幻土
ラストまで鑑賞に耐え得る作品だとは思うけど、わけわからん内容である。こういうのって好みが分かれるだろうから、嫌いな人は大嫌いだろうね。俺はどっちでもイイかなぁという感じ。つまり、一言でいうなら普通。ネタバレあり。
―2018年製作 蘭・仏・新 95分―
あらすじ・スタッフとキャスト
あらすじ:シンガポールを舞台に、ある中国人移民労働者の失踪事件から明らかになっていく、 この男の過去とは?フィルム・ノワールと社会派リアリズムが奇跡的に融合した物語。
監督:ヨー・シュウホァ
主演:ピーター・ユー/リウ・シャオ/イーグオ・ユエ
ネタバレ感想
外国人労働者の多い国
話の大きな部分はシンガポール社会の暗部みたいなのを描いているように思われる。シンガポールは外国人労働者がものすごく多いらしい。で、こういう埋め立ての仕事とかをするために出稼ぎに来て、それなりに稼げたら故郷へ帰ると。だが、そうした雇われ人たちの待遇はさほど良くもないことがこの作品を観ているとよく分る。外国の労働者を安く使って国土を広げてうまい汁を吸えるのはお偉方だ。ラストのほうでそのようなセリフも出てくる。
各国の土で海を埋め立て
なんでもシンガポールは国土の25%が埋立地なんだとか。すごいなぁ。日本もけっこう埋め立てしてるけど、そこまでではないような。まぁ国土が狭いから海のほうに広げるしかないのはわかるんだけども。
で、その土はどこから持ってくるかというと、他の東南アジアの国々。マレーシア、ヴェトナム、インドネシア、カンボジアとからしい。だから作品内で、中国人労働者のワンとネカフェの店員の女の子が会話の中で、砂浜に来ればいろいろな国に行ったことになる――というような会話をしているのだ。
あれってすごくロマンチックでいいセリフだし見せどころのシーンでもあるけど、あの2人の、埋立地の外の土地へ行けないという閉塞感や寂寥感を現している部分でもあるので、なかなか切ない。でも、映画の中での印象に残るシーンの一つだ。
幻想的でよくわからん
このお話は先述した中国人労働者のワンと失踪した彼を捜すロク刑事が夢の中でリンクしていくような幻想的な内容になっている。物語中盤以降はワンが失踪したバングラディシュ人の行方を追うサスペンスフルな展開で、そこが一番面白いんだけども、それらの描写はリアルに起きた出来事なのかどうなのか、さっぱりわからない。
なぜなら、バングラディシュ人はその展開の中では殺されて砂浜に埋められていて、ワンもそれを発見したことにより襲われるわけだが、ロク刑事のパートでは、バングラディシュ人は生存して埋め立て地で働き続けているからだ。
そのほか、ネカフェでチャットをするワンとロクがなぜか会話ができたりとか、わけのわからんシーンも多く、けっきょくすべてが幻のような作品である。
作り手がこうした物語構造にした意図は俺にはようわからんが、幻土というタイトルがあらわすように、シンガポールという国は多くの人種が暮らすうえ、国外の土で成り立っている国家なのだと考えると、国そのものがマボロシみたいなもんで、一見して華やかなイメージのある社会ではあるが、この作品ではそういう描写はいっさいなく、無機質な埋立地だけを舞台にしたことで、シンガポールの闇を描いたんだろうと思われた。
工場地帯の夜を映すシーンなどはなかなかキレイではあるものの、そういう静かなシーンがかなり多いので、好みでない人には眠くなっちゃう作品だろう。
フルチンランニング
ちなみに、ロク刑事が自宅で真っ裸になってランニングマシンで走るシーンがある。あれは何なんだろうか。なぜチンポ丸出しであんなことをするのか理解に苦しむ(笑)。走るたびにチンポがブラブラしているように見えるあの描写を観たときに、俺はこの映画を理解するのは無理だろうと何となく悟ってしまった(笑)。
この作品はネットフリックスで鑑賞できます。
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