解体する――という意味があるらしい。ジェイク・ギレンホール演じる主人公は、文字通り身の回りの家具やものを解体、破壊する。その爽快感の先には何があるのか。ネタバレあり。

―2017年公開 米 101分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:「ダラス・バイヤーズクラブ」のジャン=マルク・ヴァレ監督、「サウスポー」のジェイク・ギレンホール主演による人間ドラマ。妻の死後、自分の感情とうまく向き合えない哀しみを抱えるエリート銀行員ディヴィスは、ある日、身の回りのあらゆる物を壊し始め……。共演は「追憶の森」のナオミ・ワッツ、「8月の家族たち」のクリス・クーパー。脚本を「きみがくれた物語」のブライアン・サイプ、撮影を「ブルックリン」のイヴ・ベランジェが担当する。(KINENOTE)

あらすじ:ディヴィス(ジェイク・ギレンホール)は、出世コースに乗り、富も地位も手に入れたウォールストリートのエリート銀行員。高層タワーの上層階で、空虚な数字と向き合う味気ない日々を過ごしていた。そんな仕事へ向かういつもの朝、突然の交通事故で美しい妻が他界。ところがディヴィスは、一滴の涙も出ず、哀しみにさえ無感覚になっている自分に気付く。自分は妻のことを本当に愛していたのだろうか……。そんななか、「心の修理も車の修理の同じことだ。まず隅々まで点検して組み立て直すんだ」という義父(クリス・クーパー)の言葉が契機となり、ディヴィスは身の回りのあらゆるものを破壊し始める。会社のトイレ、パソコン、冷蔵庫、妻のドレッサー、そして自らの結婚生活の象徴である“家”さえも……。やがてディヴィスは妻が遺していったいくつものメモを見付けるのだが……。(KINENOTE)

監督:ジャン=マルク・ヴァレ
出演:ジェイク・ギレンホール/ナオミ・ワッツ/クリス・クーパー

感想

踊れ、壊せ、ファックと叫べ

なかなか素晴らしい映画と思います。個人的に好感度が高いのは、主人公と、ナオミ・ワッツ演じる女性の息子との交流。その中で描かれる家の壁や家具を破壊して楽しむシーン、銃を撃って遊ぶシーン、片方はドラムをたたき、片方は踊って遊ぶシーン。

人間は大人になっても、どこかで子どものように、ただ何かに埋没して生きる瞬間が必要なんだろう。それは大人が子どもと一緒に遊んであげるとかではなく、自分自身が子どもに戻って騒いで遊んで笑うという行為のことだ。

ネタバレ

ディヴィスは妻を愛していたようだ

妻を事故で亡くした金融業者で働くディヴィス(ジェイク)は事故後、妻のことを愛していなかった自分に気づく。本当に自分は妻を愛していなかったのかーー。どうやらそうみたい。でも、何か心にしこりというかわだかまりが残っている。

そんな日々の中で彼は、知りあった女性(ナオミ・ワッツ)とその息子との触れ合いなどを通して自分の心の奥底にある心を取り戻していく。その心とは厳密に言うと、妻への愛情だ。

彼はその気持ちを確かめられない事故後の日々の中で、自分の感情に正直に生きている。ただ、確かにあったような気がする妻への愛情だけを信じられない。なぜそうなってしまうのか。

彼は社畜の日々で心を失くしている

ラストまで鑑賞した人間がわかるのは、ディヴィスが日々のルーティンに埋没する日常の中で、人とのコミュニケーション、中でも妻とのそれを失くしていたこと。

日々をともに暮らしているのに、ただ一緒にいるだけの関係になっている夫婦には、心の交流がない。だから、妻は浮気した男と子どもをつくってしまっていたのだろう。

ポイントは、彼女がその子どもを中絶していたことだ。その行為はほめられたものではないが、常識的に解釈すると、彼女が中絶をしていたことは、夫の存在を大事に思っていたからではないか。夫たるディヴィスはそうした妻の日常を彼女の死後に知ることになる。なぜ生前に知られなかったのか。それは彼が社畜だったからだ(金銭的に恵まれてはいるが)。

そう考えるに、なぜ妻のお父さんたるディヴィスの義父=社長はあんな情報を転がしているだけの仕事について普通のメンタルでいられるのか謎すぎるが、ディヴィスはそういう人間ではなかったんだな。だから、いつの間にか心が空っぽになって、働くだけの機械になっていたのである。

ディヴィスは若い時、何も考えてなかったのだ

そもそもこのディヴィス、妻と結婚するまでの生活が、できるだけ楽して生きようというものだったみたいで、結婚したのもそんな理由だったようだ。つまり、その時点での彼は、何も考えずに流されて生きているだけでも、そこそこの成果を得られる毎日を過ごしていたんだろうと思わせる。

で、結婚生活を始めてみたら、義父の経営する会社の金融業ってやつに染まらざるをなくなり(それは結婚した責任もあるから)、必至こいて頭角を現そうとしているうちに、義父に認められ、それなりの地位を固めていく中で他人との関わり方を忘れ、関わりそのものを失くしてしまったのである。

てなことで、この作品のジェイクは、知らぬ間に人生を全部降りる前に、運よく浮上のきっかけを得たことで、後の人生を正直かつ自分の感情を大事にしながら楽しく生きるのだろう。奥さんは気の毒ではあるが、そんな話だったのである。とても面白い作品でした。

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