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映画 毒戦 BELIEVER ネタバレ感想 ジョニートー監督作の韓国版リメイク

毒戦
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毒戦 BELIEVER

香港のジョニー・トー大先生の『ドラッグ・ウォー 毒戦』の韓国版リメイク作品。オリジナルの要素をつまみながらも独自の路線で突き進むクライムサスペンス。ネタバレあり。

―2019年公開 韓 124分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:ジョニー・トー監督の「ドラッグ・ウォー 毒戦」を韓国でリメイクしたアクション。麻薬王イ先生を長年追う麻薬取締官ウォンホ。ある日、麻薬製造工場が爆破され、唯一の生存者が発見される。ウォンホはその青年と手を組み、組織への潜入捜査に踏み切る。出演は、「お嬢さん」のチョ・ジヌン、「タクシー運転手 約束は海を越えて」のリュ・ジュンヨル、「ビューティー・インサイド」のキム・ジュヒョク、「ハイヒールの男」のチャ・スンウォン、ドラマ『ミセン-未生-』のパク・ヘジュン。監督は、「京城学校 消えた少女たち」のイ・ヘヨン。脚本は、「お嬢さん」のチョン・ソギョン。(KINENOTE)

あらすじ:巨大麻薬組織に君臨し、その悪名を轟かせている麻薬王イ先生だったが、本名も経歴も、顔さえ誰ひとり知る者はいない。組織壊滅のため長年イ先生を追う麻薬取締局のウォンホ刑事(チョ・ジヌン)も、いまだにその尻尾すら掴めていない。ある日、麻薬製造工場が爆破され、事故現場からラクと名乗る一人の生存者(リュ・ジュンヨル)が発見される。組織から見捨てられたその青年と手を組み、ウォンホ刑事は大胆かつ危険極まりない筋書きによる組織への潜入捜査を決意する。そこにいたのは、麻薬に魅入られた狂人たちだった……(KINENOTE)

監督:イ・ヘヨン
出演:チョ・ジヌン/リュ・ジュンヨル/キム・ジュヒョク/チャ・スンウォン

ネタバレ感想

『新しき世界』よりもヒット

韓国では2018年に公開されて、あの傑作『新しき世界』よりもヒットを記録したらしい。ということで日本公開を楽しみに待っていて、ようやく公開されたので鑑賞してきた。公開規模はそんなに大きくないので、同日に公開した『ジョーカー』とか『ジョン・ウィック』の陰に隠れちゃってる感あるけど、俺は迷わず今作を選んだわけだ。残りの二つも劇場で観たいけど。

まぁそれはどうでもいいとして、率直に感想を述べると、俺はオリジナルのほうが好きだな。それは俺がジョニトー大先生の作品が好きだからってのが大きい。独立した作品として観ると、本作もなかなか完成度が高い。

ドラッグ・ウォーとの比較

てなことで、少しオリジナルと比較すると、踏襲した要素は、主人公のウォノ刑事が、麻薬組織の重要人物に成りすまして捜査を進めるところ、あとは、その捜査の途中に麻薬を摂取したことによりオーバードース状態になり、氷風呂に浸かって一命をとりとめるところ。そして麻薬を精製する天才として聾唖の兄弟(本作では男と女のきょうだい)が登場するところ。あとは、敵組織のボスを摘発するにあたり、麻薬ディーラーみたいなことを生業にしている男と主人公の交流というか関わりが描かれるところーーなどが大きな部分か。

他にもちょこちょこと似たような設定はあるけども、ストーリーそのものは、中盤以降、まったく別物の展開になっていく。俺は予想として、BELIEVERなんてタイトルにもあるように、ウォノとその捜査に協力することになるラクが信頼し合う展開になっていくのかと思ったら、そうはならなかった。

ウォノはオリジナルと比較すると部下に対して情の厚さなども持っていて、その辺はオリジナルの冷徹刑事とは印象が異なる感じ。一方のウォノは何を考えているかよくわからない人形みたいな男でありながら、オリジナルよりも人に対して情があるような男として描かれる。

なので俺は、上述したように二人の関係が信頼で結ばれていきながら、ラストには友情が芽生えるようなウェットでハードボイルドな展開を予想していたんだけども、そうではなかった。

イ先生は誰か

この物語の最大の謎である麻薬組織のボス、イ先生が誰なのかーーその真相に迫るのが物語の軸なのだが、ラスト近くで、なんとラクがイ先生であることが判明するのだ。しかし、社会的にイ先生として公表され、罪に問われるのは、彼に成りすましていた海運会社の創業者の息子なのである。

つまり、この物語では、ウォノ刑事の正義を全うする姿勢は報われないのである。韓国社会でよく描かれる、権力者たる大企業の人間たちの腐敗ぶり、警察組織の事なかれ的な権威主義によって、真相が明るみに出ないのである。ウォノは職を辞して、それでも自分の信念に従ったのか、ラストの展開にあるようにラクの足取りを追っていく。

ラストはどうなった?

一方のラクは、麻薬によって両親をなくしており、育ての親は麻薬を精製する工場で働いており、自分自身も麻薬のディーラーというか、仲介人みたいな代理の仕事をしているのだ。そして、彼は物心ついて以降、ずっと「社会が腐っている」ことを知っており、何によって生きるべきかという指針がないように見え、寄る辺ない生き方をしている。しかし、裏ではイ先生として麻薬ビジネスを牛耳っているという矛盾した存在だ。自分の両親も育ての親も殺している麻薬の世界を操っているのである。その彼の心情は、作品の描写では俺には読み取れなかった。

彼は自分自身が何者なのか、アイデンティティを喪失しているようだ。逆に正義の心が実らなかったウォノ刑事も大きな喪失感を抱えている。だからラスト、彼はラクに「幸福だと思ったことはあるか」というようなことを聴くのである。おそらく、ラクにはなかった。対してウォノも部下たちに「お前たちは俺のように疲れるな」というようなことをいう。自分の信条に基づいた刑事生活について、彼自身も疲れ果て喪失感を覚えているのだ。

と考えると、ラストのあの銃声はお互いに自分を撃ち合って死んだということなのかもしれない。それを含めて考えるに、韓国社会ーーというか、資本主義が蔓延る世の中に対する怒りと、皮肉を込めた作品のように感じた(銃声一回なのにお互いを撃って自殺とかあるわけないだろ的な意見はあると思うが、俺がそう思ったという単なる感想です)。

ガンアクションはオリジナルのが良い

てな適当な解釈をしてみると、オリジナルよりも奥深さを感じるものの、俺が物足りないと思ったのは、ガンアクションシーンの見せ場が少ないところだろうか。オリジナルはけっこうそこが映画の見どころになってるんだけど、本作でそれなりの見せ場になる銃撃戦は、中国の麻薬の売人との対決シーンくらいだからなぁ。まぁ、ジョニートー監督はガンアクションが代名詞みたいな部分もあるので、そこを比べても仕方ないんだけど。

キム・ジュヒョクと愛人役がすごい

でも、その中国の売人役を演じたキム・ジュヒョクとその愛人(美人)の役者たちの演技はかなり凄くて、何をやらかすかわからないぶっ飛んだ悪人ぶりが際立っており、この2人が出てくるシーンは非常に緊張感があって素晴らしかった。あと、主役を演じたチョ・ジヌンも主役だから当然とはいえ、俺がこれまで観た作品の中では、群を抜いてカッコよかった。ということで、オリジナルとは別物だけど、なかなか楽しめた。

映画『ドラッグ・ウォー 毒戦』ネタバレ感想 ジョニートー監督作品
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