幸福都市
―2018年 台=中=米=仏 107分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:シティオブラストシングスは、2018年に公開されたHo Wi Ding監督のドラマ映画です。 (ウィキペディア英語)
あらすじ:高度な監視技術が発達した近未来から、過去へ。逆行する時間の中で語られるのは、許しがたい罪をおかした者たちへの復しゅうに燃える、ひとりの男の物語(Netflix)
監督:ホー・ウィディン
出演:リー・ホンチー/ホアン・ルー/ジャック・カオ
ネタバレ感想
ネットフリックスで前から気になっていたので鑑賞。時間が逆行するみたいな紹介だったので、時間移動ものなんかなと思ってたら全然違った(笑)。
物語は2040年代くらいの近未来の台湾から始まる。そこで過ごしている警備員のオッサンが、いろいろの罪を犯したり、過去、自分が思い入れのあった女にそっくりな娼婦と出会って戸惑う姿が描かれる。
で、このオッサンは最終的には死んじまうんだけど、では、彼がどうしてこのような結末に至ったのかを説明するために、社会人時代の話や、高校生時代、幼年期などの過去にさかのぼって物語が語られるのだ。
近未来の描写はそのうちこうなるんだろうなみたいな監視システムが働いてて、人々は手首のあたりにチップを埋められている。これにより、その人の行動履歴がほぼ把握できるようになってるみたい。
主人公は殺人をいくつも犯していたが、殺される側の体(というか目というか、チップ?)には、その一部始終が記録されていた。どういう仕組みなのかはよくわからん。その他、ホクロを除去する技術や、美容に役立つ薬(合法化はわからん)も出回っていて、それなりに老年でも若さを保つことができるらしい。であるから、成人年齢は24歳までに引き上げられている。
とかとか、他にも近未来的描写はあるんだけども、その辺の設定が必要だったかどうかは疑問。別に主人公が復讐を果たすシーンが現在で、それから彼の人生が過去に遡っていっても大して問題はなかったように思った。
ともかく、主人公は自分の初志を貫徹して死んだ(主に大臣殺し)。では、なぜ彼がそのような行為に及ぶことになったのかが、過去に遡るにつれてわかるようになっている。
それを観るにつけ、彼はこのような人生を歩まずにすんだのかもしれないというような思いも起こさせる。彼は母親と同じく、頑固な人間なのだ。であるから、人の過ちを容易には許すことができない。
それは自分を捨てた母親に対して、そして妻の浮気に対してなどである。母親を許すことができていれば、あの別れももう少しマシなものになったかもしれない。
妻の不貞を許さなかったのは、娘がいたからこそであるような説明があったのだが、娘が成人してからもなお、妻を許さないのであれば離婚すればいいのであり、殺す必要性がなかったようにも思われる。
大臣殺しについては、警官時代に酷い目にあっているので殺したくなる気持ちもわかる。妻と浮気してたくせに、悪びれもせず主人公に酷いことしてるからね。
まぁでも、30年も復讐心を持ち続けるってことは、それだけ恨みに思ってただろうし、その恨みの持続性はある意味、彼の頑固さに現れているともいえる。
ちなみに、彼の母親も頑固な人間で、裏社会に属していたようだが、筋を通してその情報を警察に流さない道を選んだことで死を迎えることになっているのであり、その死を迎えるような結末に至る前に、息子を捨てたことも裏社会で生きるための筋道だったんだろうと考えるに、似た者同士な親子でありますな。
ラスト、母子でブランコに乗る主人公の最も遠い過去の美しさは、彼が死ぬことになるディストピア的未来社会との対比として考えると、とても良いシーンだ。そういう意味では、来るべき監視社会への警鐘ともいえるし、風刺をこめたとも考えられそう。
内容そのものはさして面白くもないが、鑑賞して損はないと思える作品ではあった。
この作品は、ネットフリックスで鑑賞できます。
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