仁義なき戦い
―1973年公開 日 99分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:日本暴力団抗争史上で最も多くの血を流した“広島ヤクザ戦争”をドキュメンタリータッチで描く。原作は抗争渦中の人物“美能組”元組長の獄中手記をもとに書き綴った飯干晃一の同名小説。脚本は「日本暴力団 殺しの盃」の笠原和夫、監督は「人斬り与太 狂犬三兄弟」の深作欣二、撮影は「着流し百人」の吉田貞次がそれぞれ担当。(KINENOTE)
あらすじ:終戦直後の呉。復員後遊び人の群れに身を投じていた広能昌三は、その度胸と気っぷの良さが山守組々長・山守義雄の目にとまり、山守組の身内となった。当時の呉には土居組、上田組など四つの主要な組があったが、山守組はまだ微々たる勢力にしかすぎなかった。そこで山守は上田組と手を結ぶことに成功し、当面の敵、土居組との抗争に全力を注ぐ。その土居組では組長の土居清と若頭・若杉が仲が悪く、事あるごとに対立し、とうとう若杉は破門されてしまった。そして、若杉は以前からの知り合いである広能を通じて山守組へと接近していった。若杉の山守組加入で、土居殺害の計画は一気に運ばれた。広能は土居殺害を名乗り出た若杉を押し止どめ、自ら土居を襲撃し、暗殺に成功。ところがそれ以来、山守の広能に対する態度が一変し、組の邪魔者扱いにするようになり、広能は結局自主して出るのだった。その態度に怒った若杉が、山守の若い衆を殺害したことから、警察に追われ、激しい銃撃戦の後、殺された。その間にも、土居組の崩壊と反比例して、山守組は増々勢力を伸ばしていった。しかし、その組の中でも、主流派の坂井鉄也と、反主流派の有田俊雄という二つの派閥が生まれ、山守を無視しての内戦が始まっていた。まず、市会議員・金丸と、土居組の残党を味方に引き入れ勢いづいた有田は、坂井の舎弟山方、兄弟分上田を殺害した。激怒した坂井は有田を破門するとともに、報復に出た。次々と射殺される有田一派、ついに血で血を流す凄惨な抗争車件に発展してしまった。そして、警察の出動により有田は逮捕、兄貴分の新開は殺された……。勝ち残った坂井は、広島の海渡組と手を組み、山守に替って呉を支配するかのように振るまうようになった。やがて今ままでの内戦を黙視していた山守の巻き返しが始まった。山守は、丁度その時仮釈放で出所した広能に坂井暗殺を捉した。冷酷な山守の魂胆を見抜いている広能は、微妙な立場に立たされた。山守に従う気はないが、そうかと言って坂井に手を貸す気もなかった。そんな時、矢野組々長・矢野修司が坂井と海渡組の手を切るぺく画策中に殺された。山守の恐るぺき執念がついに実行される。殺気立っていた矢野組々員をけしかけ坂井を襲撃させたのである。坂井は血だるまになるまで銃弾を受けた。翌日、坂井の葬儀が盛大に行われた。広能はかつて憧れたやくざ社会に虚しさと怒りを抱きながら無傷の喪主山守の前を去っていった。(KINENOTE)
監督:深作欣二
脚本:笠原和夫
出演:金子信雄/松方弘樹/菅原文太/田中邦衛/渡瀬恒彦/梅宮辰夫/川谷拓三/伊吹吾郎
ネタバレ感想
数年に一度、無性にシリーズ作品をすべて鑑賞したくなってまう深作欣二監督による名作。俺はバイオレンス映画やギャング映画が大好きなので、初見の頃はそっち目当てで鑑賞して、十分に楽しめたんだけど、何度も何度も観てると、ところどころの描写はギャグとしても受け取れるし、他人の信用できなさをこれでもかってくらいに知らしめてくれるお勉強作品にも感じられるし、ともかくいろんな味わいのある懐の深い映画なんである。
てなことで、実話をもとにつくられたこの作品でわかるのは、タイトル通り、ヤクザ者の世界に仁義なんてないってことである。かろうじて侠客めいた言動ができているのは、菅原文太演じる広能昌三と、その兄貴分たる梅宮辰夫扮する若杉寛くらいなもんだ。
それ以外は保身に走るやつらか、己の欲望のために動いている奴しかいなくて、そんな奴らもほとんどが死に至っている。であるから、鑑賞している人間からすると、どいつもこいつも単細胞に見えなくもない。もっとよく考えて行動しろやと思わなくもない。確かにそうなんだが、自分が組織なり人々の群れの中に身を置いてみると、けっこうこういうことしちゃっているもんなんである。
であるから、広能みたいな人を応援したくなっちゃうし、カッコいいなぁと思うわけなんだが、なかなかあんな生き方はできないし、彼はシリーズとおして、大して幸せな生き方はしていない。仁義が軽んじられているヤクザの世界に、憤りを持って生きているのである。
にしても、このブログではしょっちゅう触れていることなんだけど、この時代の役者の顔面力は本当にすごい。脇役もみんないい味出してて、古いものが何でもよいなんて思わないけど、今の日本の役者の数倍はかっこよくて存在感がある。そう思っちゃうんだから仕方ない。要は、こういう役者さんたちのほうが好きなのだ。
ちなみに、ギャグっぽく感じると先述したけどもそれはどういうことかというと、山守親分の嘘八百な物言いに、筋を通して頑張っている広能たちが、ある意味滑稽に見えてきて笑っちゃうのとか、ともかく汗臭そうで血気盛んな輩どもが奇声はりながら強がっているシーンそのものがバカっぽくて笑っちゃう(これは違う時代に生きているギャップによる笑いでもあるんだけど)とか、いろいろある。本作だけでなくて、シリーズ通して面白い部分はいっぱいあるので、興味がある方はともかくご鑑賞を。
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