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映画 ブルーに生まれついて ネタバレ感想 ラストが切ない イーサンホーク主演のチェットベイカーの伝記

ブルーに生まれついて
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ブルーに生まれついて

―2016年公開 米=加=英 97分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:1950年代に興隆したウエストコースト・ジャズシーンで一時代を築いたトランペッター、チェット・ベイカーの転落と再生を綴る伝記ドラマ。一世を風靡したチェットは、やがて麻薬に溺れトラブルを頻発。どん底の彼を変えたのは、ある女性との出会いだった。短編「The Deaths of Chet Baker」(未)でチェットの死を追ったロバート・バドロー監督が、再び彼の人物像に迫る。主演は「6才のボクが、大人になるまで。」のイーサン・ホーク。6ヶ月に及びトランペットを集中トレーニングし撮影に臨んだ。また、名曲『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』の歌も披露する。劇場公開に先駆け、第28回東京国際映画祭コンペティション部門にて上映された(KINENOTE)。

あらすじ:1950年代。黒人アーティストが主流のモダン・ジャズ界において異端児だったチェット・ベイカーは、甘いマスクとソフトな声で多くのファンを熱狂させていたが、麻薬に溺れ転落。どん底に落ちたチェットは、自身の人生を描いた映画の出演である女性と出会い、再生を目指していく。(KINENOTE)

監督:ロバート・バドロー
出演:イーサン・ホーク/カルメン・イジョゴ/カラム・キース・レニー

ネタバレ感想

公開当時から気になってたけど未見だったのを、アマゾンプライムで見つけて鑑賞。全体的な雰囲気は渋い感じ。で、物語自体はラブロマンスと、一人の男の生きざまを描いたような内容だ。そして、音楽映画でもある。

まず、俺はジャズについては全然詳しくないが、20代の頃、Jazzy hiphopが好きだったこともあって、その影響でジャズも有名どころのアルバムを購入して聞いていた頃があった。まさしくこの映画に出てくるマイルスデイビスとか。あと、それとは関係ないけども、ここ2年くらい、アルトサックスを趣味で続けている。

で、そういう俺くらいの知識だと、今作の主人公であるチェット・ベイカーなる白人トランぺッターは全然知らなかったのである。でも、知らなくてもぜんぜん楽しめたし、とてもいい作品だなと思った。鑑賞後に、重くはないものの心に残る余韻がある。

本作の主人公であるチェットがああしてバートランドで演奏し、その後、ヨーロッパで活動できるようになったのは、献身的に支えてくれたジェーンのおかげだ。もちろん、自分の意志とトランペットへの情熱が枯れなかったことがあってこそなんだけど。それでも、ジェーンの存在がなければ、ああなる前に死んでたっておかしくない生き方をしていた奴なのだ。

彼は子どもみたいな男なんである。ジェーンの親父に結婚の許可を取りに行ったのに、嫌味を言われると我慢できずに悪態をつき、拗ねて海に入っちゃう(笑)。また、バートランドに一人で行くのを嫌がり、ジェーンに断られるとヤケをおこして物を破壊しちゃう。で、全編通してわかるのは、彼はジェーンが女優になりたいという目標について、さほど応援しているように見えないし、自分の都合を優先させているのである。しかしそれでも、ジェーンを愛してはいたようだが。

一方のジェーンは、彼の欠点をいろいろ知ってはいるものの、チェットのことを愛していたようだ。しかし、俺には彼女がチェットのどこがよくて好きなのかがあまり伝わってこなかった。そこで考えるに、チェットはきちんと愛情を言葉では伝えていた。あんまり行動が伴っているように見えなかったが。しかし、言葉というものは女性にとっては大事なようで、彼女は献身的にチェットを支えるのである。いや、すごい。マジで素晴らしい女性と思います。羨ましい(笑)。

ラスト。バートランド行きに彼女は最初、ついていかなかった。しかし、最終的にはチェットの演奏を聞きにやってくる。バートランドに到着したジェーンは、ディックから「オーディションだったのでは?」と聞かれて「日程が変更になった」と答えている。

でも本当にそうだろうか。俺は、彼女はオーディションを捨てて、演奏を聞きに来たんだと思った。しかし、演奏しているチェットはヘロインをやっていることがわかった。彼女はチェットとの関係が終わったことを悟り、、演奏中にネックレスを外して、それをチェットに渡してくれるようディックに頼む。そして、「私を哀れまないで」と去っていくのだ。

自分の夢を捨ててまで未来の旦那の演奏を見に来たのに、そいつは再びヘロインをやっていたのだ。それは、彼が彼女よりも自分自身の納得いく演奏をするため、彼女がいなくてもよいことを知らせることだったのである。

てなことで、切ないラストでありんすが、いい作品と思います。チェットは結局、音楽を選んだのである。そうしたかったのである。演奏前、ディックがヘロインを選ぶか、メタドンを選ぶか、チェットの意志に任せる選択をしている。ディックはヘロインなしでもチェットがいい音楽を演奏できるのを知っていたので、メタドンを選ばせたかったはずだ。しかし、ヘロインを選ぶ道も残してやる。無理やりメタドンを選ばせない判断が、素晴らしいと思った。ディックも何だかんだで、ジェーンにつぐチェットの理解者なのだ。何度も裏切られてきているのに。

チェットはしかし、そういう他人の思いを理解しているのか、していないのか、どちらにしても、音楽があればいいのである。他人なんて本当はいらないのだ。だが、ドラッグは必要だ。彼は最後まで、ドラッグ抜きで演奏することができない。つまり、単なる薬物依存者なのである。

才能がある人間が薬物を使用すると、その得意分野においてさらに力を発揮できるようだ。チェットはそういう意味で、薬物を欲していた。つまり、よりよい演奏のためだ。しかし、そうした全能感は主観的世界での出来事なので、薬物を摂取してない他人、要するに聴衆からして見れば、さして違いは分からないのではないか。

酔っ払っている時に素晴らしいアイデアというか、これまで考えもしなかったことが思い浮かんだと思って、嬉々としてメモっておいて、翌日読んでみたら大したことを書いてなかったという経験が俺にはしょっちゅうある(笑)。あれと大差ないんじゃないかね…全然違う?

まぁでも、天才というか、ある一芸に秀でた人が、性格破綻者だったり、鬱病みたいな気質の人だったり、ともかく他人とうまくやっていく、世間の常識と折り合いをつけて生きていくことができないというのはよく聞く話だ。

チェットはどちらかというと、そういうタイプのアーティストなんだろう。でも、まともな人間で天才的なアーティストもいると思うんだよなぁ。ともかく、自分の才能を信じられずに薬に頼っちゃっているようにしか見えなくて、ダセェなと思ってまう。

にしても、演奏前に、薬の選択を迫られるシーンはドキドキした。「メタドンを選ぶのだ! 選ぶのだチェット!」と心の中で応援しちゃったからね(笑)。

イーサンホークって、10代くらいの頃からいろいろな役をやってて、駄作にもいっぱい出てる作品を選ばない人だなって思ってるんだけど、やっぱりこういう陰がある人物や、はみ出し者などを演じている時がカッコいい。

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